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付き人の苦労

「何で私がこんなにヴァイオレット隊長のせいで頭を抱えなければならないんですか?」


 男から不埒な真似でもされたのかと思ったケイトは安堵した後に首を傾げる。


「えっと……一体、隊長の何について頭を抱えているのですか?」


 ケイトはリゼナに訊ねる。


「恋人はいるのかとか、恋人持ちの女性と浮気をしているのかとか、色々です」

「………………」


 ケイトは意味が分からず、大きく瞬きを繰り返した。

 

 リムの恋人の有無や好みのタイプは聞かれることも多いが、恋人持ちの女性との浮気に関して問われたのは初めてである。



「あの人、恋人はいるんですか? それとも女性の相手は一晩限りのタイプですか?」


 非常に答えにくい質問を投げかけられ、ケイトは視線を泳がせた。


「…………どちらかと言えば後者ですね…………」


 リゼナの追及するような視線に耐えられず、ケイトは答える。


「その人達から私、刺されたりしないでしょうか?」

「あと腐れないお相手を選んでいるはずなのでそれはないかと」


 正直に話してしまったが、あとでリムに怒られるんじゃないかとケイトは不安に襲われた。


「それに、あの人。この魔女狩りの主犯だって噂があるそうじゃないですか」

「それは有り得ません」


 ケイトは即否定する。

 それだけは絶対にあり得ない。


「本当に?」

「ええ。あの人が願うのは魔法使いと人間が互いに均衡を保てる世の中です。互いを尊重し合い、互いを脅かすことのない世の中を望んでいるのです。自らが進んで国を混乱させ、ましてや同族である魔女達を殺すような真似は決してしません」


 長く側にいるケイトにもリムの考えを読み取るのは時に困難だ。

 しかし、昔からこの想いに関しては変わりないとケイトは確信している。


「…………そうですよね。あの人が主犯なら私を負傷してまで助ける必要はないし、そもそも私を探す必要はなかった。……すみません、馬鹿なことを言いました」


「いえ……そもそも誤解されやすいあの人が悪いので」


 これも断言できる。

 自分の思想を実現するためにやってきたことはかなり強引で、それにより四方八方から恨みを買い、恐れられているのは事実なのだ。


「私には関係ないはずなのに……何でこんなに嫌な気分になるんでしょうか」


 リゼナは赤ワインのグラスをぼんやりと見つめながら呟く。

 その姿はどこか弱弱しくて、守ってあげたくなるというか、なんだか庇護欲をそそられる。


「あの人のことを考えると……私…………」


 まるで恋する乙女のようなリゼナにケイトはドキリとする。

 

 自分の周りの女性達がかなりクセの強い人達ばかりなケイトには恋する乙女のようなリゼナの姿は可愛らしく映る。


 彼女が隊長を好きだというなら、応援してもいいかもしれない。

 ただ、相手があのリム・ヴァイオレットでいいのかというのは大きな疑問だが。


 しかし、ケイトはリゼナの淡い恋心を微笑ましく思った。


「私、あの人のことを考えると、胸がムカムカして腹立たしくて仕方がないんです」

「……………」


 ケイトの想像とは違うリゼナの言葉にケイトは言葉を失う。

 


 どうしてだと思います? と聞くリゼナにケイトは一言『気持ちは分かります』と答えた。

 

 ケイトはしばらくリゼナに付き添い、リムを待った。

 その間もリゼナに向けられる男の視線を払い落し、すぐに酒に手を伸ばそうとするリゼナを止める。


「ケイトさんもどうですか。美味しいですよ」

「私は結構です」

 ケイトの言葉にリゼナは唇を尖らせる。


 ふと、中央の通路に人だかりができている。

 人だかりの中心にリムの姿が見え、ケイトは何かあったのかと心配になった。


「リゼナさん、少し様子を見てきますからここにいてくだ……あ、ちょっと!」


 ケイトが言い終える前にリゼナは人だかりの中心へと向かっていく。

 

「どうして自分の周りは話を聞かない人ばかりなんだ」


 ケイトはげんなりした表情でリゼナを追いかけた。


 



 


 

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