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黒い鳥さんと一緒。  作者: 蛇真谷 駿一
修学旅行前で一緒。
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とある会の一人の会員の話。


「瞬くーん! べんっきょうおせーてー」


 一人の女子が満面の笑みで一人の男子の席に向かって話しかけていた。

 話しかけられた男子は軽くため息をつきながらも、別段抵抗することなく、勉強の準備を進め始めた。


 そして、それを見つめる私たち。



「……ふわー、まなちゃん、ものすごく嬉しそう……何故に神尾君はあれに気づかない……!?」


 あたしの呟きに、会員(・・)の一人が返してくる。


「瞳ちゃん……いや、副会長(・・・)、それが……私たちが存在してる理由だと思うの」

「…………そうね」


 そう、私たち――『クラスの恋愛事情を見守る会』が存在する理由はそこ。




 最初は、クラスのムードメーカーたる、まなちゃんが突然、今までさほど関わろうとしなかった神尾君について回るようになった事に始まる。


 当初、クラスは騒然としたものの、本人たちが何も気にしてなかったので、私たちの中で、『二人は付き合っている』と言うのが常識になった。


 当時その事に涙を呑んだ男子も少なくない。――余談だが、今現在、その男子たちは、全員この会に所属している。


 もちろん当時、この会は存在していない。

 あたしを含めた、まなちゃんの友達数人が、生温かく見守ってたくらい。



 だけど、一人の男子によってもたらされた情報で事態は急展開を迎えた。


 なんと二人は別に付き合っているわけでは無いと言うのだ。


 そしてその情報をもたらしたのは、そう、現『クラスの恋愛事情を見守る会』会長、藤森宗一君だ。



 だが、その時のあたしたちはそれをまったく信じなかった。

 だって、まなちゃんのあの雰囲気。誰がどう見ても恋する乙女なのだ。


 だからあたしの方からさりげなくまなちゃんに、聞いてみたところ、


「ふぇあ!? ち、違っ! 何言ってるの瞳ちゃん!? ちゅ、ちゅきあってないよ! ……そりゃ私だって……はっ! な、なんでもない!!」


 と言ってダッシュで走って行った。



 すごく、ビックリしたわ。

 まさかまだ片思いだったなんて。


 あたしはすぐにまなちゃんの手伝いをしようと思ったんだけど、いかんせんあたしと神尾君に接点はない。

 そこで、神尾君の友達らしき藤森君に手助けを求めた。


 そしてこの時『二人をくっつける会』が発足された。





 結局、藤森君の協力の下、密かにまなちゃんの手助けをしてたけど、神尾君とまなちゃんに目立った変化はなかった。


 一応、前より一緒にいたり、家に遊びに行ったりと、進展はあるっぽいんだけど、いかんせん神尾君に恋愛の意識が薄い。



 それどころか、ゆりちゃんとも急激に仲良くなりだしたし、藤森君の話では、他にも女の子の影があるとのこと。


 ゆりちゃんとも、恋愛系ではないみたいだけど……。



 神尾君、意外とやり手ね。


 ……冗談はさておき、まなちゃんだけだったら、応援のしようもあったけど、そこに強力なライバルまで出てきてしまったら、大した恋愛経験も無い、あたしでは正直どうしようもなく感じた。


 他の皆も同じようで、結局『くっつける会』は、自然消滅した。



 ただ、無理やりくっつけるのをやめただけで、気になる事は気になる。

 だから、あたしと藤森君で、新しく会を作った。


 それが、今の『クラスの恋愛事情を見守る会』だ。


 最初から周りが他人の恋愛に口出しすべきではなかったのだ。

 全て当人達に任せてしまおう。


 クラスの(・・・・)という風にしたのは、他にクラスメートが、まなちゃんやゆりちゃん、もしくは、神尾君を好きになっても、それさえも見守ることにしたいと思ったため。


 そう思って最初は二人だけだったんだけど、徐々に、会に新しいメンバーが増え、気がつけば今は、クラスの七割が会のメンバーになった。


 その中には、前にまなちゃんが好きだといってた男子たちも、ゆりちゃんを崇拝してたっぽい男子たちも入ってきてた。


 彼らに理由を聞いてみると、二人に持ってた感情は、恋愛とかじゃなくって、見てたら和むとか、尊敬してるとか、憧れてるとか。要はアイドルやマスコットを愛でる感じに、まなちゃんやゆりちゃんが好きだったと気づき、今は単純に幸せになってほしいとの事。


 正直、あたしは良くわからなかったけど、藤森君は、涙目で頷いて握手してたから、いい事……なんだと思う。






「副会長、とりあえず会長が自分の席に戻ったら、二人の邪魔になってしまうから、こっちに?」

「ダメ。あたしたちはあくまで見守るだけ。わざとらしく二人っきりにしちゃうのはよくないかな」


「でも、会長絶対二人にちょっかいかけるよ?」

「んー、逆に藤森君がそうしなきゃ、神尾君は不思議がると思う。観察しててわかったけど、神尾君意外と鋭いし……色恋除いて」



 もう、そこが神尾君らしさに思えてきてる。


「確かにそうかも……」



「とにかく、このテストの後に控えてる、修学旅行で、多かれ少なかれ何かあると思う。……気を抜かずに見守るように、みんなに言っといて」


「わかった」




 ……そうは言ったものの、みんな、険悪になったりとかの、いやな雰囲気は絶対阻止すると思う。

 もちろんあたしも含めて。



 あたしたちは、微妙に仲のいいこのクラスが好きなんだ。

主人公周辺の一幕でした。


会のメンバーが修学旅行でどう絡むのか、お楽しみに……?


そもそも、修学旅行までが長い……。


感想お待ちしておりまっす!!

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