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黒い鳥さんと一緒。  作者: 蛇真谷 駿一
夏休みで一緒。
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独りの男の遭遇と憂鬱の話。

 気が付いたらポイントが入っていたり、お気に入りに登録されておりました!

 ありがたい限りです!これからも頑張らせていただきます!


 もう、動きたくない。


 別にそれなら動かなきゃいい話だが、動かなきゃ動かないで暇だ。

 そんな事を考えているうちに一日が終わることが多い。

 どうしようもない駄目な人間なのはわかっている。


 だがそれが僕だ。

 それは変えようがない。

 ――って言うか変えるつもりなんて一切ない。


 めんどい。


 しかし、ごく稀に体を動かそうと言う気になることもある。

 ごく稀に、だ。


 本当にやることがなく、夏休みが始まってから始めて外に出かけた。

 まあ、間違いだったような気もしないでもない。


 基本的に外に出てもやることなんてほとんど無いのだが、出来ることなら、知り合いには誰とも会いたくない。

 会ったところで話しかけてくる奴などいないだろうけど。


 とにかく長い休みの間は誰とも会わないのが僕の流儀だ。

 とりあえず、外へ出たついでに、家にいる間の暇つぶしの本を調達しに行く。


 家にある書庫の本は全て読んでしまったし、夏休み前に調達した本も、三日で読み終えてしまった。

 前回、夏休み前に購入した本は、持って帰るのがダルかったので、十冊程度しか買わなかったのだが、それでは少なかったようなので、今回は三十冊買って帰ることにした。

 疲れる事はしたくないし、本当にめんどいが、家から書店までの距離でタクシーを使うのは嫌だ。

 そもそも、タクシーの運転手との会話が嫌だ。


「…………仕方が無い」

 意を決し、書店に向かった歩き出したところで。


「やあ、志戸塚君! こんにちは」

 最悪だ。

 飯田愛実ではないか。

 まさか話しかけてくるなんて。



 そもそも彼女と関わってしまった事は大きな間違いだった。

 彼女はなぜか学校でもやたらと僕に話しかけてくる変わった奴だ。

 最初の方は無視していたのだが、どれだけ無視しても話しかけてくる。

 結局いつの間にか返事をしてしまっていた。


 何故返事をしたのか考えたが、自分でもよくわからなかった。

 とりあえず、無視しても話しかけてくる彼女のしつこさに負けてしまったと自分では結論付けている。


 ともかく一度返事をしてしまったせいで、その後も何度か話しかけてくるので、しかたなく適当に返事をしていた。


 しばらくは、それで何とかなっていたのだが、ある時、授業で出た課題に取り組む彼女に、僕はつい答えを言ってしまった。

 うーうーうなっていて煩かったのだ。


 おそらくこの行動がなければ、今のような状況に陥ることはなかったであろう。


 彼女はその問題を解くのにかなりの時間をかけていたようで、その答えの出し方を教えさせられ、ものすごく感謝されてしまう。


 それ以来、話しかけてくる回数が倍増してしまい、夏休みに入る直前なんて「もしかしたら宿題教えてもらうことになるかもしれないから、メルアド教えて!」などと言ってきた。


 すでに抵抗は無駄だと知ってしまっていた僕は、教えることにした。



 人生、諦めが肝心だ。



 とりあえずこのタイミングであったならば。


「……………………宿題?」

 そう思って聞いてみたのだが、どうやらまだ違うらしい。

 だが、まだと言っていた。近いうちに確実にメールがあるだろう。


「…………疲れた」

 話した時間はわずかだが、だいぶ気力を奪われた気がする。


 思わず近くのベンチに腰を下ろしてしまった。


 まあ、人と会話をしたこと自体が久しぶりだし、仕方がないと言えば仕方がないのだが。

 しかし、すでに本を買いに行く事自体が若干めんどい。


 それでも買いに行かなければこの先暇すぎる。


「…………仕方が無い」

 さっきも言った様なセリフを吐き、僕は立ち上がろうとした。


 しかし、あいにくそれは犬に遮られた。そして尻尾はものすごく振っている。

「こら! シヤン! だめでしょ?! 迷惑かけちゃ!!」

「…………」


 中学生ぐらいの女の子がそういうと犬はすぐに大人しくなる。

 しっかりとしつけがされているようだ。


「すみません! 最近はこんなこと無かったんですけど……。ってなんかすごく懐いてますね。動物に好かれやすいんですか?」


「………………いや」

 どうだろうか。あまり動物と触れる機会など無かったのでよくはわからない。

「ほら、行くよ? シヤン。おにーさんも迷惑かけてすみませんでしたー!」

「…………」


 飯田愛美と似た雰囲気を感じた。さらに、疲れた。


「…………仕方が無い」

 本日三度目の同じセリフで行動を開始した。





 その足取りは重い。

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