番外編の話。――バレンタインの話。
本編書けし。
――――二月十二日。
「ッてなわけで、夜羽ちゃん! バレンタインは義理でいいんだ! 義理でいいからチョコをください!!」
「バレン……タイン……?」
シュンのガッコウが終わった後、二人で散歩してたら、カツアゲに会って、話しかけられた。
今シュンはコンビニで買い物してる。
「そう! あ、もしかして忘れてた? 本命はいい! 無理なのはわかってるから! でも義理なら! 義理チョコくらいならブフぁッ!!」
ん、シュンが戻ってきた。
カツアゲは蹴られた。
「事情はわからんが、むやみに夜羽に絡むな。教育上よろしくない気がする」
「ん、おかえり」
「おー」
「神尾ひどくね!? てか教育上て、過保護な親か!」
「ほっとけ。夜羽、とりあえず行くぞー。後、これと話したことは忘れることをお勧めする」
と、言われた。
けど……。
「むー………………」
――――二月十三日。
「え? バレンタインですの?」
「おっと、面白いイベントに目をつけたね」
「ん、そう。ギリとホンメイとチョコがあるのは聞いた」
昨日の事をイチロウに聞こうとしたら、ユリカもいた。
だから二人に聞くことにした。
「聞いたって……誰にですの?」
「カツアゲ」
「カツッ……ああ、藤森くんですの」
「ん」
ユリカは一通り納得した後、考え出した。
「バレンタイン……うーん……えと、なんて説明したら……いいんですの……?」
「じゃあとりあえず僕が説明しようか」
「ん、よろしくイチロウ」
「うん。簡単に説明すると、女の子から好意を持っている男の子に、お菓子のチョコをプレゼントするのが、バレンタインだよ」
「日本での、ですのよ?」
イチロウの説明にユリカが付け加える。
「わかってるって。あ、それでさっき言ってた本命とか義理っていうのは、本命がすごく好意を持ってる一人に向けて渡すチョコで、お世話になっているたくさんの人に少しだけ渡すのが義理かな?」
「…………むー……」
「えーっと夜羽ちゃんで言うと、いつもお世話になってて、一緒に居たいと思う人に、チョコレートをプレゼントするってとこかな」
「え、ちょ、それって一人しかいな」
「む……じゃあ、シュンにチョコ、あげる」
「やっぱりそうなるじゃないですの……矢島さんが何をしたいかがまるわかりですの……」
「はははー。あ、義理チョコは今回はやめておこうか」
バレンタインの事を教えてもらったから、どこかでチョコ買う。
……お金、たりる……?
「あ、それでしたら夜羽さん、わたくしと一緒にこれからチョコを手作りしませんか? わたくしもやろうと思っていたところですし」
「つくる…………料理……?」
「そうですの。きっと神尾くんも喜ばれますの」
「ははは、そういう東城さんは誰にあげる予定で作るつもりだったのかな?」
「矢島さんうるさいですの!! 義理チョコあげませんのよ!!」
「おや、くれる予定だったんだね。ありがとう」
「あげませんけどね!!」
イチロウとユリカがなんか話してたけど、ワタシは色々考えててほとんど聞いてなかった。
――料理……喜ぶ…………料理……そう言えば、続き教えてもらってない……。
「――羽さん? 夜羽さーん?」
「……む! 料理、する!」
「え、あ、そ、そうですの。わかりました。では行きましょうか?」
「ん!」
そしてワタシはユリカの家についていった。
「夜羽さん!! 包丁を振り上げてはいけませんの!! ああ! そんな勢いで振り下ろしては……!!」
――――二月十四日。
朝、ガッコウに行く前には渡せなかった。
帰ってくるまで散歩に行くと、いつもの公園でアイス屋のテンインにあった。
「いらっしゃいませー」
「ん。……新しいの……」
「はいー。今日限定ですけどー」
「今日だけ?」
「はいーバレンタインですからー。『おねーさんからの友チョコアイス』が、一つ二百十四円ー。『おねーさんからの義理チョコアイス』が、一つ二千百四十円ー。『おねーさんからの本命(かも)チョコアイスケーキ』が一つ二万千四百円ですー。お値段は、全部二月十四日にかけてますー」
