彼女の紹介、困惑の話。
「さ、夜羽さん。こちらですの」
ユリカの後をついて行く。
「ん」
「このお部屋はわたくしと同じお部屋になってますの。今日は偶然わたくし一人になってしまいましたので、夜羽さんと一緒できてうれしいですの」
「ん、ワタシも」
む……? 一人の部屋はおかしい……の?
ワタシの顔を見てか、ユリカは色々付け足した。
「基本的に修学旅行で一人部屋はありませんの。今日はたまたま部屋割りの関係でわたくし一人ですが、明日以降はわたくしの他に人間の方がいらっしゃいますのよ」
「わかった」
「ですので、いろいろ気を付けてくださいね?」
「ん……ユリカも……カホゴ」
「どこで覚えましたの、そんな言葉……。でも……もと言うところに、神尾くんのいつもの暮らしぶりをうかがわせますの」
ユリカが少し笑いながら言った。
その後、少しだけオヤドでの過ごし方を教えてもらった後、ユリカに聞きたいことを聞く。
「それで、ワタシはこの後どうする? シュンと一緒でいい?」
「そうですの。この後は神尾くんも一緒に、クラスの皆で行動することになってますのよ。ですので、神尾くんと一緒にいるには、まずは皆さんに挨拶してからですの」
「……………………ん、わかった」
……ちょっとだけ、前に元の姿でガッコウに来た時の反応を思い出して、怖くなったけど、多分、大丈夫。
そしてユリカと一緒に部屋を出る。
そしたら、
「あれ……? よ、夜羽ちゃん……?」
「ん、マナミ」
マナミに声をかけられた。
「や、やっぱり夜羽ちゃんだ! あれ!? な、なんでここにいるの……?」
「む……シュンと一緒がいいから」
「はぅ! ……そ、そんなはっきり言うなんて……私にはまだできない……」
「えっと……まなちゃん? その……どちら様、かな?」
「あ! 瞳ちゃん! えっとね、夜羽ちゃんは…………えっと……その……」
マナミがなんか頭を抱えて悩んでいると、ユリカが先にしゃべりだした。
「渡さん、こちらは神尾くんのお宅でお世話になってます、夜羽さんですの。諸事情により今回特別に同行していいことになりましたのよ」
ユリカの声に、マナミと知らないニンゲンが驚いた顔をした。
「そ、そうなの……?」
「…………諸事情?」
「渡さん、その事情は正直、神尾くんの家のことになりますので、詳しくお話しすることは控えさせていただきたいですの」
「あ、いや、ただ気になっただけなの。それにしても、面倒くさがりの神尾君が、学校の行事に身内を……」
「……彼女はあまり人に心を開けてません。そんな彼女を数日とは言え、どこかに預けたり、ましてや一人にすることなんてしたくないと……少しでも心を開けてる人間の近くに置いておきたいという神尾くんの思いを……渡さんも理解してあげてほしいですの」
「あー大丈夫、別にダメだとかいうんじゃないのよ? 驚いただけで……。あ、夜羽ちゃん……だっけ? ゴメンね? 変なこと言って」
「む……? 大丈夫……?」
よくわからなかったけど、とりあえず答える。
……ワタシはなんで謝られたんだろう。
「改めて、あたしは渡瞳。よろしくね? 夜羽ちゃん」
「ん。名前、夜羽。よろしくヒトミ」
ヒトミと挨拶をする。
それを見てたユリカがニッコリ笑いながら言った。
「さ! この調子で皆さんと挨拶して仲良くなってしまいますのよー!」
そしてユリカに引っ張られるように移動して。
「ねね、夜羽ちゃんはいくつなの?」「学校は大丈夫なの?」「あ、私の名前は――」「かわいいー! お持ち帰りしたーい!」「神尾君って家ではどんな感じ?」「ズバリ! 神尾君との関係は!?」「家事とかはどっちがやってるの? やっぱり家では神尾君は主夫的な!?」「うお、マジでかわいい……」「おのれ……神尾めっ!」「見えない! 見えないよ! 俺もお話ししたいんだけど!! ゆっぴー! 俺にも自己紹介させて!」
……なんかニンゲンたちに囲まれてしまった。
前にガッコウに来た時とは違った感じで怖い……。
ワタシがどうしたらいいかわからず、ワタワタしていると、
「……何がどうしてこうなってる……?」
シュンの声が聞こえた。
急いでシュンの姿を見つけて、急いで声をかける。
「…………ん……シュン……!」
そしたらみんなで一気にシュンの方を向いた。
……むぅ、助かった……。
なんだかんだで『黒い鳥さんと一緒。』を投稿して一年が経ちました。
それも読んでくださっている皆様のおかげですね!
今後ともよろしくお願いします!!
ちなみに一周年記念とかも考えましたが、全く浮かばなかったので(笑)断念。
なんか簡単なリクエストでもあればお気軽にどうぞー。(※時間が出来れば書かせていただきます)
それでは。
……あ、感想もお待ちしております!!