簡単な質疑応答の話。
ちょっと復活。
最初の目的地である歴史博物館に到着し、俺は改めてしおりに目を通した。
ちなみに夜羽は現在、俺の横を歩いている。
「…………神尾くん」
「なにかな? ゆっぴー」
「いくら面倒だからと言って、質問を流しすぎではありませんの? 皆さんあからさまに消化不良な顔してますのよ?」
「はははー、何のことですかー? 質問? そんなものはありませんでした」
ええ、俺は何も聞かなかった。
後ろに感じる視線の雨など気にしない。
「どこかで見た気がするー!」と喚いている藤森も気にしない。
「……まあ、いいですけれど」
東城さんがしぶしぶと言った感じで引き下がった。
が、少し予想外の人物に声をかけられた。
「おーい、神尾」
「……担任?」
「お前な、その子クラスで一緒に行動させるんだから、面倒でも多少は紹介しとけ。何か知らんが俺のところに苦情が入った」
……あいつら……。
「……ふぅ、わかりました」
俺は夜羽と一緒に後ろを振り返り、
「とりあえず紹介する。こいつは夜羽、家の事情で少し前から一緒に暮らしてる遠い親戚だ。今回、その事情で夜羽を一人で置いていくのはちょっと、と言う事になったから委員長に許可を貰って連れてくることになった。事情については話せないので聞かないでくれ。後、時間も押してるから、質問は無い方向で。なんかあれば、委員長に直接聞いてくれー。以上」
そういい、パッと歴史博物館に入ろうとする。
『…………ちょっ!!』
しかし、意外に早くクラスの連中に捕獲されてしまった。
面倒だったから何も言われないように早口で説明したのに……。
――結局、質疑応答する時間をとる羽目になってしまった。
「…………つ、つかれた……」
「お疲れ様ですの」
粗方の質問に答え終わり、近くに腰を下ろすと、東城さんがからかう様な笑みを浮かべて近づいてきた。
「あなたが意図的につかれる様に仕向けたように思えましたがー?」
「ふふっ、申し訳ありませんの」
「……ま、いいけどさ。わざわざ見学の時間を削ってまで夜羽に時間を割いてくれたのはわかってるし」
そう言い、未だ数人に話しかけられている夜羽を見る。
「ええ、夜羽さんももっと色々な方と関わってみるべきですの。今後のために」
「……今後、か……。まあ、それはそれとして、ゆっぴー」
「何ですの?」
「覚えとけよ。と付け加えとく」
「あら怖い」
そう微笑みながら返す東城さん。
さっきまでのからかうような笑みとは違う、その綺麗な笑顔に少し許してしまいそうな気になる。
……可愛いは正義だっけ、前に藤森が言ってたの。
「……あながち外れでもないわけか……?」
「え?」
「なんでもないよ」
と、東城さんと話していると、駆け足で夜羽が近づいてきた。
「ん、シュン」
「なした?」
夜羽のほうを向くと、夜羽は少し驚いたような顔をしている。
そしてそのまま大きな声で、ある人物を指差しながら言った。
「大変、カツアゲ、いる」
その言葉にクラスのほぼ全員が指をさされた人物、藤森を見る。
『……………………』
藤森に突き刺さる絶対零度の視線たち。
「は!? え!? 何!? 何でぇー!?」
………………ああ、そういえば前にそんな勘違いしてたような気もする。
確か、志戸塚に絡んでるのを見て、そう判断したとか何とか……。
そう思い、志戸塚に視線を送るが、
「……………………」
どうやら奴も面倒だから何か言うつもりは無いらしい。
そうこうしている内に、担任が現れ、
「藤森。お前、宿に戻ったら俺の部屋に来いな」
と言い残し、博物館に入っていった。
面倒だし、俺も放っておこうかな。
「待って先生ぇっ! 勘違いだと思うんだーっ! 夜羽ちゃんの勘違いだと思うんだーっ!!」
軽く泣きが入りながら担任を追いかける藤森。
…………流石に可哀想だから、宿に戻ってしばらくして覚えてたら多少事情説明しにいくとするか。
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