彼女の二日目夜の話。
結局またこんなに遅くなってしまいました……。
「みんなーそろそろお風呂いこー?」
「む…………お風呂」
「ええ、いいですね。そうしましょうか、夜羽さん」
「今日は大浴場にする?」
マナミの言葉に、ユリカとヒトミが答える。
昨日はユリカと二人だったけど、今日はマナミとヒトミも一緒の部屋。
「……お風呂、そこにある」
「あ、夜羽ちゃんも昨日は個室だったんだね? ここは他にもおっきな大浴場があるらしいんだよ!」
「そうね、まなちゃん。『大』浴場って言うくらいなんだから、大きいわよね」
「? どういう意味?」
「……なんでもないわー……」
「? うん」
意味を聞いてみたら、マナミとヒトミが話し始めてしまった。
「むぅ…………ユリカ……つまりは、どういう意味……?」
「つまりですね。ここのお部屋にあるお風呂とは別に、皆で一緒に入る用の大きなお風呂もあるんですの」
「皆…………シュンも……?」
む……ワタシが少し恐る恐る聞いてみたら、ユリカが少し固まってしまった。
よく見ると後ろで話してたマナミとヒトミも少し固まってた。
…………? わからないけど、大事なこと。
「……ユリカ……?」
「……あ、えっと、男性と女性は別ですから、大丈夫ですのよ?」
「そ、そそそそうだよ。混浴じゃないよ!?」
「夜羽ちゃんの大浴場のイメージ、混浴って…………神尾君は一体家で何を言ってるんだ……」
ん、とりあえず一緒じゃないみたい。
……ただヒトミがなんかシュンのこと言ってたみたいだけど、なんだろう……?
「おおーほんとにおっきいね。早速入ろ?」
「飯田さん、先に体を洗うなり、かけ湯をするなりがマナーですのよ?」
「あ、うん。そうだったね。ごめんなさい」
「む、先に体洗う?」
前に教えてもらった通りにやる。
洗い終わって、お風呂に入ろうとしたら、マナミに止められた。
「夜羽ちゃん! あっちに露天風呂あるって! いこ!?」
「む、むぅ……? ロテン?」
ワタシは裸のままマナミに引っ張られた。
「ほわぁ……ここも広いねー」
「外に……お風呂……」
「夜羽さん、そういうのもありますのよ」
「そう……ん? ヒトミは?」
「渡さんは先に中のお風呂に入るそうですの」
「二人とも早く入りなよぅ」
「ん」
「ふぅ、わかりましたの」
――――ちゃぽん…………。
「ふぃー……いいお湯だねー」
「ん」
「そうですのね」
……………………。
少しの間、静かになった。
「ねね夜羽ちゃん! お話しよ?」
「ん? ……ん」
そしたら、マナミが少し焦ったように話しかけてきた。
「ふぅ、飯田さんは沈黙が耐えられないようですのね」
ユリカの言葉を無視してマナミが話してくる。
「えっと、昨日今日で思ったんだけどさ。志戸塚君って夜羽ちゃんとはちゃんと話すよね? なんでだろ」
「む……それは、タツハの考えだから、わからない……」
「あ……そ、そうだよねー」
「飯田さん…………」
む。ユリカが頭を押さえて息を吐いた。
「えー……っと……後はー…………ね、ねぇ夜羽ちゃん」
「ん?」
「えっと…………今日、なんか機嫌悪かったけど、どうしたの……?」
「む……?」
機嫌……悪かった……?
ワタシは、そうだったかと思い返していると、ユリカが少し焦ったように声を出した。
「飯田さん…………っ!!」
「あ、や、ごごめん……! でも、やっぱり気になって……」
むぅ……やっぱりよくわからない。
聞く。
「ねぇ…………」
「「はい!!」」
二人そろって返事した。
「機嫌……悪かった……?」
「あ、自覚なかったんだ……」
「……だとしたら、深く追求すべきではないのではありませんの?」
「………………」
ワタシが機嫌悪かったなら……何で?
ん…………。
「……やっぱり、シュンとハクが一緒だったから…………?」
「「「!!?」」」
「ん……? どうかした?」
「あ、ううん……?」
「ええ……意外とはっきりおっしゃったことに驚いて……」
「……………………」
「ん、そう」
……………………。
また、静かになった。
「……うん! そうだ! 話を戻そう! 志戸塚君が夜羽ちゃんとはちゃんと話すことは置いといて。夜羽ちゃん自身も結構、志戸塚君に話しかけるよね?」
「ん、タツハ。いいニンゲン」
「人間って! まあいいけど。瞬君とも仲いいけど、志戸塚君とも仲いいんだね?」
「ん……そう、なの……?」
「そう見えるけど? ね! ゆりかちゃん!」
「ええ、そうですのね。少なくとも飯田さんよりは数段仲が良さそうに見えますの」
「酷いっ!! 新事実! ゆりかちゃんは意外と毒舌!!」
「失礼な」
ユリカとマナミが話してる間に少し考える。
言われてみれば……他のニンゲンと比べると、最初からいいニンゲンだと思ってた気がする。
「ん。確かに――ワタシ、タツハ、なんか好き」
「「「……………………え…………?」」」
「…………………………」
む、さっきまで話してたマナミとユリカが固まった。
……そしてまた、静かになった。
――――ちゃぽん…………。
…………ふぅ、オフロあったかくて気持ちいい……。
確かこういう時は「いいお湯」って言う。
「ん……いい、お湯……」