衝撃の事実
診察室で検査を受けたリゼナは検査の結果を説明されて唖然とした。
「これは視力の低下ではありませんね。病気です」
まるで頭上に雷が落ちたかのような強烈な衝撃を受け、リゼナは言葉を失う。
「う……嘘……視力が落ちただけですよね……?」
「これは緑靄病といいまして、簡単ご説明しますと目に靄がかかり、物が見えにくくなる病気なのです。鏡をご覧ください」
そう言って鏡を差し出され、リゼナは鏡に映る自分とキスが出来そうなほど鏡を近づけて中を覗き込んだ。
「アッシュフォード様の瞳は濁った緑色をしております。この緑色の部分が緑靄病なのですが……」
「あの……両目ともほぼ全体緑にみえるんですけど。というか、私の目って元から緑色じゃないんですか?」
身体の全ての力を眉間に集中させて力いっぱい目を細めてリゼナは鏡を睨みつける。
おそらく、酷い顔をしているのだが、その様子をリムは声を押し殺して笑っているのが聞こえてきてリゼナは複雑な気持ちになった。
「病気が進んでいるのです。元は違う色なのかもしれません」
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「まさか……目の病気だったなんて…………」
病院を出たリゼナは消え入りそうな声で呟いた。
「随分と間抜けだね。でも良かったじゃない」
未だに衝撃から立ち直れないリゼナに隣を歩くリムはおかしそうに笑う。
長年、目が見えにくいのは本の読み過ぎからなる視力の低下だと思っていた。
明るい所であろうが薄暗がりであろうがそこに本があるのであれば読み続けた。
目に悪いと知りながらも読むことは止められず、自身の視力を対価として本を読み続けたからであると信じて疑わなかったというのに。
リゼナは手元にある薬袋に視線を落とす。
そこに入っているのは魔法点眼薬だ。
本来であれば何度か通院してその都度、病院での点眼を行うらしいのだが。
『何度もご足労頂くのは申し訳ない』
要約するともう来ないでくれ、ということで貴重な魔法点眼薬を無料で頂いたのである。
説明書もあるのでその通りに使い、万が一、異常があった時には来院するように言われている。
この病気は魔力を餌にするウイルスから感染するもので、魔女や魔法使いには珍しくない病気だ。
リゼナも名前は知っていた。
気付かなかっただけで。
「今日はありがとうございました。今日、病院に行かなければ一生知りえなかったかもしれません」
リゼナは深々と頭を下げる。
今日、自分の目が悪い原因がはっきりとしたことに関しては素直に感謝している。
「そうだろうね。まぁ、僕に一生感謝するといいよ」
ふっと口元に笑みを作るリムにリゼナは恐怖を覚えた。
これってまずい状況なんじゃない?
これって私も弱味を握られたことになるんじゃない?
そう思うと急に不安と恐怖が押し寄せてきて、背中に嫌な汗が流れた。
「じゃあ、次行くよ」
「次?」
リゼナが聞き返すとリムは呆れ顔になる。
「パーティーに出席するにはドレスが必要でしょ」




