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黒い鳥さんと一緒。  作者: 蛇真谷 駿一
修学旅行で一緒。
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彼の二日目夜の話。

 白姉との話が終わった後は、適当に見て回り、早めに宿へ戻った。

 その後は宿内で適当に話をして、集合時間まで過ごした。


 ……しかし、二日目の自由時間にしてすでに時間を持て余すと来たもんだ……明日以降の自由時間はどうなるんだ……。



「――……なわけで、明日以降も他人に迷惑をかけない程度に、自由に楽しみながらやってくれ。以上」



 ……っと、ボーっとしてる間に担任の話が終わってた。



 とりあえず部屋でゆっくりしてようとしたが、今日から藤森が一緒の部屋だったことを思い出し、ゆっくりできないことを理解する。


 その藤森が楽しそうな顔で話しかけてきた。

「お、神尾ー。早く部屋戻ろうぜ。トランプ持ってきたんだ。たなぽんと志戸塚も交えてさ!」


 ちなみに明日以降の部屋割りは、俺、藤森、田中、志戸塚だ。


「……面倒くさいが、まあそれくらいならいいか。……志戸塚が応じるかは知らんが」


「そこは俺が何とかしてみせる!」


 意味なくやる気な藤森。

 典型的に修学旅行でテンション上がってんなー……。


 まあ、こういう時の藤森はナイスなタイミングで、なんかテンションが落とされるものと遭遇するんだけどさ。


「おーい、藤森。お前はちょっと待てー」


「お? なんすか? 先生」


「あーお前は一回俺の部屋に来い。明日の分の課題を渡さなきゃならん」

「……っ!? ――っ!? 今日だけじゃ!!」


「んな訳ないだろ。あのテストを甘く見るな」


「なぁぁぁぁぁ……っ!!」


 やっぱりか。

 まあ完全なる自業自得だけども。


「じゃ、先部屋に戻ってるわ」

「……………………うん」



 部屋に戻ると志戸塚と田中がすでにくつろぎ気味だった。


「やあ、神尾君。自由時間どうでした? ……志戸塚君は答えてくれなくて」

 田中は苦笑い気味に話しかけてきた。


「どうって……時間、余った……」

「ですよねー……」


 どうも田中の班も、見たいところが尽きてしまったらしい。


「でも、うちの班で一番楽しんでたのは多分志戸塚だと思うけどな」

「え!? そうなんですか?」


 志戸塚に振り返り確認する田中だったが、当の志戸塚は本から全く目を離そうとしなかった。

「……………………」


「うーん。中々答えてはくれませんね」

「まあ志戸塚はそんなもんだ。……つか、それより何でお前さんはもう湯上り? 確かまだ時間じゃなかったはずだが」


「ああ、大したことじゃありませんよ。一人でお風呂に入りたいなと思ってた時、たまたま先生がお困り(・・・・・・)だったので、助けて差し上げたら、お礼に(・・・)と一人で入れてもらいました」


「……なるほど」


 それはつまり、先生に何らかの販売をして、代金が大浴場の一人風呂ということか。

 ……本日も田中商店は変わらぬ繁盛ぶりのようで……。


「あ、話は戻しますが、志戸塚君、他の方とはたまに話してませんか? 本当にたまに」


 無理やり話を戻してきた。


「……まあ、軽くでも気を許せば話してくれんじゃね? あとは裏技として押しに押しまくるってのがあるけど、そういうのは、やって許される奴と許されないやつがいると思う」


「あはは、それって飯田さんの事ですか? ……それはそれとして。夜羽さんとは話してるようでしたが」


「ん………………」


 そういえば、そうだな。

 夜羽と話すときは結構口を開くことが多い……。



「志戸塚、そういや、なんでだ……って、どういう状況だそれ……!」


 田中と話してる間にいったい何があったのか、胡坐をかいて本を読む志戸塚の足の間に猫が二匹、頭に一匹乗っかっていた。


 どうしてそうなった!?


 と問うまでもなく、目で語りかけてきた。


 ――気づいたら寄ってきて、何のためらいもなく上に乗られた……どうすればいい。


「……いんじゃね? そのままで」

「よく……ない……」


 志戸塚は若干おろおろした様子。


 動物は苦手なわけじゃなさそうだけど……どう接していいかわからんと言ったところか?



 とりあえず仕方なしに、猫をどけてやろうと近づこうとしたとき、部屋のドアがノックされた。


 コンコン。



「あ、はい」

 田中が応じる。


 ここからじゃ姿は見えないが、どうもこの宿の仲居さんかなんかのようだ。


「失礼致します。申し訳ありません、先ほどうちで飼っている猫が勝手にこの部屋に入っていったと聞いたもので……」

「ああ、はい。いますね」


「大変申し訳ありません。ご迷惑をかけてないでしょうか?」

「えーっと、とりあえずどうぞ」


「はい、失礼します。……あら?」

「? どうかしましたか?」


「ああ、いえ、その子たち中々人には懐かないのに珍しいなと思いまして。……動物に好かれやすいんですね?」

「…………と、思う………………」


 と、志戸塚があいまいな答えを返し、仲居さんは猫三匹を連れ、部屋を後にした。

 仲居さんに連れてかれる間も、若干抜け出そうとしていたが、手慣れている様子の仲居さんは、それを許しはしなかった。



 俺はその様子に、軽く笑いながら志戸塚に話しかけた。

「くく、ずいぶんと懐かれたもんだな」

「………………前にも、似たようなことがあった……」


「へぇ……」

「………………それと、さっきの…………」

「さっき?」


「……………………神尾夜羽と…………口を利く機会が多いのは……多分――――」




「ただ今戻ったぜ!! さあトランプだ! と行きたいところだが、そろそろ風呂の時間だな! 一緒にいこうぜー!」



「……………………」

「タイミング最悪だな。……で、夜羽と話すことが多いわけだっけ?」


「………………いや、後で……いい」

「んー……まあ、いいけど」


 正直、気にはなるんだが、あからさまに面倒くさそうな顔になったから、まず言いはしないだろう。

 藤森のせいだ。



「おーい、無視すんなよぅ! 行こうぜー」


「あ、すみません。僕はもう行ってしまいました」

「マジかー。って、早いな! まあ、行っちゃったなら仕方ないな」


「風呂に行くのはいいけど……」

「え、なにその『お前と一緒じゃあなぁ……』みたいな雰囲気! 酷くね!?」


「………………………………」

「志戸塚さん! 無視が一番酷いっ!!」



 やっぱりテンションが高いな……。




 この後、俺と志戸塚は引きずられるように風呂に行くことになった。

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