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黒い鳥さんと一緒。  作者: 蛇真谷 駿一
夏休みで一緒。
14/144

彼女の悩みと小さなイライラの話。

 暇だ。

 暇すぎる。


 シュンがカイモノに出かけてしまってワタシはやることがない。


 最初のうちはテレビとか言うものをつけて、見ていたのだがあまり面白くない――と言うか意味がわからないので消してしまった。


 空を飛びたいと思わなくもないが、まだ怪我が治っていない。

 ゼッタイアンセイだ。


「……あの時、いったい何があったのだろうか」


 夜羽は自分の怪我を見つめ、呟いた。


 あの時、気がついたらワタシは怪我をしていた。何がなんだかわからないまま、逃げ出した。


 近くに居た仲間はみんなやられてしまった――と思う。でももしかしたら生き残りがいるのかもしれない。だとしたらすぐにでも探さないと。


 その為には怪我が治してここを。

「…………出なくちゃいけない」

 そんなことは分かっている。

 元々は少しだけ話をしたくて会いに行っただけ。


 ただそれだけだった。



 でもここを――シュンのそばを離れたくないとも思っている。



 自分でも変だと思う。

 でも事のほかここでの生活が心地よい。



「…………これからどうしよう」



 とにかく、まず怪我を治そう。


 考えるのは、後だ。



「……暇、だなぁ……」

 気が付いたら目をきつく瞑っていた。

 そうする事で、今ワタシが置かれている状況をも、見ない様にしたのかもしれない。





「ただいま」

 奥から聞こえるシュンの声で目が覚めた。目が覚めた、と言うことはどうやらワタシは眠っていたらしい。

 それよりも早く帰ると言っていたのに、ずいぶん待たされた気がする。


「一人暮らしなのに、ただいまは言うんだ」

 文句を言ってやろうと立ち上がったが、知らない声が聞こえて、驚いた。


「まあ、たまには。それより、もうここでいいよ。後は中に運ぶだけだし」

「……うん、わかった」

「今日は悪かったな」

「いやいや、気にしなくていいよ? まあ、どうしてもって言うんだったら、毎日ジュースとか奢ってくれてもい「わかった、気にしないでおく。まったく」早っ! まだ全部言ってないよ!」

 姿は見えないが、どうやら女のようだ。

 それにシュンの声は、なんだか、楽しそうだ。


「ま、とにかく助かったよ」

「うん、また何かあったら言ってくれていいから」

「あー……考えとく。…………それとさ」

「ん?」


「何があったか知らんが、あんまり気にするな」

「……え?」


「何も考えず能天気なのがお前だ」

「ちょっ! 酷っ!」

「とにかく、いつも通りでいいんだよ」

「…………うぅ……」


「……まあ、それだけなんだけど。……じゃあ」

「ふぇ?! あ、うん。じゃあまたね。……あのさ」


「なに」

「えっと、その、……ありがと」


「…………おぉ」


 足音がすごい勢いで聞こえる。走って帰ったみたいだ。


「あー、ただいま。遅くなってすまなかった。買う物が多くなってな」

 シュンの顔が若干赤くなっているのが目に入り、ワタシはイライラが少し強くなる。

 ――なぜだろうか?


「…………」

「あー……悪かった。遅くなったこと怒ってるんだろ?」


 確かに遅かったことは少し怒っていた。でもそれ以上に、

「……さっきの、誰?」


「? さっきの? ああ、聞こえてたのか。あいつの名前は飯田愛実。あいつは俺が通ってる学校で同じクラスの奴だ。学校については教えただろ?」


 今日の朝、ニンゲンの事を少しだけ教えてもらった。

 それとシュンの事も。

 その時に、ガッコウの事も確かに教わった。


「今は確かナツヤスミで、ガッコウは無いんじゃなかったか?」

「そうだよ。会ったんだよ。偶然な。で、暇そうだったから荷物持ち頼んだんだ」

「それで、イイダマナミとやらはお前とは仲がいいのか?」

「あー、どうだろうか。個人的に言えば懐かれてるだけのような気もするけど」


 何か胸の奥のほうがチクチクする。

「……イイダマナミと話しているお前は、どこか楽しそうだった」

「俺が? ……そうかな。まあ、他のやつと話すよりはマシだと思う」


 シュンから、そんな話は聞きたくない。

 だったら聞かなければいいのだが、質問をやめる事が出来ない。


「ふーん……イイダマナミとお前は……恋仲、なのか?」

「……は? 違うよ。何でそうなるんだ?」


 その言葉を聞いたとき、わずかにイライラが収まった。

 理由はよくわからなかったが、少し安心感があったこともあり、つい言葉を漏らしてしまった。






「……そう。…………なら、いい」



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