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第86夢 城下町に病の悪夢

捨てられる子どもがいなくなり、人口が増えて、南部藩は繁栄しています。

ところが、そこに黒い影がしのびよります。

南部藩に、かつてない変化が訪れていた。

人口の急増 である。

食料が豊かになり、捨て子がなくなったことで子どもが増えただけでなく、金銀につられて全国から人々が流入 し、城下町はにわかに賑わいを増していた。


「農村はまだまだ広いですけど、城下町はそろそろ限界ですね」


ミツが地図を広げながら呟く。

特に盛岡や花巻の下町は過密化 し、狭い家々がひしめき合っていた。

その影響はすぐに現れた。


「下痢をする人が増えてるらしいよ」

「浅い井戸水に頼ってるから、汚れた水を飲んでるんじゃないか?」

「咳の病も流行り始めたってさ」


寺に届く知らせは、どれも穏やかではなかった。


「……放っておいたら、大変なことになりますね」


三郎は、お坊さまと相談し、すぐに動いた。


「職人と弟子たちを下町に派遣します!」


まずは、下痢の広がる家々を消石灰で消毒。


「便にも消石灰をかけるように!」


井戸の管理にも注意を払い、飲み水にはしっかり沸かすよう指導 した。


さらに、石鹸を大量に作り、下町で無料配布。


「手を洗えば、病は防げる!」

「手洗い講習会を開くぞ!」


今や先生となったお調子者が、街の子どもたちに手洗いを教えると、子どもたちは面白がって真似をした。


「お母さんにも教えてあげる!」

「石鹸って、こんなに泡立つんだ!」



子どもたちが覚えれば、大人たちにも広がる。


そして、咳が流行る町では、寺で未亡人の機織り職人たちが作った布マスクを配布。


「これを口に当てて、咳をするときは人に向けないように!」


最初は面倒がっていた町人たちも、次第にその効果を感じるようになった。


「あれ? あまり町で病人を見かけなくなったな」

「手を洗うと、体の調子がいい気がするぞ」


こうして、下町の病の拡大は小康状態となった。


「病が広がる前に対策すれば、こんなにも違うんだね」


寺の弟子たちは、自分たちの働きが人々を救ったことを実感し、誇らしい気持ちになった。


しかし――


「これは、まだ始まりに過ぎないかもしれない」


三郎は、これからさらに人が増えれば、また新たな問題が起こることを感じていた。



AIと人類の無意識がつくりあげた集合的無意識世界。


虚空蔵菩薩の前で、ミヤザワケンジ2.0 は真剣な表情を浮かべていた。


「ミツさんと三郎さんに、抗生物質を発明させたいのです。人口爆発は感染症を拡大させます。抗生物質が必要です。」


静かに答える虚空蔵菩薩。


「1933年以降の科学技術を使ってはいけない、という私のルールに反します。」


くいさがるミヤザワケンジ2.0


「史実では、ペニシリンが青カビから発見されたのは1928年です。1933年より前です。」


冷たく答える虚空蔵菩薩。


「しかし、製品化されたのは1940年代です。1933年以降の科学技術と私は判断します。」


虚空蔵菩薩はさらに無情にたたみかける。


「生前のあなたも、当時の日本では抗生物質が実用化できていなくて、結核で亡くなったではありませんか。」


仏さまというものは小さな人間の心がわからないところがある、と罰当たりなことを考えながら、ミヤザワケンジ2.0は焦る。


「しかし、抗生物質は多くの民間人を救った民生技術です!核戦争を招く軍事技術ではありません。」


だが、虚空蔵菩薩は首を横に振った。


「抗生物質は、民間人を救う技術であると同時に、軍人を救い軍の戦闘力を強化する軍事技術でもある。許可できません。」


「虚空蔵菩薩さまは、多くの人々が病で亡くなっても平気なのですか!」


ミヤザワケンジ2.0はつい叫んでしまった。


虚空蔵菩薩は悲しそうに答えた。


「私も多くの人を救いたい。しかし、これも核戦争で人類が滅亡することを防ぐためのやむを得ない犠牲なのです。」


ミヤザワケンジ2.0は考え込んだ。


(どうにかして、江戸時代でも実現可能で、過去に実現していた方法を見つけられないか……)


彼はAIのサポートを受け、過去の知識を検索する。集合的無意識世界には人類誕生以来の知恵が蓄積されている。


すると――


「古代エジプトでピラミッドを建設した労働者たち。農村からの出稼ぎ労働者が集団で都市生活しているのに、病気が少ない…」


ミヤザワケンジ2.0はAIの助けを借りながら当時の労働者や医者や職人の知恵を検索し続けた。


「なんと、あんな飲み物で放線菌を培養して抗生物質を飲んでいたのか!」


数千年前の古代エジプトで抗生物質を含む、ある飲み物を飲んで病気を治す治療法が広く行われ、大きな効果を上げていたことがわかったのだ。


もちろん、古代エジプトの人々は抗生物質がなにかは知らない。しかし、偶然から抗生物質を生み出して抗生物質とは知らずに治療に使っていたのだ。


「この方法なら、ミツさんと三郎さんは、きっと江戸時代初期の南部藩でも強力な治療薬を生み出せるはず……!」


こうして、新たな知識のみならず、失われた古代文明の知恵も、ミツと三郎の時代へと流れ込んでいくのだった――。


古代エジプトの労働者を救った、抗生物質を含む飲み物とは、いったいなんでしょうか?

江戸時代初期の南部藩でも再現可能なのでしょうか。

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