番外の話――公園七日間。土、日の話。
これで……最後ですっ!!
テンション上がってきたぜー。
土曜日、矢島一郎と の場合。
「うん、ここだね。……夜羽ちゃんに……変なこと吹き込んだ、の……」
この前、夜羽ちゃんがお土産にアイスを持ってきてくれた。
…………けど。
『ん、おみやげ。アイス』
『え? わざわざ僕らの買ってきてくれたんだ。ありがとう、夜羽ちゃん』
『ん、イチロウのは、これ。おすすめされた』
『へぇ、アイス屋の店員さんにかい? どんなアイスな、ん……だ……ろ…………夜羽ちゃん、これ……』
『む? あるぶぶんに利くかもしれないって、テンインが』
『……………………』
そう言いながら笑顔の夜羽ちゃんにわかめアイスとか渡されたら、泣くと思うんだ。
と言うか、うん、後で泣いたよねぇ……。
……ああ、誰かが肩を叩いて慰めてくれてる気がする……。
その後聞いたら、夜羽ちゃんは店員さんに特には僕の事話してなかったらしいんだけど、もしかしたらあったことある人かもしれないし……うん、文句言いに行こう。
「いらっしゃいませー」
……知らないおねえさんだ。
じゃあ、誰かが僕の事店員さんに話したのかな……?
「アイスをーお求めですかー?」
「え、あ、はいそうですね……」
「どうぞ選んじゃってくださいー。私の作るアイスは味も効力も世界一ですからー」
「ははは、そうですか。…………? 効力?」
とりあえずおいておくことにして、とアイスを選ぶ。
と、そこであるメニューに僕は固まる。
「…………わかめ、アイス」
……わざわざ特別に作ったと思ってたけど……通常時販売してるんだ……。
「そちらでよろしいですかー?」
「あ、いえいえ違いますから」
「そーですかー……効果はあるはずですよー? 私特製ですからー」
「え?」
「ふふふふー」
「……………………これください」
つい、買ってしまった。
「だって、なんか利く気がしたから」
と、誰となく言い訳が口をつく。
そこに店員さんが現れ、
「はいー、アイスお二つですー」
「はい、ありがと…………え、二つ?」
アイスを二つ渡してきた。
……?
「はいー、お隣の方は前も一度来ていただいた常連さんですのでー」
「隣? ってうわ!」
「……え? え、え!? 僕!? 見つけてもらえた…………店員のおねえさん!! ありがとう!!」
「あ、あれ? なんでいるの?」
「え、や、先生、わかめアイスに文句言ってたけど、普通においしそうに食べてたじゃないですか。あの時、夜羽ちゃんも僕の事を……じゃない、僕の分のアイス忘れちゃったみたいだから、僕は食べそこなって。だからちょうど休憩時間だし、僕も食べたいなと思って」
「い、いつからいたの?」
「………………ぐすん。矢島先生と一緒に病院出たんですけど」
「え、ごめん、気が付かなかったよ」
「……ひどい……慰めたりしたのに……さっき話しかけた時、返事されたと思ったのに……」
「まーまー、帰ってアイス食べてー元気になってくださいねー?」
「は、はい! ありがとうございます!!」
「あ、それじゃあまた来ます」
「はいー、お待ちしておりますよーお二人ともー。常連さんですからー。ありがとうございましたー」
……なんだか不思議な人だった。
「最近より一層薄くなった僕の存在に気づいてくれた素晴らしい女性でしたね!!」
…………なんか申し訳なく感じてきた……ごめん……えっと……あ、あれ? ……く、空気君……?
日曜日、神尾瞬と夜羽の場合。
日曜日の昼時、散歩ついでに夜羽と軽く買い物に行くことにした。
……しかし、下の階の奥様方が生暖かい目で俺たちを見てきたのは何だったんだろう。
二人で雑談をしながら公園内を歩いているとき、パラパラと雨が降り始めた。
「うお、夜羽。雨だ。これはちょっと強くなりそうだ。走るぞー」
「ん」
と、走り始めたが、
「ありゃ? ……止んだ? ……? 本格的に降りそうな気がしたんだけど」
「ん、やんだ。……む?」
夜羽がパッと何かを見つけた。
「む、シュン。アイス屋が近くにある」
「…………そのようだな」
言われてみると確かに、ある。
つい月曜日の事を思いだし、口元が引きつってしまった。
そしてそれと同時に、背中に冷や汗が流れる。
…………いや、まさか。
俺はアイス屋から軽く目をそらし気味にふと、横を見ると、
「シュン」
「………………」
若干目をキラキラさせて俺を見る夜羽。
……………………。
「はぁ、わかったよ、買うよ」
「ん! シュン、ありがとう」
満面の笑みで礼を言ってくる。
その嬉しそうな笑顔にふと、かわいいなと思ってしまい、唐突な自分の思考に若干顔を赤くしてしまう。
幸い、アイス屋の方に歩き出していた夜羽に見られることはなかったが。
それにしても、最初会ったときに比べると格段に表情豊かになった。
これも色々な人と接した影響なんだろうか?
