表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒い鳥さんと一緒。  作者: 蛇真谷 駿一
修学旅行で一緒。
144/144

少女の聞いてしまった話。

遅くなりまして。

「ふんふふんふふーん」

 ゆりかちゃんのお許しが出たから、私は瞬君達を、トランプに誘いに行った。

 これから楽しいゲームの時間だ!


 部屋に向かう途中、何故か正座させられ、先生に怒られている藤森君と、それを呆れた顔で眺めてる田中君をみつけた。


「どうしたの?」

 と、田中君に話を聞いてみると、ジュースを買いに行く最中、藤森君がうるさくしすぎて怒られているとのこと。

 田中君は完全にとばっちりだ。

 その時の田中君の表情は、諦めと達観でした!


 一応、田中君にトランプの事を伝えて、私は残り二人の部屋に行くことにした。


 私の、仲のいい男子、とっぷつーだもん。



 そして、どうせなら驚かそうと、そっとドアの近くに行ったときに聞こえてきたのは……――




『…………彼女は恐らく、人じゃない、んだろう……?』




 ――そんな、志戸塚君の声だった。


 最初は志戸塚君が長いセリフを喋ってるのが珍しくて、そのまま立ち聞きしてしまった。

 

「? ………………ぇ?」


 正直、わからなかった。

 ただひたすらに、何を言っているのかわからなかった。


 ただ……何となく……志戸塚君が言う彼女って言葉が――――夜羽ちゃんとしか思えなくて。

 志戸塚君が夜羽ちゃんを、人じゃない、何か別の動物だって言っているように聞こえて。

 それに対して瞬君は、言い返すことをしなくて。



 結局私は、中に入ることは出来ず、訳のわからないまま、走り出してしまった。




 少し走った後、立ち止まって二人の会話を思い出してみた。


 瞬君達は、自分たちしかわからないようなことを言っていた。

 今、落ち着いて考えると、大したことない話だったのかもしれない。

 そう、ちゃんと笑いながら「何の話してるのー?」と聞けば、教えてくれるくらいの他愛のない話だったかもしれない。


 ――なのに――。

「…………多分、わけのわからない話で混乱しちゃったのか、もしくは、旅で浮かれて、疲れちゃったのかな?」


 だって……急に怖くなって、走り出したのに……自分でもそうした理由がわかって無いんだもん。



 そんなこと考えていると、突然声をかけられた。

 ビックリした。

 近くに人がいるなんて思ってなかったから。


 もしかしたら、ちょっと長いこと考え事してたのかな……?


 慌てて返事をすると、声をかけてきたのは、ゆりかちゃんと…………夜羽ちゃんだった。



 夜羽ちゃんは、心配そうに私を見つめて話しかけてくれた。


 でも私は……そんな夜羽ちゃんが途端に怖くなって。

 何か……得体のしれない何かに見えて。


 ……気が付けば、また逃げるように走り出していた。

 正直、なんと言い訳したのか覚えていない。




 走った先は玄関だった。

 私はそこに座りこんじゃった。


「……あぁ……どうしよう…………てか、私、夜羽ちゃんに悪いこと……した」

 そうだ……人の話を勝手に盗み聞いて、心配してくれた相手を勝手に怖がって…………私、最悪だ……。


 ――謝らなきゃいけない。


 そう、思ったけれど、それよりも先に、私の中にある、このモヤモヤを何とかする答えが欲しかった。

 そうじゃないと、また同じことをしちゃいそうで……怖い……。


 どうしようか悩んでいると、さっき志戸塚君が言っていたことが、ふと頭をよぎった。


「……そうだ……古書……? あれに何か書いてるって…………」


 私は、思いのまま、靴を履き、外へと出た。

 昼間言ったところへ行くために。


 そうすれば、何らかの答えがある気がしたから。

 ……私の中で、答えが出る気がしたから。


 私は、校則も門限も、何も考えないまま、歩き出した。


先もまだ遅くなります……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