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黒い鳥さんと一緒。  作者: 蛇真谷 駿一
修学旅行で一緒。
131/144

本の事と、馬鹿合流……の前に、の話。

出来たぁ……大丈夫かな……?


「さて……そろそろ昼か……」


 町長さんの家で軽く話を聞き、少しだけ町に伝わる伝承や昔話などが書かれてるものを読ませてもらうことに。


 正直修学旅行らしからぬ光景だとは思うが、まあこれも経験としておく。



 ――この伝承や昔話は、かなり歴史のあるものらしく、さらに通常の伝承や昔話とは少しだけ違った要素のあるものが多いことから、修学旅行の行き先にこの町が選ばれたと聞いた。



 で、実際に読んでみると、確かに普通のものとは少し違い、どこかファンタジー要素が多く含まれている。

 それこそ平たく言ってしまえば異世界召喚のようなものだったり、魔法のようなものを使ったりするようなものも中にはあった。


 夜羽と飯田は当然と言うべきか、少しだけ本を開いて閉じてから、今は暇そうに話している。


 俺や渡さん、東城さんは一応修学旅行のレポート用に一冊ほど一通り読み、俺はちょうど棚に戻したところだった。


 そして志戸塚は、


「………………………………………」


 黙々と本を読み続けている。

 すでに横には何冊も積んであり、今は古書のようなものにまで手を付けていた。


 渡さんも今読み終わったらしく、チラッと志戸塚の方を見てギョッとしていた。


「…………ね、ねえゆりちゃん、神尾君。志戸塚君は、あれ、いつ終わるんだろ」

「さあ」「わかりかねますの」


 俺も東城さんも呆れ顔である。


「うーん、そろそろお腹すいたよね?」

「ん、おなか、すいた」


 後ろでのんきな声も聞こえる。


 ――夜羽はともかく、飯田は修学旅行のレポートがあるはずなんだけど。


「むぅ、ゆっぴー、シュン、まだ?」


「あ、そうですのね……神尾くん、そろそろ……」

「昼か……一応呼んでみるか」


 パラパラと読みふける志戸塚にそろそろ昼食に向かうことを伝えようとすると、志戸塚の本を読む手が止まった。


「? 終わったのか?」

「どうでしょうか……」


 何となく志戸塚の行動が気になったので、少しだけ黙って見てみることにした。


 志戸塚は少しの間、同じページを見続け、その後おもむろに顔を上げた。

 そして、何かを考え込むような顔を見せた後、少しだけ目線をこちらに――俺と夜羽に向けた。


「? ……志戸塚?」

「む? タツハ……?」


「……………………いや……なんでもない…………昼、だったっけ………………?」


「ん? ああ、そうだけど。行くか?」

「………………いこう」


 最後よくわからん反応を見せたが、無事本の世界から志戸塚が戻ってきてくれたので、行こうとすると、後ろで一人だけちょっと驚いてた。



「……長台詞……!!」



「瞳ちゃん、志戸塚君でもお話しするときはちゃんとお話しするよ? 私もっとお話ししたことあるし」

「え!?」


「志戸塚くんは結構饒舌な方ですのよ?」

「えぇ!!?」


 追い打ちにより、もっと驚いてた。





 その後、近くの定食屋さんで昼食をとっていると、


「あら、藤森君から電話ですの。はい…………ええ……ええ。わかりましたの。……はい、神尾くん」

「何故」


「藤森くんが代わってほしいそうですの」

「断ってくれ」


「わかりましたの。藤森くん? お断りされましたの。…………え? 理由ですの? 聞いてませんけれど……面倒くさいんではありませんの? ………………そこで泣かれてもわたくしにはどうしようもありませんの。…………はい、わかりました、お待ちしております」


「藤森君は何だって?」

 渡さんが一応と言った感じで尋ねる。


「今課題を終わらせたそうですので、急いでこちらに向かうそうですの。……あら? 場所をお教えいた覚えはないんですけれど、大丈夫なのでしょうか……?」


 あいつは馬鹿か? ……ああ、馬鹿だった。


「じゃあ多分もっかい電話来るね」

「東城さん、電源は切っとけよ?」


「わかりましたの」

「あははひど……くもないかー」



「えぇ!? 酷いからね!? 藤森君来られないよ!」

 しばらく黙って聞いていた飯田が驚いたように声を出した。


 その言葉に夜羽がムッとした顔で、

「いい。カツアゲ、いらない」


 と言い放った。


『……………………』

 その言葉に俺と志戸塚を除くメンバーが、夜羽を数秒視線を向ける。


 そしてその後、向けていた視線を俺によこした。



 ――誤解、解いてないの……?



 ――解いて、ないな……うん。




 ……これが、俺と他のメンバーが初めて行った視線での会話だった……。



「…………さて、それは置いといて、この後はどこに行くんだ?」


『流した!!?』


「志戸塚も他は別段行きたいこともないんだろ? 後は自由に面白そうなとこ回るか?」


「……瞬君ってば、完全に無かったことにしたよ……面倒くさいんだ」

「神尾くんスルーし続ける気ですのね? ……面倒くさいんですのね?」

「神尾君……らしいと言えば、らしいけど……面倒くさいんだねぇ」


「長い事店に居続けたら迷惑だろう。とりあえず出ようか」


「……うん、そだね」

「そうしますの」


「あ、もう二人も無かったことにしちゃうんだ……」

「む? ヒトミ、どうしたの?」


「え? ああ、や。何でもないよー……」

「ん、そう」


 よし、これで渡さんも無かったことにしたと。


「………………」


「? 志戸塚? どうかしたか?」


「………………いや」

「? そうか」




「とりあえず、修学旅行の行き先になるほどですので、いろいろ観光先はあるようですの。とりあえず近いとこから回ってみましょう」

 店から出て、東城さんが時間を見ながらそう言った。


 ちなみに時間は自前の時計で確認していた。

 ……なんか、ほんとに携帯電話は切ってそうだ。



 そして先導する東城さんに皆ついていく。




「ん? シュン、いこう」

「ああ、そうだな」



 俺と夜羽もそれに続く。





 ――――つもりだった。






 後ろのほうから、懐かしい声がかからなければ。






「――…………え……瞬……ちゃん……?」

なんとか絞り出したものですので、誤字脱字や変なとことかあれば教えていただけたら嬉しいです。



感想お待ちしております!!

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