少女の聞いてしまった話。
遅くなりまして。
「ふんふふんふふーん」
ゆりかちゃんのお許しが出たから、私は瞬君達を、トランプに誘いに行った。
これから楽しいゲームの時間だ!
部屋に向かう途中、何故か正座させられ、先生に怒られている藤森君と、それを呆れた顔で眺めてる田中君をみつけた。
「どうしたの?」
と、田中君に話を聞いてみると、ジュースを買いに行く最中、藤森君がうるさくしすぎて怒られているとのこと。
田中君は完全にとばっちりだ。
その時の田中君の表情は、諦めと達観でした!
一応、田中君にトランプの事を伝えて、私は残り二人の部屋に行くことにした。
私の、仲のいい男子、とっぷつーだもん。
そして、どうせなら驚かそうと、そっとドアの近くに行ったときに聞こえてきたのは……――
『…………彼女は恐らく、人じゃない、んだろう……?』
――そんな、志戸塚君の声だった。
最初は志戸塚君が長いセリフを喋ってるのが珍しくて、そのまま立ち聞きしてしまった。
「? ………………ぇ?」
正直、わからなかった。
ただひたすらに、何を言っているのかわからなかった。
ただ……何となく……志戸塚君が言う彼女って言葉が――――夜羽ちゃんとしか思えなくて。
志戸塚君が夜羽ちゃんを、人じゃない、何か別の動物だって言っているように聞こえて。
それに対して瞬君は、言い返すことをしなくて。
結局私は、中に入ることは出来ず、訳のわからないまま、走り出してしまった。
少し走った後、立ち止まって二人の会話を思い出してみた。
瞬君達は、自分たちしかわからないようなことを言っていた。
今、落ち着いて考えると、大したことない話だったのかもしれない。
そう、ちゃんと笑いながら「何の話してるのー?」と聞けば、教えてくれるくらいの他愛のない話だったかもしれない。
――なのに――。
「…………多分、わけのわからない話で混乱しちゃったのか、もしくは、旅で浮かれて、疲れちゃったのかな?」
だって……急に怖くなって、走り出したのに……自分でもそうした理由がわかって無いんだもん。
そんなこと考えていると、突然声をかけられた。
ビックリした。
近くに人がいるなんて思ってなかったから。
もしかしたら、ちょっと長いこと考え事してたのかな……?
慌てて返事をすると、声をかけてきたのは、ゆりかちゃんと…………夜羽ちゃんだった。
夜羽ちゃんは、心配そうに私を見つめて話しかけてくれた。
でも私は……そんな夜羽ちゃんが途端に怖くなって。
何か……得体のしれない何かに見えて。
……気が付けば、また逃げるように走り出していた。
正直、なんと言い訳したのか覚えていない。
走った先は玄関だった。
私はそこに座りこんじゃった。
「……あぁ……どうしよう…………てか、私、夜羽ちゃんに悪いこと……した」
そうだ……人の話を勝手に盗み聞いて、心配してくれた相手を勝手に怖がって…………私、最悪だ……。
――謝らなきゃいけない。
そう、思ったけれど、それよりも先に、私の中にある、このモヤモヤを何とかする答えが欲しかった。
そうじゃないと、また同じことをしちゃいそうで……怖い……。
どうしようか悩んでいると、さっき志戸塚君が言っていたことが、ふと頭をよぎった。
「……そうだ……古書……? あれに何か書いてるって…………」
私は、思いのまま、靴を履き、外へと出た。
昼間言ったところへ行くために。
そうすれば、何らかの答えがある気がしたから。
……私の中で、答えが出る気がしたから。
私は、校則も門限も、何も考えないまま、歩き出した。
先もまだ遅くなります……。