幼馴染の確認の話。
遅くなりました。
今回書き方がちょっといつもと違った……? かもしれないです。
ちなみに、少し前の『行く前に、ちょっと挨拶。の話。』の後書きを思い出してもらえるといいかもです。
「……おーい、白姉ー。どこまで引っ張るんだよー」
「まあ待ちなさい。どうせだから甘いものでも奢ったげるよ」
「や、人待たせてるってわかってるでしょ」
「ははは、ゴメン。ちょっとだけ付き合ってね?」
……俺のツッコミは笑いながら無視された。
「あ、あった。ここだよここ。ここのアイスはお勧めよー」
「ほんとに奢る気か。……ま、抵抗も面倒だし、ここは大人しく奢られ――…………ん……? ……アイ、ス……?」
……ちょっと待って、なんか――。
「いらっしゃいませー」
………………。
「あ、こんにちわ」
「はいーこんにちわですー。常連さんー」
「ね、瞬ちゃん。何がいい?」
「………………」
「瞬ちゃん?」
「あ……なんでもいい……です」
「? そう? じゃ、店員さん。お任せでー」
「はいー。では、こちらをどうぞー」
「おわ! 早いですね」
「ふふふー。アイス屋の店員さんを甘く見てはいけませんー。常連さんの好みもわからず、何が店員ですかー」
………………………………。
俺が軽く呆然としているうちに、白姉はお金を払い、アイスを俺に持たせ、今度は近くのベンチまで引っ張っていった。
「ふふっ、とりあえずこのベンチに座ろうね」
「え、あ、ああ」
「瞬ちゃん、さっきからどうかした? ……あ、もしかしてあの店員さん? 面白かったでしょ。不思議な店員さんでね、一度買っただけで、常連さんとして顔とか覚えてたり、どこか心の中を呼んだような行動したりするの。その上売ってるアイスはすっごくおいしいのよ」
「あ……そうなんだ……たまにそういうのは、あるね」
「ううん。ほぼ毎日、大体決まった時間にいるの。面白いでしょ?」
「………………った……」
「うん?」
「俺は、何も、見なかった」
「え、急にどうしたの?」
「や? 何でもない。それより、話って何?」
「え、うん。…………」
さっきまでの事を一度頭から消し去り、改めて白姉にここに連れてこられた理由を尋ねた。
「………………」
少し言いづらそうな白姉を見ながら、俺はジッと待つ。
そして白姉はゆっくりと口を開いた。
「……さっきの話、本当の事じゃないでしょ」
「……………………」
質問ではなく、断言。
正直、嘘を突き通せるとは思っていなかったが、完全にバレているようだった。
「今更、瞬ちゃんの嘘に騙されたりしないよ。……だって、瞬ちゃんは嘘つきだから」
「酷いな、それは」
「酷くはないよ……本当の事。二年前のあの日から、瞬ちゃんは私に……ううん、私たち家族にずっと嘘をつき続けた。『大丈夫、もう心配ない。辛くないよ』……って」
「……………………」
「……ゴメンね、今はその話じゃなかったね。それで、さっきの事は……」
「……そう、嘘。本当のこと言わなくてゴメン」
「嘘の理由は……教えてくれないのよね?」
「……ゴメン」
「……そう」
白姉はそう言い、少しだけ俯いた。
「白姉……」
また怒らせてしまったかと、声をかける。
すると、パッと顔を上げ、昔と変わらない笑顔で言った。
「大丈夫よ、わかってるから。あの夜羽ちゃんって子の為なんでしょ? 瞬ちゃんが大きな嘘つくときは、大体誰かの為だもん。だから詳しくは聞かない。瞬ちゃんが私を頼ってくれるまで待つわ」
「……ありがとう」
嘘とわかったうえで、聞かないでいてくれる白姉に、小さくお礼を言う。
そんな俺を見て、何故か白姉はニヤリと笑った。
その顔は、どこぞの獣医を彷彿させるものがあった。
「……!?」
「ふふふー、彼女と二人で、夜羽ちゃんを守る……かぁ……。なんか、愛とロマンを感じるわー」
「…………彼女?」
俺が疑問符を浮かべていると、さも当然と言った表情で白姉は口を開いた。
「え? ゆりかちゃんよ。恋人なんでしょ?」
「違うわ!」
俺の言葉に目を見開く白姉。
そんなに驚くことか!
