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新聞の一面

「はあぁぁぁ⁉」


 リゼナは出勤して早々、同僚の机に置かれた新聞を目にして驚きと不服と疑問と様々な感情が込められた悲鳴のような声を上げた。


 リゼナは高熱を出し、またそれを数日引き摺ったため、リムの邸で療養していた。

 熱も下がり、医者からも問題ないと言われ、数日ぶりの出勤だった。


 リムとは同じ馬車で王宮まで来たが、途中で分かれた。

 今までリムが安全な昼間もリゼナを送迎していたのは、リゼナが恐れをなして逃げる可能性を考えた監視の意味もあった。

 しかし、今はもう必要ない。


 発熱したあの日、リゼナを攫うように社員寮から連れ出したリムが今度もまたリゼナが帰宅するのを邪魔するのではないかと思ったが、あっさりお許しが出た。


 本来はお許しなど必要ないのだが、断りなく帰ってまた攫い出されては困るので、念のために確認した。


 返事は『うん、いいよ』の一言だった。

 あまりにもあっさりしていて拍子抜けしてしまった。


 自分が攫うように連れてきたくせに、もう少し名残惜しんでもいいのではないかと不満に思ってもしかたないと思う。


 何だか機嫌が良さそうなのが怖いと思ったが、これでようやく自由の身になれるのであればそれでも良かった。

 

 私には本がある。

 しばらくゆっくり読書ができなかったため、活字に飢えている。

 

 仕事を片付けて図書館に行かなきゃ。


 リゼナは意気込んで事務課に足を踏み入れた。


「あ、リゼナ。おめでとう。もう、体調は良いの?」

「はい。ご迷惑をおかけしてすみません」


 このような会話を職員漏れなく全員とした。

 そしてその時は気付かなかったのだ。


 みんなの『おめでとう』の意味に。


 そう、この新聞を見つけるまでは。


 新聞の見出しは『リム・ヴァイオレット男爵、年内に婚約か⁉』である。

 見知った名前にリゼナは釘付けになった。

 そして『婚約者』の文字に腹が立った。


 自分にキスがしたいと言って誓約まで結ばせ、結局何もしなかったくせに、やはり恋人がいたらしい。

 弄ばれたのだと思い、一瞬で地の底まで気持ちが沈む。

 しかし、見出しのすぐ側に見覚えのある名前を見つけて思わず新聞を手に取ってしまった。


 そこには『リゼナ・アッシュフォードとの出会い』について書かれており、彼女に想いを伝えるつもりらしい。


「へぇ。そうなの」


 新聞を読んで第一に出た言葉だ。

 まるで他人事のように呟いた。


 誰かしら、リゼナ・アッシュフォードって。

 お気の毒だわ。あんな人に目を付けられて、これから彼に振り回される人生を送るのね……。

 まぁ、私は解放されたからいいけど……。


 ………………リゼナ・アッシュフォード⁉


 は? 何で? どういうこと?


 リゼナは今一度、新聞記事を読み返し、冒頭へと繋がる。

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