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第五部隊隊長の実力


 バタバタと重たいものが床に倒れるような音がし、騒々しかった室内が一瞬にして静まり帰る。


 リゼナは恐る恐る瞼を持ち上げた。


 するとそこに広がっていた光景に目を見開く。

 倒れているのはリムではなく、リムに刃を向けた男達の方だった。


 リムが倒れていないことにリゼナはほっとするが、すぐに異様な光景に身体が強張る。


 血を流した男達が床にぐったりと倒れているのだ。


「安心しなよ。殺してないから」


 死体は女子供には刺激が強すぎるからね、とリゼナの心を慮るような発言をした。

 死体じゃなくても充分刺激が強い光景である。 


 確かによく見れば、倒れている男達は小さく呻き声を上げていた。

 

 そのことにリゼナは安堵した。

 

「全く、舐められたものだね」


 剣を振り、付着した血液を払い落としながら、リムは一歩、前へ出る。


「例え魔法が使えなくとも、君達みたいなゴロツキ相手に負ける僕じゃない」


 自信たっぷりに不敵な笑みを浮かべ、殺気を放つリムに圧倒された男達は息を飲み、後退る。


「君達はリゼナを拉致、監禁、脅迫、暴行した罪、王宮の安全を脅かし、市井の混乱を招いた。この僕、王宮騎士団第五部隊隊長リム・ヴァイオレットが国王の名のもとに君達全員拘束する」

 

 リムは高らかに宣言すると剣を振るった。


「凄いわ……」


 まるで獲物に飢えた獰猛な獣のようにリムは剣を振るう。

 その圧倒的な強さに太刀打ちできる者はおらず、恐れをなして逃げ惑う者達を一方的に追い詰める加虐性が見られた。

 

 ……楽しんでるのかしら?


 逃げる獲物をいたぶる獣のようなリムの姿にリゼナは少しだけ怖くなる。

 

 しかし彼の動きには無駄はなく、的確に相手の急所を避けて確実にダメージを与えて戦闘不能にしているのだ。


 最初は多勢に無勢の卑怯な状況でリムが不利に思われたが、その考えは間違っていた。

 

 一瞬でもリムが男達にやられてしまう未来を想像したリゼナだったが、あの時間は本当に無駄だったと感じる。


 これリム・ヴァイオレットだ。


 騎士団の中でも群を抜いた戦闘能力を持ち、好戦的でその圧倒的な強さで相手を畏怖する騎士団一、危険な人物。


 それがリムだ。


 魔法が使えずとも、戦闘能力の高さで彼の右に出る者はいないという。

 それが王宮騎士団で一部隊を率いる者の所以だろう。


 この手勢でも全く引けを取らず、むしろ戦闘を楽しむ余裕があるなんて……。

 

 あまりにも一方的なリムの攻撃にリゼナは少しだけ男達が気の毒になる。

 圧倒的な力を前に男達は成すすべなく、倒れていくだけだ。


 気が付くとグレイを残し、全員が床に突っ伏して動けない状態になっている。


「さぁ、お待たせ。君の番だよ」


 屍と化した男達を踏みつけてリムはグレイに冷笑を向ける。

 その金色の瞳は怒りで揺れていた。



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