彼女の二日目夜の話。3
「うーん、夜羽ちゃん物覚えいいねぇ……」
「そうですの。大富豪、七並べ、ポーカー。ルールは簡単とは言え、この短い間に全く知らないことを覚えるとは」
ユリカとヒトミが褒めてくれた。
「ん、楽しかったから」
ワタシがそう言うと、それはよかったと言いながら、二人が笑った。
色々話しているうちに、ノド、渇いた。
水を飲もうとしたら、ユリカが、
「ああ、夜羽さん。でしたらジュースでも買いに行きますの。わたくしもちょうどのどが渇いてましたので」
「ん……お金ない」
「ふふ、それくらいなら買ってあげますの」
笑ってそう言った。
それを聞いたヒトミが手を上げて言った。
「あ、じゃああたしもー!」
「いいですよ? 何がよろしいですの?」
「え、あ、冗談だよ……ツッコまれるもんだと思ってたわ……」
「あら、そうでしたの」
ちっちゃく笑うユリカ。
よくはわからないけど、多分ヒトミをからかってたんだと思う。
それをヒトミもわかったのか、唸りながら言った。
「うぅぅぅ……炭酸オレンジで……」
そう言って、ヒトミはお金をユリカに渡した。
「ふふ、はい確かにお金を預かりましたの。では行きましょう? 夜羽さん。どれがいいかは見て選んだ方がいいですし。……すみません渡さんは飯田さんが戻ってくるかもしれませんので、お待ちしててほしいですの」
「いいよ。いってら」
「ええ、行ってきますの」
「ん。行ってきます」
近くのジドウハンバイキまで行く途中、ユリカはニコニコしながら話しかけてきた。
「ふふ、どうですか? 修学旅行に来てみて」
「ん。楽しい。みんな一緒。……それに、シュンもずっと一緒だし」
……これからもずっと一緒……なのは、ダメなのをわかってるから……ダメになるまでは一緒に居たい……。
そんなことを思いながら言ったけど、ユリカにはわからなかったみたい。
「それはよかったですの。これから先も楽しいことはたくさんありますので、期待していてくださいの」
「……ん」
「それにしても、飯田さんはいつまで……っ!?」
突然ユリカが言葉を止めて、立ち止まった。
「?」
「あれは……一体何をやっていらっしゃるのでしょう」
ユリカが見てた方向を見ると…………マナミが壁に頭をつけて立っていた。
何をしてるのだろ?
よくわからなかったので、聞いてみることにした。
「マナミ……どうかした?」
ワタシが聞くと、マナミはじっとわたしを見た後、焦って声を出した。
「ぁ……え!? あ、えっと……な、何でもない……よ! うん! わ、私ちょっと外の空気吸ってくるね!」
「え? ええ、わかりましたの……」
「……………………」
「じゃ、じゃあまたあとでね!」
そう言ってマナミは走り去っていった。
「……………………」
「はぁ……なんなのでしょう? …………? 夜羽さん? どうされたのですか?」
「……ん………………大丈夫。何でも……ない」
――なんだろう……さっきの、マナミがワタシを見る目は……。
――……ワタシが昔見たニンゲンみたいに……。
――……ワタシを……。
「――……怖がってた、目……?」