独りの男の驚きと少しの会話の話。
遅くなりました。
お久しぶりの志戸塚視点で。
今日は色々と驚いた。
まず最初に、何故かバスの席が委員長の隣になっていた。
確か自由だったはずなのだが。
視線で理由を尋ねると、
「あら、特上の面倒くさがりである志戸塚くんですので、喋らずにバスの中でも静かにお話しできるじゃありませんの」
……確かに委員長とは軽く目だけで会話みたいなことは出来るが……。
「委員長と呼ばないでくださいの」
……何故だかわからんが。
「? 何か不満がおありですの?」
……いや、不満と言うかなんというか。
僕はパッと目を周りに向けた。
…………予想通り、驚きと興味の目線をこちらに向けている。
修学旅行の行き先決定の時に、声を出して以来何かあればこれだ。
メンドイ。すっごいメンドイ。
いいかい? 委員長。
「わたくしには名前がありますのよ?」
………………東城ゆりか。
「……どうしてフルネームなのかは置いときますが、なんでしょう?」
僕は…………寝るから。
「何でですの!? 最初のわたくしの話聞いてませんでしたの!?」
………………………………。
「寝ましたの! 会話の最中に、しかも高速で寝ましたの!!」
後で聞いたところによると、それから十分近く僕を起こそうと叫んだり揺らしたりしたそうだ。
そして次に驚いたのが、神尾夜羽が修学旅行に来ていたことだ。
どうも色々あるらしいが、僕には関係のない事でもある。
そう思い、特に何があるでもなく歴史博物館の見学は無事終わった。
神尾夜羽に関して色々神尾瞬が大変そうだったが、僕は、無事終わった。
のだが、
「ん、タツハ。ひさしぶり」
「…………………………何故」
「む、タツハ。まずは挨拶」
「……………………久しぶり、神尾、夜羽」
宿に戻り、自分に割り当てられた部屋に行こうとしたとき、話題の神尾夜羽に遭遇した。
飯田愛実のように無理やり捕獲してこないだけいいのだが、タイミングがメンドイ。
ちょうど全員が集まっていた時に声をかけられただけあって、周囲の驚いた顔が見なくてもわかる。
それはそうだろう。
話題の人物が、クラスで孤立型の僕に声をかけただけじゃなく、僕はそれに対して、答えたわけだから。
珍しく声を出して。
「む? どうしたの?」
「…………………………いや」
……神尾瞬はどこだ。
そう思い目線だけで探した。
とにかく助けが欲しい。
「あー……夜羽、志戸塚は多分疲れてるんだ。後にしておけ」
思いが通じたのか、神尾瞬が止めに入ってくれた。
「む? そうなの? タツハ、ゴメン」
彼女は素直に頭を下げ、謝ってきた。
「……………………いや、大丈夫」
「ん、ありがと」
そう言い、神尾夜羽はまたどこかに歩き出した。
……神尾瞬、助かった。感謝する。
「ああ、気にするな。だが多分これで終わりではないぞ」
……そんな気がするが、まあ頑張るよ。
彼女はまだ話してても疲れない方だし。
「……そうか。まあ、夜羽はお前も結構信用してる方だと思うしな……じゃあ、後でな」
ああ……部屋で。
神尾瞬と別れ、急いで部屋へと向かう。
今まで関わってこなかったから、僕に何かを尋ねてくる人間は少ないが、ここ最近の出来事で、どうもクラスの連中に興味を持たれている。
何か声をかけられる前に、部屋に入らねば――。
「ねね! 志戸塚くん! いつの間に夜羽ちゃんと仲良くなったの?」
「それはわたくしも気になりますの」
ああ、そうだった……僕は……運が悪いんだ。
僕は自分の不運を呪いながら、ゆっくりと話しかけてきた二人の女子。
飯田愛実と東城ゆりかに向きなおした。
……疲れてるから手短でいいなら話すけど。
言っておくけど、前みたいに通訳お願いするから。
「またですの!? また声を出す気ゼロですの!? さっき夜羽さんとは声出して話してたじゃありませんの!!」
「ふぇ!? ゆりかちゃん、いきなりどうしたの!?」
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