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黒い鳥さんと一緒。  作者: 蛇真谷 駿一
修学旅行前で一緒。
101/144

お嬢様の驚きと呆れと……の話。

 夕食を頂き、自室でゆったりと本を読んでいましたら、突然携帯が震えだしましたの。


「? 誰ですの? こんな時間に……知らない番号ですの」


 普通なら出る必要がありませんけど、なんとなく出たほうがいいような気がしましたので、通話ボタンを押しましたの。


「もしもし?」

『あ、もしもし東城さんですか? 俺俺、俺だって』


「名指しでオレオレ詐欺!? って、この声は……?」

『ナイスツッコミですゆっぴー』


「か、神尾くんですの!?」

 予想外すぎる相手からのお電話でしたの……。


「それで、一体どうされたんですの? ……というか、わたくしの番号はどうやって」

『ああ、矢島さんに聞いた。矢島さんとゆっぴーなら、夜羽の事を知ってるもの同士連絡先とか交換してそうだと思ったから』


「そうでしたの。……普通に考えたら、クラスメートのあなたが知らなくて、知り合ったばかりの矢島獣医が知っていると言うのもおかしな話ですけれど」


 わたくしがそういうと、電話先で笑いながら言いましたの。


『あ、それ矢島さんにも言われた。でも携帯なんていざってとき以外は使わないし。だから今まで矢島さんのくらいしか携帯に登録してなかった』


 わたくしは、神尾くんらしいと思い、話を進めようとしましたが、ふと気になる事が一つ。


「…………矢島獣医だけ、ですの?」

『いや、昔世話になった。雲居(くもい)さんって言う弁護士の先生もまだ入ってる』


「その……飯田さんは」

『ああ、今日交換したわ、ついさっき』


「……この時間帯にどうやって連絡先を交換したのかは置いておきまして……確か、飯田さんと神尾くんはそれなりに長い付き合いなのでは?」

『ん? ああ、矢島さんと同じだ』


「なのに、矢島獣医とは交換していて、飯田さんとはついさっき……」


『? ゆっぴー?』


「神尾くん、とりあえず明日学校でお説教いたしますの!」

『何で!?』


 なんでもかんでもありませんの!

 少し前まで彼女をライバル視してたわたくしですけど、いくらなんでも飯田さん、不憫すぎますの!


『お、落ち着けゆっぴー! 話を戻したい! 割と重要な話なんだって!』

「…………何ですの?」




 ――そして神尾くんから事情を聞きましたの。



「……そうでしたの……。いい方々ですのね」

『……ああ、正直誤魔化したくは無いんだけど……気軽に話していい事でも無いし』


「ええ、信用できる人だけに秘密を話したとしても、それを知っている人が増えれば増えるほど、洩れる可能性が増えますし」



 そして少しの沈黙の後、わたくしは、一つ息を吐いて神尾くんに尋ねました。



「神尾くん、それであなたはわたくしにどうしてほしいんですの?」

『……え?』


「わたくしにわざわざ連絡をとった事からも、神尾くんが何を言いたいのかは、わかります。でも、ここで今わたくしがそれをしてしまったら、それはわたくしが勝手にした事。……でも、今回の事は神尾くんに決めていただきたいですの。善意で相談に乗ると言ってくださっている方々を騙す事になっても」


『…………………………』


 今、わたくしはそれなりにひどい事を言いました。

 人を騙すと言う罪を、判断を任せると言う事で、押し付けたんですもの……。


 ……でも、これからも隠していくなら、必要なことですの。

「……わたくしが夜羽さんの事を考えて、勝手に行動したのではなく、神尾くんに頼まれた(・・・・・・・・・)から行動したと言う事になります。……これはただわたくしが責任逃れをしたくて言った事ですの。ですから『待った』……神尾くん?」


『大丈夫。わざわざ理由付けなくてもわかってる。てか、ゆっぴーが責任逃れをしたいとかありえないし。……元々、ゆっぴーに電話をかけた時点でもう騙す事になるのもわかってた。その上でゆっぴーに頼みたい……夜羽の秘密を隠すために、夜羽の情報と俺との関係、その他もろもろをでっち上げてくれないか?』


「……わかりましたの。任せてください、情報を作る人間にも夜羽さんの事がわからないようにしておきますの」

『……感謝するよ』


 ふぅ、少し忙しくなりそうですの。

 まずは……わたくしの方で、どうして情報の作成が必要なのかを聞かれないように工作して、聞かれたとしてもしっかりとした答えを用意しておかないと。


 わたくしが頭を巡らせていると、神尾くんが「そういえば」と前置き、話しかけてきました。


『電話かけてからずっと『ゆっぴー』って呼んでるんだけど、そこはツッコミ無しだった。とうとうそのあだ名は受け入れたんだ』


 ………………え?


 突然の話の切り替えにポカンとしてる合間に、

『からかい甲斐が減って残念だけど、それはそれでいいか。藤森にも言っておくよ』

 ブツッ!


 と言って、電話を切ってしまいましたの。


 …………………………。


「……はっ! お待ちください!! 受け入れてはいませんの!! ちょっ! 神尾くん!? 聞いてますの!?」




 私がいくら叫ぼうと、携帯からはツーツーと言う音しか聞こえませんでしたの……。

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