「む、シュン! 早く!」
「わかったって!」
夜羽に呼ばれ、思考を中断してアイス屋の方に向かう。
……あー、アイス屋の店員さんの最強度合いはクラスで有名になりつつあるくらいだから、正直、夜羽にお金だけ渡して買ってきてもらった方がよかったかも……。
「ん、アイスください」
「はいー、あらーまた来てくれたんですねー? お二方、ともー」
「ん、きた」「ええ、まあ」
不本意ではありますけど。
と、恐らく伝わっているであろうが、心の中で思う。
すると、
「ありがとうございますー。あらー? ふふふーデートですねー?」
腹いせなのかなんなのか、とんでもない発言をしだした。
「デっ!!?」「? ……でー、と?」
「違いますよっ!」
「前の二人と違っておもしろいですー……ふふふー照れなくてもいいですのにー?」
「そうじゃなくて……!」
「あらーでもさっきー笑顔に照れて、お顔を赤くさせてたじゃないですかー」
「あ、ああれはそういう……さっき!!?」
いつから見てた!!?
てかあの距離でなんでわかった!?
「どういう「ね、シュン」……なんだ……?」
どうせだから問い詰めようと、口を開いたら、夜羽に呼び止められた。
「でーと……って、何?」
…………………………。
「何でもないんだ」
「シュン?」
「いいからちょっと待ってくれ」
「ん、わかった」
「……コホン、いいですか店員さん。これは別にデートじゃありませんから!」
俺がそういうと、店員さんは変わらぬ笑顔のままだ。
そしてさらに問いかけてきた。
「じゃあ、今は何をしてるんですかー?」
「今は、ちょうど今日日曜なんで、散歩ついでに二人で一緒に買い物をしようとして、たまたま見つけたアイスの販売車で一緒にアイスを買って食べようとしてます」
「それを世間一般ではデートと呼びますー」
「そんな馬鹿な」
「あなたは多分ーもげろ対象者でー、さらに爆発を望まれちゃうんですねー」
「どういう事ですか!?」
まったくもって意味が分からん。
もげろとか爆発とか……藤森も似たようなことをよく言うが。
「む、シュン……まだ?」
「ん、ああすまん。……店員さんこの話は終わりですからね」
「むー…………まー、いーでしょー」
そして適当にアイスを選び、購入。
……したのだが。
「店員さん、頼んでないものもありますが」
渡されたのはカップに入った若干大きめなアイス。
ご丁寧にスプーンは二つ。
「これはーサービスですー。お二人で食べてくださいねー」
「いや、普通にアイス食べた後これはきついのでは」
「冷却材も入れておきますので、晩御飯の後にでもどうぞー?」
「いえ、さすがにタダでいただく訳には「……シュン」…………夜羽さん……」
横目で見ると、夜羽さんが上目づかいでこちらを見ていらっしゃった。
俺の遠慮する言葉に、つい声を上げてしまったらしい。
「どーしますかー?」
しかしさすがと言うべきか、こんな状況でもニヤニヤはせず、いつもと変わらぬ笑顔の店員さん。
「……ありがたく、いただきましょう」
断れるはずもなかろうに。
「ありがとうございますー」
俺は買ったアイスを食べながら買い物の続きに戻る。
「夜羽、あんまり食べ過ぎはよくないんだぞ?」
「ん、大丈夫」
さっき買ったアイスはすでに平らげ、もう一つのアイスを持ってホクホク顔の夜羽。
……まあ、たまにはいいか。
と、注意するのを放棄して、軽く夜羽の頭を撫でながら、何を買えばいいかを思い出していると、夜羽がそういえばと前置いて、聞いてきた。
「シュン。でーと……って、何?」
「………………さて、早く買い物済ませるぞー夜羽」
「む……ん、帰ってからまた聞く」
「…………………………」
そう言い残し夜羽は少し前に歩き出した。
最近、店員さんの影響か、誤魔化しがきかなくなってきたなー……。
どう説明しようかな。
「…………頑張って夜羽の気を逸らそ」
時には逃げることも大切だと思う。
――ちなみにその後、少し歩いていると。
「! ……なん……だと……!」
「む、また雨降ってきた。シュン、走る?」
……アイス屋を離れた瞬間にまた雨が降り始めたのは、偶然なんだと……信じたい。
はい。活動報告の通り、人間離れした偉業……空気さんの視認をやってのけました!
この一週間の中で、恐らく一番すごいことだと思ってます(笑)
日曜日はどちらかと言うと、メインは瞬と夜羽でしたね。
自分が言うのはおかしな話ですが……もげろ。
とりあえずはこれでリクエストのお話は終わりです。
次は本編に戻る予定です。
一応リクエストは随時募集中です?
もらっても書き終わるまでに時間はかかりますがね!
それでは、読んでいただきありがとうございました!
感想もお待ちしております!!