感謝の代償
「さあ? どうだろうね」
特に興味がない風にリムは言う。
「どんな理由があろうとも、こんなものを世に出し、罪もない者を死に追いやった罪は大きい。それも同族を。まぁ、国に味方する魔女達が許せなかったんだろうね」
「国に味方する魔女……私もその一人ではありますね」
最初は攻撃系の魔女ばかりを狙っていると思っていたが、リゼナが小人の標的になったということで、その説は間違いであることに気付いた。
襲われたのは全て国に使える魔女だった。
ずっと自分が狙われる理由が分からなかったリゼナは自分が狙われた理由にようやく納得するとができた。
単に強い魔女を狙っていたわけではなく、国に使える魔女を襲っていたのであれば、リゼナもそれに当てはまる。
まだまだ該当する魔女は多いことから、封印できなければ被害はもっと大きかったと想像できる。
「多くの同胞が殺されたのに、何故、国に味方するのか。ベアトリーチェの怒りのメッセージだったのかもな」
アルノーアはしみじみと言う。
リゼナはその言葉に心が暗くなる。
多くの仲間を失ったことを忘れたわけではない。
ましてや、許したわけでもない。
ただ、前を向きたかった。
過去を嘆いてばかりでは先に進めないと思ったから、リゼナは城に仕えることにした。
他の魔女や魔法使いも同じ気持ちだったのではないだろうか。
だけど、きっとそれは見る者からすれば裏切りなのかもしれない。
「私も、あなたが守ってくれなければ今頃生きてはいないでしょうね」
襲われた魔女達は皆、国に仕える魔女だった。
攻撃系の力を持った強い魔女達があっけなく小人に命を奪われたのは、ベアトリーチェ自身が魔力の強い魔女だったからだろう。
非攻撃系で下位の魔女であるリゼナはリムがいなければ死んでいた。
実際に危ない場面もあった。
今生きているのはリムのおかげであると断言できる。
「そうだろうね。感謝しなよ」
そのリムらしい言葉にカチンとくる。
確かに、身を守る術を持たないリゼナにとって、今回の事件は命の危険が伴うもので、本当に死を近くに感じた。
しかし、リムの言葉はあまりにも一方的やしないか。
恩着せがましくなりたくはないが、自分がいなければ事件はまだ解決していないのだし、今回自分はイレギュラーな事態にもよく対応したと思っている。
もう少し私に感謝してくれても良いんじゃない?
「あなたこそ、少しは感謝して下さい。 私がいなければ今頃被害は拡大してますよ」
少し攻めた物言いでリゼナはリムを小さく睨む。
すると感情の見えないリムの顔に笑みが浮かぶ。
何となく嫌な予感が背筋を駆け抜けた。
「いえ、すみません。何でもないです」
反射的にリゼナはその言葉を口にしていた。
首ごと視線をリムから逸らし、妖しげに細められた瞳から逃れようとしたが遅かった。
がしっと頭を大きな手で鷲掴みにされ、無理矢理リムの方を向かされる。
そこにはにっこりと笑みを浮かべるリムの顔があった。
傍から見れば極上の笑みだが、リゼナにとっては悪寒を催す恐怖の微笑みだ。




