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黒い鳥さんと一緒。  作者: 蛇真谷 駿一
修学旅行で一緒。
115/144

らしくない委員長とらしくない彼の話。

次回更新が遅れそうな、いやな気配を感じとり、ちょっと早め(?)に更新。


どうなることやらです。


「い、いやー……よく考えたら足を運ぶこともないよねー? 実際。何気に初かも、あたし」

 

「あ……あー! 瞳ちゃんもそうなんだー! 私もそうなんだ! 意外と知らないことも多いところだよねー!? …………た、田中君!」


「っ!? ぼ、僕ですか……。いえ、実際そうですね。僕もさすがにあそこまでは事業を拡大できてないので、行けることはうれしい限りです……よ? ええ」


 と、ぎこちない会話をする渡さん、飯田、田中。


 この会話を皮切りに、他の皆もそれぞれに「い、行ったことがないなー」や「い、意外と楽しみじゃね?」といった言葉を口にする。


 そしてついさっきまで暗い雰囲気をまとっていた藤森でさえ、若干焦りながら会話に加わっていた。


「やー! 確か……えっと……そ、そう! あそこは伝承とか昔話とかが特徴的なとこだったはずだぁ! い、意外と面白い話とかも聞けっかもしれんな! ……なあ! 志戸塚!」


「…………………………そう」


 ついには志戸塚まで戸惑った顔で(少しだが)会話に参加した。


 ほぼ全員がそのことにすさまじい驚きの表情を見せているが、誰一人それには触れずに、わたわたしながら会話を続けていた。




「…………うぅっ……う、う……ぐずっ……すん……えっぐ……」



 一人泣き崩れている女の子を中心に。





 どうしてこんなことになったかというと、修学旅行の行き先が大きく関係する。





 修学旅行の行き先はくじ引きと言っても、さすがに何も勉強にならないところは入っていない。海外にしろ隣町にしろ、何かしらの歴史的なものがあるところがチョイスされている。

 ――ちなみに隣町は一本の大樹を中心に町が構成されていて、古くからある建物が数多くあるため、意外と有名な場所である。


 修学旅行に掛かる費用は、集められて旅行費全てを一纏めにされている。

 そして各クラスの代表が一人ずつくじを引いていき、その行先に掛かる費用の分だけくじが減らされていく。


 例えば、最初から何人か連続で海外など、費用が掛かる行き先を引き当てると、その時点で総修学旅行費がだいぶ減っているので、次に引く人のくじには海外のくじは取りのぞかれている。


 つまり、最初の方に引くのが一番いい所が出やすく、後に行くにつれ、どんどん選択肢が狭まっていくということだ。


 引く順番は公平にじゃんけんだそうだ。


 ……三年間ずっと隣町に行くことになった生徒というのは、代表者がことごとくじゃんけんが弱かったということなのだろう。



 で、我らが東城さんはというと、何とじゃんけんで一番になり、最初に引く権利を得た。



 そして引いた行き先はと言うと、隣町…………の隣。


 つまりこの町の二つ隣の町ということ。

 隣町は結構大きいところなので、隣町に行くことはあっても、通り越してその隣までは、用がなければ足を運ぶものはほとんどいないだろう。



 なまじ最初にくじを引く権利を得たために、東城さんの落ち込み度はものすごかった。



 そして全校集会が終わって、教室に戻るなり、


「………………み、皆さん……も、うしわけ、ありませんの……わ、わたくしの、せい……で……」


 とすでに八割がた泣きそうな勢いで謝罪を始めた東城さんに、全員あわててフォローに入った。



 が、それが裏目に出て、


「み、皆さんは、こんなわたくしを……励まして、くれるんですの……? …………こんな優しい方々に、わたくしは……何も、できず、ご迷惑を、かけてしまいましたの………………えぅっ……ふぇぇぇ……!」


 となり、どうしたらいいかわからなくなった渡さんがとっさにフォロー気味の会話を始めて、今に至る。




「と、とにかく、元気出して? ゆりかちゃん! 私たち全然嫌じゃないよ!」

「…………すん……ありがとうですの……それと……ごめんなさいですの……わたくしが、こうしていても、皆さんに迷惑をかけるだけですのよね…………」


 東城さんはゴシゴシと涙をふき取り、決意したような表情で言葉を発した。



「こうなりましたら、わたくしが責任を持って皆さんの修学旅行を行きたい「ちょっと待て、東城さん」……え? ……神尾くん……?」



 東城さんがらしくない(・・・・・)ことを言おうとしていたので、すぐに止めに入る。


「東城さん。それをやってしまったら、駄目じゃないか? くじとは言え修学旅行は、学校が決めた行き先に従ってるんだ。全く関係ないところに行くのは、ただの旅行だろ。それに、今まで学校の伝統に乗っ取ってきた先輩方も否定することになると思う」


「で、でも……わたくしのせいで、こんなことになってしまいましたので……か、関係のないところではなく、学業に関係ある所なら……」



「自分の親や家の事は利用したくない。っていつも言ってた東城さんらしくない言葉だな」



「ぅ……で、でも……」


「東城さん、少し落ち着け。それから考えてほしいんだが、修学旅行はただの個人の旅行じゃない。学校の行事で、このクラスで行く学ぶ旅行だ。そりゃ、各々行きたいところはあっただろうけど、そんなのは二の次。大事なのは、このクラスのメンバーで、しっかり学び、修学旅行を楽しんだ。っていうところじゃないのか? 行き先なんかは関係なく」


「……それは……」


 東城さんが言いよどむ。

 続けて言おうとしたが、先に飯田が口を開いた。



「ゆりかちゃん、瞬君の言うとおりだよ。もしゆりかちゃんが、修学旅行の行き先を皆の行きたいところにしても、ゆりかちゃん自身が自分のせいだからって背負い込んじゃってるなら、皆も修学旅行を楽しめないよ」

「そーだよゆりちゃん。なんてったって、このクラスだよ? どこに行ったって絶対楽しいよ。だからゆりちゃんも笑って受け入れようよ。それに今の話を聞く限り、誰も二つ隣の町には行ったことないらしいよ?」


 二人の言葉に、周りも同意の声を出す。



「飯田さん……渡さん……皆さん……そう、ですね。わたくし危うく間違いを犯すところでしたの。ありがとうございます。皆さんの言うとおり、どこに行こうと、わたくしたちの修学旅行を、最高に楽しいものにいたしましょう!」







 …………なんとか落ち着いたな。


 にしても……らしくないこと言った。非常に俺っぽくないこと言った。

 俺も結構東城さんに泣かれて動揺してたんだろうかね。


 まあ、一応丸く収まったこともあり、幸いにも俺の発言はスルーしてもらえそうだが。






 それにしても、修学旅行があの町……ねぇ……?


 これまた面倒くさそうな予感がするな……。





 それはそうと、夜羽は……どうしようか……?

こうなってくると間違いなく動物病院の人たちは出番が減るのです……。

つまり、矢島さんと春川さんの二人ですね。


はい。



感想お待ちしておりますのー!

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