白紙のページ
リゼナは零れ落ちる涙を拭い、呼吸を整える。
そして気付いたことがあった。
「ほとんど実話なんですよね、この本。だけど、悲しみを乗り越えてからの描写が何一つないんです」
この本の結末は復讐を遂げられず、小人に見放された白雪が暗い憎悪の沼に一人孤独に沈むところで終わっている。
彼女の復讐心は消えることはないという描写で終わるのだ。
「そういえば、この本って最後の数ページが白紙なんです」
リゼナは本を開き、白紙のページをリムに見せた。
「本当だね。何か意味があるのか…………」
リムは指を顎にかけて思考する。
その姿が色っぽくて、真剣な話をしている最中であるのにリゼナは思わず見惚れてしまう。
ダメダメ、考えないと。
リゼナは自分を律して、リムから視線を剥した。
「そういえば、最後の小人はどんな内容に書き換えたの?」
リムは今更だけど、と付け加えてリゼナに訊ねる。
「最後の一人は一番長く白雪の側にいる小人でした。一通り罪は犯しているのは踏まえて、白雪を改心と説得する役に回ってもらいました」
なるべく小人達が罪を犯す前にその役割を放棄させるような内容に書き換えてきたリゼナだったが、最後の一人は違う。
「最終的には自分と一緒に罪を償っていこうという流れに持っていきたくて……あれ?」
これって本当にベアトリーチェの過去にそっくりじゃない?
「無意識にそれをしたんなら、君って凄いよ」
白雪の元に最後まで残った小人が最終的にベアトリーチェを支えることとなった男性に重なる。
そこでリゼナはピンときた。
「ヴァイオレット隊長、私……この本にある白紙のページの意味が分かったかもしれません」
リゼナは白紙の数ページを凝視して言う。
「だけど……それをするには核が……」
リゼナの予想が正しければ、核さえあればどうにかなる。
その核がどこにあるのか分からないからこうやってベアトリーチェの話を始めたのだが、本題から大きく逸れた気がする。
リゼナは脱力する。
「一つ、心当たりがある」
リムの言葉にリゼナはぱっと目を見開く。
「本当ですか⁉」
「確証はないよ。心当たりってだけで」
「それはどこですか? 今から急いで……」
「明日にしよう。もう暗いからね」
気持ちが逸るリゼナにリムは馬車の小窓に視線を向ける。
小窓の向こうは既に薄暗くなっていた。
「明日、君の業務が終わったら行ってみよう」




