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第99夢 下男の覚悟の夢

動物実験は成功し菌を食べさせたネズミ、猫、犬は健康になりました。

次は人間です。

 夜も更け、医者の屋敷には静けさが漂っていた。


 医者は一つの小瓶を手に取り、それをじっと見つめた。


「……おい」


 隣にいた下男が背筋を伸ばした。


「はい、先生」


 医者は小瓶を掲げ、中の菌をかき混ぜるように軽く振る。そして、静かに言った。


「おまえ、飲んでみるか?」


 下男の顔が強張る。


「……え?」


「人体実験だ。お前にこの菌を飲んでもらいたい。」


 下男は思わず唾を飲み込んだ。沈黙が流れる。


 だが、やがて下男は静かに口を開いた。


「ぜひ、飲ませてください」


 医者は驚いた。思いのほか、即答だった。


「本気か?」


 下男は強くうなずく。


「先生、私は農家の三男として生まれ、ずっと苦しい生活を送っていました。ですが、先生に拾われ、こうして生きています。先生がいなければ、私はとっくに野垂れ死んでいたでしょう。この御恩を今こそお返しするときです」


 彼の目には、迷いがなかった。


「それに……」


 下男は続ける。


「この菌が本当に効くのなら、花巻の町の人々が救われる。ひいては、この国の多くの人々が救われるのです。それならば、私の命など惜しくはありません」


 医者は言葉を失った。


 この男がここまで考えていたとは。


 自分は金儲けのことばかり考えていたのに、この下男は人々の命を救うことを第一に考えている。


 ひょっとすると、この男のほうが俺よりずっと偉いのでは?


 医者は思わず苦笑した。そして、気を取り直し、下男の肩を叩いた。


「お前は立派な男だ。よくぞ覚悟を決めた」


 下男が静かにうなずく。


「実験が成功すれば俺もお前も大金持ちだ。町の人々はもちろん、国中の人々が救われ、俺たちは感謝されるだろう!」


 医者は誇らしげに言った。


「よし、よく覚悟した!」


 下男は改めて深く頭を下げた。



 下男は震える手で小瓶を受け取った。中の白い菌を見つめ、一度深く息を吸う。


 「……では、いただきます」


 決意のこもった声とともに、下男は菌を口に含み、一気に飲み干した。


 喉を通る感覚は、ほんのり苦いような、土の匂いのような独特の味がした。下男は水を飲んで菌を完全に飲み込む。


 飲み込んだ瞬間、医者と下男は互いに目を合わせる。


 沈黙。


 下男はそっと自分の腹に手を当てた。


 「……何も変わりませんね」


 医者は息を吐き、静かにうなずいた。


 「これからだ。しばらく様子を見よう。」

下男の運命やいかに。

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