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第9夢 河原で孤独に草を刈る農民の三女ミツの夢

いよいよミヤザワケンジ2.0が世界平和にむけて動き出します。

まずは故郷岩手花巻の小さな寺を拠点に人々に夢を見せます。

江戸時代初期、花巻近くの村にある外れ寺にお坊さまが来たらしい、と村人は噂した。この小さな寺に住む僧侶は、不思議に昼間に訪ねても姿を見せることはほとんどないが、寺に泊まった者は、ありがたいお話を聞き、深い安らぎを得て帰るのだという。

おかしいことに、泊らなくても、寺で昼寝をしたらお坊さまに会えた、と語る者もいた。


「きっと偉いお坊さまなんだろうねぇ。」

「忙しくて、昼間は人助けに出かけているに違いない。」


村人たちはそんな風に話していたが、僧侶の正体を知る者は誰もいなかった。


農家の三女、ミツも将来への不安を抱えており、ぜひ外れ寺でお坊さまに相談したいと思っていた。しかし、毎日の農作業が忙しく、寺を訪れる時間が取れないのだった。


初夏の日差しが河原を照らす中、ミツは汗を流しながら草を刈っていた。この季節、草刈りは重要な仕事の一つだ。刈り取った草は、糞尿と混ぜて堆肥にし、田畑を肥やすのだ。


ミツは村の鍛冶屋の三男、三郎さまが作った鎌を手に、力強く草を刈り続けた。この鎌は、どんな硬い草や小石に当たっても刃こぼれすることがなく、家の宝物だった。三郎さまの技術の素晴らしさに、ミツは日々感嘆していた。


この村では鍛冶屋は肝煎さま(村長)に次ぐ格式高い家柄で、亡き先代の鍛冶屋はお殿さまから直々に重要な仕事を任されたという話もある。


三郎には兄が二人いたが、長男の太郎は農民とはあまり交流せず、次男の次郎は農民を見下す態度を取ることが多かった。その中で、三郎だけが農民に優しく接してくれる。ミツが三郎に心惹かれる理由の一つだった。


「この鎌は、本当に気持ちいいなあ。」


ミツはそう呟きながら鎌を振った。炊事や洗濯、掃除といった「女らしい」仕事に憧れるが、家では力持ちなために男手が必要な仕事ばかり任されていた。田畑の手伝いや草刈りは嫌いではないが、姉たちのように女らしい仕事を覚えたい気持ちもあった。


「いつかお嫁さんになれたら……」


ふとそんな夢が心をよぎる。しかし、母はいつも「三女を嫁に出す金なんてうちにはない!」と怒る。理不尽に怒る母の言葉が、ミツの心を苦しめた。


そんなことを考えていた時、鎌が大きな石にひどく当たりそうになった。


「しまった!」


普段のミツなら絶対にしない失敗だった。家宝の鎌が欠けてしまったら、母に叱られるだけでなく、きっと食事も抜きにされるだろう。


だが、その瞬間、腕に不思議な感触が伝わった。鎌の刃がしなったような気がしたのだ。


恐る恐る刃を確認すると、驚いたことに傷一つついていなかった。三郎さまの鎌は、小石を固い刃ではね返すが、大きな石に当たったら、わずかにしなって衝撃をそらしたのだ。


「やっぱり三郎さまの鎌はすごい……」


ミツは思わず微笑んだ。その鎌には、三郎さまの技術と優しさが込められているように感じられた。


ミツは草刈りを終え、一息つこうと河原の岩に腰を下ろした。春の風が心地よく吹き抜ける中、疲れた体を休めながら、未来への淡い夢を心に描いた。


やがて、気づかないうちに穏やかな眠りが彼女を包み込んだ。

鍛冶屋の三郎に淡い気持ちを抱くミツはどんな夢を見るのでしょうか?

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