再会により紹介と説明の話。
大変遅くなりました!
「――…………え……瞬……ちゃん……?」
後ろから聞こえた声はそれほど大きかったわけではなかったが、隣にいる夜羽や、前を歩いていた飯田たちにも届いたらしく、皆後ろを振り返っていた。
そして俺もゆっくりと後ろを振り返る。
声だけでもわかっていたことだが、振り返った先には、両親が死んで以来、会うことのなかった幼馴染がそこにいた。
当然ながら、最後にあった時よりもぐっと大人っぽくなっていた彼女は、大きく目を見開きながら俺を見つめていた。
やがて軽く微笑みながら、一言呟いた。
「……やっぱり、瞬ちゃんだ」
「――――……っ……白……姉」
俺は正直テンパっていた。
自分の中で会いに行こうと決めてから行くつもりだったのが、予期せずここで再会してしまったからだ。
何を話せばいいかわからずにいると、白姉はゆっくりと近づいてきて、
――ガバッ!!
「な……っ!」
『っ!!』
「……ぁ……!」
いきなり抱きついてきた。
突然の出来事に周りから驚きの空気を感じる。
隣の夜羽も小さく驚きの声を漏らした。
「ちょっ……! 白ね――」
俺がとっさに抗議の声を上げたが、
「もぉー……! 全く連絡しないで……ダメ、じゃない……まだ、傷ついてるんじゃないかって、心配してたんだから」
弱弱しく俺を叱りつけた白姉。
その声はどこか震えていたように感じた。
「…………ゴメン」
「……うん……ひさしぶりね? 瞬ちゃん」
「ひさしぶり…………は、いいが……とりあえず離れてくれ!!」
「ふふふっ恥ずかしがらなくてもいいのに「あのー、すみませんですの」ん?」
俺の話を聞き入れる気がさらさらない白姉に、東城さんがどこか恐る恐ると言った感じで声をかけてきた。
「あ、あれ? ……………………同じ学校の子? 瞬ちゃん」
「今は修学旅行の自由時間中」
「え!? 修学旅行って、瞬ちゃんはいつの間にそんな遠くの学校に!!」
「や、そういうわけじゃなく…………説明面「瞬ちゃん? ダメよそんなこと面倒くさがっちゃ! ちゃんと説明して」…………はい」
と言うわけで、現在の状況を説明することになった。
「瞬君が……面倒くさがらなかった!!」
「しょ、衝撃ですのっ!!」
「あの人すごい人だ!」
「……………………!」
後ろうるさい。
「なるほどね。それで瞬ちゃんの修学旅行先がこの町なんだね。……なんていうか、ドンマイだね」
「それは言わないでやってくれ。てかそれよりいい加減ちゃんづけはやめてくれ」
「えーダメよー。今更昔の呼び方は変えられないわ?」
「ぬぅ……」
「あ、あの!」
「「ん?」」
声のした方を見ると、飯田が気まずそうな顔で話しかけていた。
よく見ると
「えっと、瞬君、紹介は……」
「ああ、悪い。えっと――」
「ごめんなさい! すっかり話に夢中になっちゃって。私の名前は立花白。一年前までそっちの町で暮らしてた、瞬ちゃんの幼馴染ね。あ、ちなみに同い年だからタメ口でいいよー」
「え、同い年? でも瞬君……」
「…………昔からそう呼ばされてたんだよ」
「そ、そうなんだ」
「呼ばされてたなんてひどいねー? ねね、あなたは?」
「あ、えっと、私は飯田愛実! 瞬君とは同じクラスの……ぅー……と、友達で! よろしくね?」
「うん、よろしく。……それにしても、なるほどねぇ……」
「え……っと、どうかした?」
「んーん? ふふっ何でもないわー?」
「ぅ? ……な、なんか気になるけど……とりあえず!! ほら、皆も皆も!!」
白姉の意味深な言い方に、首をかしげていた飯田だったが、すぐに切り替えて他のみんなを引っ張り出した。
「え、ああ、そうですのね。わたくしは――――」
飯田のおかげで、全員の自己紹介がつつがなく終わった。
「えっと、あなたは?」
「…………………………………………志戸塚、竜刃」
「志戸塚君、ね? よろしく」
「……………………」
「そいつは放っておいてやってくれ」
……訂正する。一人を除いて、つつがなく終わった。
全員の紹介が終わった後、ずっと気になってました! と言った表情で白姉が口を開いた。
「ねぇ、それはそれとして……瞬ちゃん、遠くない……?」
「それは俺に言わないでくれ」
俺が白姉と話してる最中、何故か徐々に後ろに引っ張られていた。
で、最終的に白姉との距離がだいぶ離れていた。
「……夜羽さん、何がしたいんでしょうか……?」
「…………しらない」
俺を引っ張っていた張本人ならぬ張本鳥はプイッと横を向き俺から目をそらした。
「えっと、瞬ちゃんと学校のお友達はわかったんだけど、その子は?」
「………………え、っと……」
……あー……やば、い……かもしれない。
白姉に嘘をどこまでつけるかわからない。
「瞬ちゃん……?」
「あー……その」
「夜羽さんは、神尾くんの遠縁の親戚らしいですのよ」
俺が言いよどんでいるのを見てか、咄嗟に東城さんが助け舟を出してくれた。
「……え、親戚のって……瞬ちゃん、ほんと?」
俺の家の事情をある程度知っている白姉は確認をするように俺を見る。
「あ、ああ……ほんとに遠縁だけど」
その後は、時折東城さんに力を借りながら俺と夜羽の今の状況を説明した。
「――……な感じで」
「…………うーん……」
「どうかした……?」
「……………………」
何かを考えるような表情を見せた後、ジッと俺を見た。
「……白姉?」
「ねえ瞬ちゃん、ちょっと二人で話さない?」
「……え」
「ごめんなさいね? ちょっと瞬ちゃん借りてもいい、かな?」
「えっと、それは、ちょっと、困りますの。……まだ班行動の最中ですので」
「お願いっ! ちょっと話すだけだから!」
「それは……「ねね、ゆりかちゃん、ちょっとくらいなら大丈夫だよ? 私たち。この後行くとこもちゃんと決まってたわけじゃないし。ね? みんな」…………」
飯田の言葉を受け、渡さんと志戸塚も首を縦に振った。
夜羽は依然横を向いたままだが。
東城さんが軽く視線を宙にさまよわせた後、俺に目線を送ってきた。
――どうされますの?
と、聞かれたような気がするので、
――……とりあえず、話すだけ話してみる。
そう、目線で返してみた。
「……わかりましたの。早めに戻ってくださいね?」
通じたらしく、東城さんの許可を得る。
「ありがとう!! えっと、ゆりかちゃん、だよね? ゴメンね? みんなも。すぐ終わると思うから。……じゃ、瞬ちゃん。ちょっと付き合ってね?」
「……へいへい」
俺は白姉に引っ張られながら、何を聞かれるのか、考えていた。
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