確認したい
「会って確かめたいことがあってね」
「確かめたいこと? 何です?」
リゼナには思い当たる節がない。
事件の事後処理については問題なく終わったはずだ。
リゼナも何度が事情聴取を受け、包み隠さず答えているし、仕事以外のほとんどリムと一緒に過ごしてたのでリムがほぼ証人である。
これ以上何を聞くことがあるのだろうか。
リゼナが考えているとリムの手が頬に伸びる。
温かい手が頬を優しくん撫でた。少し寒さを感じるリゼナには心地よく感じられる。
「んっ……」
男らしい骨ばった指が頬を擽るような動きを見せ、リゼナはくぐもった声を漏らす。
視線を上げると妖しげに光る金色の瞳がリゼナを見下ろしていた。
金色の瞳が熱っぽく揺れ、その艶やかな様子にリゼナは視線を奪われる。
長い指がリゼナの顎にかかり、自然に顔を持ち上げた。
「キスしていい?」
形の良い唇から出てきた言葉にリゼナは遂に思考がそちら側に傾いた。
「な、何でそんなことになるんですかっ⁉」
流石に恋愛下手のリゼナでもここまで言われれば、リムが自分に会いに来た理由が事件や仕事に関するものでないと分かる。
もしかしたら、そういうことかもしれないと思いながらも、女性に不自由しないリムに限って自分をそんな目で見るはずがないと自分の中で完結していた。
だけど、こんなにはっきりと言われてしまえば自惚れた思考に陥るのは必然だった。
「ヴァイオレット隊長はその……私のこと……好きなんですか?」
リゼナは恥ずかしさを堪えて、何とか言葉を口にする。
「それを今から確かめたいんだけど」
「…………はい?」
予想外なリムの発言にリゼナは目を点にする。
今なんの話してるんだっけ?
私が好きだからキスしたいというわけじゃなく?
まだ不確定な段階?
「………………どういう意味ですか?」
リゼナはたっぷりと間を置いてから訊ねる。
「君を見てると不思議な気持ちになる。他の女とは全く違う。それだけははっきり言えるけど、これが単なる性的な衝動なのか、それとも別物なのかはよく分からないんだ」
リムは真剣な声音で言う。
「これが性欲からくる衝動だとはっきりすれば抱いた方が早いんだけど。それなら君じゃない方がいい」
あまりにも赤裸々な告白にリゼナは戸惑う。
そしてその言葉にリゼナは胸の中がモヤモヤした。
「………………なら、最初から別の方にお願いすれば良いじゃないですか。私の所に来る前に」
「それも考えたんだけどね。気が向かなくて」
リムの言葉はあまりにも勝手だと思う。
リゼナは苛立つ。
要するに、リゼナを性的な目で見ているのか、それ以外の感情があるのか区別がつかないから試しにキスでもしてみようってことだ。
だったら、他の女性とそういう行為をして冷静になってから考えればいいのでは?
しかも性衝動なら相手が私じゃない方がいいってどういうことよ。
リゼナはリムを白い目で見る。
イライラして頭痛もしてきた。
「あなたみたいな素敵な人が性欲とそれ以外の区別がつかないなんて、そんなことあるんですか? 信じられない」
「君は空腹を感じれば食事をするよね。出された食事に何か特別な感情を抱く?」
「理屈は分かりますが、最低ですね」
リゼナは諦めの溜息をつく。
言いたいことは分かる。
リムにとって女性を抱くことは食事と同じで本能的な欲求を満たす行為でしかないらしい。
何もしなくても勝手に女性が寄ってくるモテ男の典型みたいな人だ。
だから、まともに恋愛をしたことがないし、性欲と恋の区別がつかないと。
リゼナはズキズキ痛む額を押さえ、一呼吸おき、顔を上げる。
「いいですか? 気になる異性とお近づきになりたいのであれば、まずは世間話ができるくらいに距離を縮めることです」
リゼナは説教くさい口調でリムに言う。




