表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

60/91

到着した騎士団

「ぐっ…………」


 グレイはリムを睨みつけて奥歯を噛み締める。

 グレイにとってもリムの桁外れな強さは誤算だったようだ。


「それで、君の持っているそれ。何か役に立ったのかな?」


「クソッ!」


 グレイの手にある砂時計もこうも理不尽なほど強いリムの前には意味をなさない。

 苛立ちのあまり、グレイは悪態をつき、砂時計を床に投げつける。


 それだけではなく、遠くからまた複数の足音が聞こえてくる。

 足音の多さにリゼナはグレイの仲間がまだいたのかと、身構える。


「おうおう! 騎士団長様のお通りだぜー!」


 明朗快活な声が通路に響き渡り、これから誰が乗り込んで来るのか知らせてくれる。


「部屋に入る前からもううるさい」


 うんざりしたようにリムにリゼナは苦笑する。


「おぉ、派手にやって……ないな。随分とお行儀よく片付けたじゃねーか」


 騎士達を率いて乗り込んできたのは騎士団長のアルノーアだ。

 部屋に入るなり、室内を見渡して驚きを顕わにする。

 それは他の騎士達も同じ様子で、床に倒れた男達を見てざわつき、お互いの顔を見合っている。


 しかし、その理由がリゼナには分からなかった。


「リゼナ嬢、無事か?」


 部屋の入口に立つアルノーアと視線が合う。

 怪我はしているが、命に別条はない。

 リゼナが返事をしようとした時だ。


「無事じゃない。見れば分かるでしょ」


 リゼナが答えるよりも早くリムが答えた。

 一瞬、キョトンとした表情を見せたアルノーアだったが、すぐに部下に指示を出し、救護班を手配してくれた。


 そして全員の視線がグレイに集まる。 


「もう逃げられないよ。グレイ・ソール」


 リムは真っすぐにグレイを見据えて言う。

 グレイを騎士達が取り囲み、アルノーアが部屋の入口を塞いでいる。


「あはははっ! まさかこんなあっさりと追い詰められると思わなかったよ!」



 そう言ってグレイは天井を仰いで高らかに笑う。

 退路は断った。

 もう観念するしかないこの状況で、グレイの笑い声が不気味に響く。


「あーあ、途中まで上手く行っていたのに。君が邪魔するから計画が台無しだ。リゼナ、君が手に入ればそれでもいいと思ったけど、残念だよ」


「私はあなたの仲間になるつもりはないわ」


 恨めしそうな顔でリゼナを見つめるグレイにリゼナは断言した。


「どうしてだい? 君だって家族を殺されたんだろ? 悔しくないのか? それとも、君には本当に心がないのか?」


 心がないなんて、そんなはずない。

 母と祖母を失ったことはリゼナの人生を大きく狂わせた。



「あなたの気持ちはよく分かるわ。大事な人の命が理不尽に奪われた悔しさ、悲しさ、苦しさ、国を恨む気持ちもね」


 二人が生きていれば、今頃どんな風に生活していただろうかと、失った家族を想い涙した回数は数えきれない。


 自分だけが助かった。

 それは母と祖母が守ってくれたからだ。


 無力な自分を呪い、世の中に嘆き、国を恨んだ。

 あの時の暗い感情は常にリゼナの中にあり続ける。


「だけど、失った命は戻ってこない。魔女や魔法使いを集めて国を討っても憎しみは連鎖するだけ。それよりもまた同じことが繰り返されない世の中を作ることの方が今は大事だと思う。そのために戦っている人達がいる」


 リゼナの言葉にグレイは眉を顰める。


「私はその人達と今後の魔女や魔法使いと人間とのあり方について考えていきたい。あなたのように自分達のために関係のない人達の平和を脅かすようなやり方は支持できない」


 リゼナの言葉が静かに響いた。

 

 リムは言った。

 もう二度と、魔女狩りのような事件は起こしてはいけないと。

 そのために自分ができることをしていると。


 それなら、私もそうありたい。

 

 ただ過去を嘆くのではなく、これからの未来ある者達が自分のような悲劇に遭うことがないように。


 リゼナはちらりとリムに視線を向ける。

 するとそこには口元に小さな笑みを浮かべるリムがいた。


「あーあ、本当に君にはがっかりだよ。リゼナ」


 グレイはやれやれと首を横に振り、大袈裟に肩を落として見せる。

 騎士達に囲まれて逃げ場のない状況でも、どこか余裕を感じさせた。


「逃げるつもりかい?」


 リムの問いにグレイは笑って見せた。

 騎士達にも動揺が走る。


「おい! すぐに捕えろ!」


 アルノーアが腕を上げて合図すると一斉に騎士達が動き出す。


「今捕まるわけにはいかないんだ。それじゃあ…………うあぁぁっ!」


 何人もの騎士達がグレイに飛び掛かり、呆気なくグレイは拘束された。

 あまりにもすんなり拘束出来てしまったので気張っていたリムもアルノーアも唖然としている。


「くそっ……一体何をした⁉」


 腕を後ろで押さえ込まれて、膝を着かされたグレイはリムとアルノーアを睨みつける。


「何かしたの?」

「いや…………特には。魔封じの拘束具ならあるが、魔術師相手でもお前がいれば取り逃がすことはないから特に対策はしていないぞ」


 そう言ってリムとアルノーアは不思議そうに顔を見合わせる。

 そしてグレイがはっと何かに気付いたような顔でリゼナに視線を向けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