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第92夢 天職かもしれねえな、の夢

古代エジプト人は放線菌が混じった抗生物質テトラサイクリン入りのビールを飲んで病気を治療していました。

今、江戸時代初期の造り酒屋のおやじが、放線菌を大量培養しています。

 コウジぶたを改造したセイロで培養した二百種類の放線菌の種菌。


 それらが無事に育ったことを確認すると、造り酒屋のあるじは次の工程へと進んだ。


 今度は、大きなコウジ箱を使い、大量培養をする。


 五貫(約二十キロ)の麦を蒸し、一つのコウジ箱に入れる。

 そこへ、選び抜いた種菌を振りかけ、丁寧に混ぜていく。


 しかし、さすがにいっぺんに二百種類の培養は無理だ。

 二十種類ずつ、毎日作業を進めることにした。


 これがなかなかの重労働だった。


 麦を蒸す熱気と、麹室の湿度で汗が吹き出す。

 だが、あるじは黙々と作業を続けた。


 「我ながら、よく働くもんだ」


 そうつぶやくと、苦笑がこぼれた。


 昨夜なんかは、晩酌をする間もなく、そのまま眠ってしまった。

 自分が酒を忘れるなんて、ちょっと前なら考えられなかったことだ。


 しかし


 「なんだか、天職かもしれねえな」


 そう思うと、どこか心が軽かった。


 あるじは一息つき、また次のコウジ箱へと手を伸ばした。


 コウジ箱を使った大量培養は順調に進んだ。


 蒸した麦に振りかけた放線菌は、三日もすればびっしりと繁殖する。

 その作業を毎日繰り返し、約一か月。

 二百種類の放線菌を、それぞれ五貫(約二十キロ)ずつ培養することに成功した。


 「ふう……ようやく全部そろったな」


 造り酒屋のあるじは、汗をぬぐいながら、ズラリと並んだコウジ箱を見渡した。


 圧巻の光景だった。


 かつて、この蔵には日本酒を仕込むための麹が並んでいた。

 しかし今は、未知の薬となるかもしれない放線菌がぎっしりと詰まっている。


 まるで新しい時代が、ここから生まれようとしているかのようだった。


 「さて、次は、これを医者が取りに来るんだったな」


 そうつぶやくと、あるじはふっと笑った。


 最初にあの夢を見たときは、本当にこんなことができるのかと思った。

 だが、気づけば毎日夢中で働き、ここまで来た。


 三郎とミツの頼みを、俺はちゃんと果たせたんだろうか。


 そんなことを思いながら、あるじはゆっくりと腰を伸ばした。

 今日の晩酌は、うまくなりそうだ。




どんな医者が放線菌を取りにくるのでしょうか?

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