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夜明け

 勢いよく扉が破られ、バラバラと音を立てて木片が飛び散る。

 部屋の中に騎士団員が雪崩れ込んできた。


「うおお、随分派手にやられてるじゃねーか⁉」

「うるさいな、出てってくれる? 不法侵入だよ」


 先頭に立っていた人物がボロボロのリムの姿に驚愕し、他の部下らしき騎士達も絶句している。

 それほど、リムの怪我は酷いということだ。


「引っ込んでてよ。無力なんだから」

「口は相変わらずで安心したよ。上司に対する態度じゃねぇけどな。喜べ、リム。夜明けだ」


 リムの上司と名乗る男性は東の窓を指示す。


「小人共、出直しな」


リゼナとリムは視線を窓の方に向けると空の向こうが薄っすらと明るくなり、夜明けを告げていた。


 そうだわ! 物語の内容通りなら小人達は日が落ちてから白雪の元から離れて、魔女の心臓を狩りに出かける。そして、夜明けとともに白雪の元へ戻るのだ。


 だから、リゼナは昼間は普通に仕事をすることができ、リムが側を離れることを許してくれるのだ。


『心臓、心臓。魔女の心臓。次は貰う、お前の心臓』


 小人達は不気味な声で歌いながら、朝焼けと共に姿を消した。


 チュンチュンっと聞こえてきた小鳥の囀りがあまりにも平和で、先ほどまでの出来事が嘘のように感じられた。


 疲労感と安堵が一気に押し寄せ、リゼナはその場にへなへなと座り込んでしまう。


「た……助かった…………きゃっ」


 床に座り込んだリゼナの視界が真っ白な世界で覆われた。


「な、何⁉ って……シーツ?」


 そこではっと我に返り、自分の格好を思い出す。

 今、自分は薄い夜着しか身に着けていないのだ。


 それなのに、部屋にはたくさんの騎士達が入り、廊下も人で溢れている。


 急に羞恥心が沸き起こり、リゼナはシーツごと自分を抱き締めた。



 リゼナが視線を持ち上げるとそこには薄っすらと瞼を持ち上げてリゼナを見下ろすリムがいる。

 

 シーツはリムが掛けてくれたらしい。


「ありがとうございま…………」


 お礼を口にしようとするリゼナは言葉を切った。

 周りが明るくなるとリムの怪我の酷さがより明瞭になる。


「すみません、どなたか医師を! ヴァイオレット隊長の治療をお願いします!」


 シーツになんか包まっている場合じゃない。

 リゼナはシーツを纏ったまま、リムを座らせて落ち着けようとベッドに向かって腕を引く。


 意外にもリムは大人しくされるがまま、ベッドに腰を降ろした。

 リムの上司だという人も他の騎士達は目を点にしてその様子を見ていた。


「何ですか?」

 

 リムの視線を感じ、リゼナは問う。


「蓑虫みたいだね」

「もう黙ってて下さい!」


 カチンとくる一言にリゼナは声を上げる。

 この人は人を厚底眼鏡やら、芋虫やら、蓑虫やら、失礼過ぎる。


 こんな大怪我をしているのに冗談を言っている場合じゃない。

 

 リゼナは自身が包まっていたシーツの端で、リムの目元に優しく当てて、押さえる。

 

 もう腕やら脚やら見えているが気にしている場合ではない。

 人命第一、自分の羞恥心よりもリムの手当が優先だ。


「君、いつからアイマスク外してたの?」

「小人を二体本に戻してからですけど」


 それがどうしたというのか。


「君、目が見えない状態でどうやって本の内容を書き換えたんだい?」


 リムは不思議そうに首を傾げてリゼナに問い掛けた。



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