第98夢 ネズミ、猫、犬の夢
薬の候補となる菌が見つかりました。
医者の屋敷では、さらなる実験が始まっていた。
前回の試験で長生きする菌を発見した医者は、今度はその菌だけを使って二千匹のネズミに餌を与えることにした。比較対象として、普通の餌を食べるネズミ、漢方薬や生薬を混ぜた餌を食べるネズミも同じ条件で育てる。
数週間後、結果は明白だった。
普通の餌を食べたネズミの半数は、鼻水を垂らしながら死んでいた。漢方薬や生薬を与えたネズミは、それよりはましだったが、それでも三分の一が死んでしまった。しかし——
「見ろ、菌を食べたネズミはどうだ!」
医者が指差した木箱の中では、ほとんどのネズミが元気に走り回っていた。死んだのは、ほんの数匹だけだった。
「これは……やはり、間違いない!」
医者は興奮した面持ちで拳を握った。下男も驚きを隠せない。
「すごいですね、旦那様! こんなに違いが出るとは!」
だが、医者はすぐに冷静になった。
「いや、まだだ……ネズミだけでは不十分だ。次は、猫で試してみよう。」
こうして、医者と下男は町を巡り、野良猫をかき集めた。だが、実験は容易ではなかった。
「ぎゃああ! 痛てえ!」
「先生! 顔が! 顔がひっかかれてます!」
猫たちは暴れ、引っ掻き、二人は傷だらけになった。しかし、菌を食べた猫たちの健康状態はネズミと同じだった。普通の餌を食べた猫のうち半数が病気で弱っていったが、菌を与えた猫はほとんど健康だった。また病気だけでなく、ケガによるキズも化膿せずに治りが早かった。
「よし、次は犬だ!」
町で野良犬を集めるのは、猫以上に苦労した。噛まれそうになりながらも、なんとか数十匹を確保し、同じように餌を与えて様子を見る。
結果はまたしても同じだった。
「犬も……効く!」
医者と下男は興奮した。
「これは、とんでもない発見ですよ、先生!」
「間違いない……これはすごい薬になるぞ!」
医者は鼻をすすりながら、大きくうなずいた。もはや疑う余地はない。ネズミ、猫、犬——どの動物にも効果がある。
となれば、次はいよいよ……
「人間か……」
医者は腕を組み、考え込んだ。
誰で試すか?
自分か? いや、それは避けたい。
では病人を募るか?いや、病人が死んだら、ヤブ医者と言われるだろう。
「……どうする?」
医者の瞳は、金と名声を夢見て輝いていた。
さて人体実験です。