「…………かも……」
「ふふふふー、それでも買ってくださる常連さんはいらっしゃるんですよー?」
「そう」
「ふふふ、おひとついかがですかー?」
「んーん、そろそろシュンが帰ってくるからいい」
「そうですかーわかりましたー。あ、でしたらこれをもう一人の常連さんに渡しておいてもらえますかー?」
そう言って、テンインから大きめの箱を貰った。
「? これは……?」
「いつもお二人にはお世話になってますのでーサービスですー」
「? そう」
ワタシは箱を持って家に帰った。
「ぐずっ、お姉さん!! この『おねーさんからの本命(かも)チョコアイスケーキ』をください!」
「はいー、ありがとうございますー」
む? アイス屋から泣いてるカツアゲの声がする……。
…………ん、別にいい、かな。
「ただいま」
「おお、お帰り。散歩か」
家に帰るとシュンがすでに帰ってきてた。
シュンは洗濯物を畳んでる。
「ん、甘い匂い」
「ああ、学校で少しな」
「バレンタイン」
「……どこで聞いたかは、まあいいや。そうだよ……と言っても学校で飯田と東城さん、帰りに高嶺からもらったので三つだけだがな」
「……三つ」
「飯田は何か料理の練習で作ったものがチョコで、たまたまバレンタインデーと重なったから持ってきたって、しどろもどろに言ってた。別に疑ってないのにな」
「……そう」
「東城さんはほぼ全員分作ったのでーって言って配ってた。ただなんか俺にくれるときに『教えることはちゃんと教えてくださいの』って言われた……何でだろ」
「…………むぅ」
「高嶺はわざわざ作って待っててくれたっぽい。いろいろお世話になったからって。いい子だよな、相変わらず」
「………………」
「? 夜羽どうかしたのか?」
「……ん、別に」
「そっか……それはそうと……なんだその荷物」
「アイス屋のテンインからもらった。バレンタインでサービスって」
「…………そう、か」
シュンは何とも言えないような顔をしてた。
「とりあえず開けて……お、これはチョコ……アイスケーキ……かな?」
「む? チョコアイスケーキ?」
「ああ、アイスで出来たケーキのチョコ味か。サービス品にしては凝ってるなぁ」
「ん『おねーさんからの本命(かも)チョコアイスケーキ』」
「へ?」
「『おねーさんからの本命(かも)チョコアイスケーキ』」
「…………あー商品名……?」
「ん。一つ二万千四百円」
「高っ!! 通常で買うとかなりなぼったくり……。さすがにこれはただじゃ貰いづらい……いや、それが目的なのか……?」
シュンが頭を抱えて何か悩んでた。
――それよりも……ん。
「シュン、シュン」
「ん、おお……? どした」
「……む……ぅー…………バレン、タイン」
「……あ、チョコ……か? おぅ……ありがとう。うれしいわ……これもアイス屋さんで?」
「んーん」
「? じゃあ……」
「…………あけて」
「そうするか」
シュンがゆっくりと紙を開いて箱を開けた。
「…………これは」
「ん……て、づくり」
「て、手作り!? いつの間に……! というか大丈夫だったのか!?」
「ん、ユリカに教えてもらった」
「東城さんのあのセリフはそれか!」
頭をかきながら「明日謝っとかないと」って呟いてるシュン。
――……むぅ。
「……ね……それよりも、シュン――」
「お?」
「――…………はやく、たべて…………?」
「! お、おう……!」
シュンがワタシが作ったチョコをゆっくりと食べる。
「……………………おい、しい?」
「……ああ、すごくおいしい」
「ほんと? シュン、喜んだ……?」
「もちろん。ありがとうな、夜羽」
「! ん!」
「それはそれとして、料理……大丈夫だったか?」
「ん、大丈夫。包丁は振り上げないのと振り下ろさないの覚えた」
「それは前に俺も教えなかっただろうか!? 東城さんほんとごめんなさい!!」
やってしまった。
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