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第94夢 ネズミの実験と新たなお告げの夢

医者はネズミで薬の実験を始めます。

 病で評判を落とした若き医者は、自らの病を治すため、そして再び繁盛するためにネズミを使った薬の実験を始めたのだった。


 医者の屋敷には、数えきれないほどのネズミが集まった。箱の中で鳴いている。


ひとつきで何倍にも増える。

ネズミにも親から受け継ぐ体質があるらしい。人と同じだ。夢の中で不思議な坊さんが言っていた。


同じ親から生まれたネズミに分けて、それぞれ番号をつけて管理する。


一日3貫(約12kg)の麦を中心としたエサを下男とともに鼻を垂らしながらネズミにやる。たいへんな手間だが、やりはじめると意外に楽しい。かわいいもんだ。


 「さて、お前たちで試させてもらうぞ。」


 医者は鼻をすすりながら、ネズミたちに話しかけた。


  まずは、昔ながらの漢方薬や生薬を与えてみた。風邪によく効くとされる麻黄湯、気を巡らせる人参湯、喉に良い桔梗湯など、手持ちの薬を体重に合わせて調合し、それぞれのネズミに与える。


  薬を与えないネズミと比較する。なるほどうまい方法だと医者は感心する。夢で不思議な坊さんが教えてくれたのだ。


 すると、確かに効果はあった。


 体調を崩したネズミは徐々に回復し、元気に動き始める。死ぬネズミの数も少し少ない。


しかし、どの薬も効き目が遅い。


 「ふむ……やはり、昔ながらの薬はじわじわと効くものだな。」


 医者は腕を組み、考え込んだ。

  人間も同じだ。


 漢方薬は確かに病を治すが、時間がかかる。その間、患者は不安を抱え、治療の成果を実感しにくい。治る前に死んでしまう患者もいる。


 「もっともっと早く効く薬はないのか?」


 患者が一日か二日で回復すれば、医者の評判は一気に高まる。 そうなれば、誰もが私の元に集まるだろう!そうしたら、ものすごく儲かる!


 しかし、どうすればよいのか。


 実験を続ける医者の頭には、さまざまな考えが巡った。


 西洋の薬か?いやいや、長崎から漢方薬や生薬は入ってくるが、さすがに西洋の薬は入らない。


 それとも、未知の組み合わせを試すべきか? そうして悩みながら眠りについた夜、医者は夢を見た。


 夢の中で、荘厳な光の中に、また不思議な坊さんが現れた。


 「花巻の城下町の一軒の造り酒屋を訪ねなさい。」


 低く響く声が告げる。


 「そこに、あなたが求める答えがあります。」


 医者はハッと目を覚ました。


 「造り酒屋?」


 鼻をすすりながら、医者は首をかしげた。 酒は百薬の長と言われるが、果たして本当に病を治すのだろうか?


しかし、夢のお告げを無視して、儲ける機会を逃すわけにもいかない。毒食らわば皿まで、いや酒飲めば杯までか?


 こうして、医者は造り酒屋を訪ねる決意をしたのだった。

医者は造り酒屋に向かいます。

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