「え、え? 違うの? だって、さっきアイコンタクトとってたし、説明の時に必死で、瞬ちゃんの手助けしてたし、人一倍私と瞬ちゃんが二人きりになるの拒んでたし」
……!! 聞こえる! そこだけ聞くと、確かに恋人同士みたいに聞こえる!!
「や! 確かに、アイコンタクトはしたけども! 東城さんが手伝ってくれたのも、俺と白姉だけにするのを拒んだのも、本当の事を知ってるから手助けしてくれただけで……!」
「なんだ、違うのかぁ……てことは、愛実ちゃんの方かな? てっきりまだだと思ってたんだけど……」
「飯田も違う! てか何故その発想に!?」
「あ、愛実ちゃんだけ呼び捨てだ。……ん? いや、夜羽ちゃんの方もか。と言うことは、夜羽ちゃんが大本命……!」
「話を聞けぇぇぇっ!!」
……少し、ガラじゃなく、大きな声を出してしまった。
……周りに人がいなくてよかった。
――ニコニコこっちを見ている店員を除外。
「もう、聞いてるわよ。どうしてその発想になるかでしょ? ……実はね、最初に声をかける前から、ほんとは、もしかして……って思って見てたの。瞬ちゃんたちの事」
「む?」
声をかけられる前ってことは、あの店に白姉もいたのか。
気づかなかった。
「最初は気づかなかったの。ワイワイ楽しそうにしてる学生の中に、似ている人がいるなぁ……くらい。だって瞬ちゃんと最後に会ったのは、一年前の辛い顔を嘘の笑顔で隠した別れだったから」
「………………」
「でも、見てるうちにだんだん思い出してきたの。一年前の瞬ちゃんじゃなくて、昔の瞬ちゃん……おじさんもおばさんも元気だった時の瞬ちゃんを。そしたら自然とその似ている学生さんが、瞬ちゃんと重なって、つい、声をかけちゃったのよ」
「………………」
「で、話してるうちに、なんとなく思ったのよ。誰かが瞬ちゃんから、辛さだけを取り除いてくれたんだなって。……となると、それはもう彼女しかいないと思ったわ」
「最後っ! 最後が飛躍しすぎだ!!」
「そんなことはないわよぅ。寂しさが薄らいだから、昔みたいになれたんじゃないの?」
「うっ……」
「ほらほら、お姉ちゃんに教えなさいー」
「……だから違うって!」
俺が必死で否定すると、白姉はあからさまにため息をつき、
「もう、水臭いわね。……いいわ。今度会う時に、また聞くことにするから」
そう言った。
「…………ああ、また今度。………………でも、何度聞かれたところで答えは変わらないけど」
「ふふふっ」
「……ははっ。……じゃ、そろそろ戻る」
「ええ。……あ、そうだ…………よし、瞬ちゃんは手紙じゃ絶対面倒くさがって返さないから……よし。これ、私の番号とアドレス。今度はちゃんと連絡しなきゃダメよ? それと、住所は手紙ので変わってないから、休みの日にでも会いに来なさいよ? 近いし。お母さんもお父さんも会いたがってるんだから」
「わかったよ。……それじゃあ、また」
そうして俺は白姉に別れを告げる。
でもそれは、一年前とは違う。
もっと昔のように、笑顔で、また会うような別れになった。
それだけでも、くじでこの町を引き当てた東城さんと……また昔のように笑えるようなきっかけをくれた夜羽には感謝しかない、な……。
はい。あの後書きの通りでしたね?
次は恐らく、待たされている側のお話になるかと……。
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