第84夢 新たな住まいと独立の準備の夢
弟子たちの独立にむけて準備が進んでいます。
婚礼が終わり、生活も少しずつ変わり始めた。
ミツと三郎は、三郎の部屋に住むことになり、そこにいた独身の弟弟子たちはとりあえず神社に移ることになった。
「まさか神社に住むことになるとはなぁ……」
「でも、神様のそばって、ご利益ありそうじゃないか?」
「まあ、これも修行の一環ってことで!」
「神社なら酒が飲めるし、いいじゃないか。」
「ああ、農作業のあとの晩酌は最高だな!」
「ははは。違いねえ。」
余談だが、石灰窒素には、アルコールの分解を阻害し悪酔いさせる働きがある。かつては乱暴なことに禁酒薬として処方されていたほどだ。だから、石灰窒素をまく作業をした夜は晩酌はなしだ。
新婚の弟子夫婦には、新しく部屋が与えられ、それぞれの生活が始まった。
また、弟子たちの独立に向けて、寺は大きな動きを見せた。
「馬が必要ですね。」
三郎はお坊さまに相談して、十頭の農耕馬を購入することを決めた。
戦国の世が終わり、軍馬の需要が減ったことで、馬の売れ行きは落ちていた。
しかし、寺で十頭もの農耕馬を買うというと、馬飼いたちは大喜びした。
「こんなに買ってもらえるとは……助かります!」
「いい馬ですね。大事に使わせてもらいますよ。」
こうして、弟子たちが独立していくための準備が進んでいった。
さらに、三郎とミツ、そして弟子たちは、農機具を鋼鉄から作る仕事で大忙しだった。
太陽炉で作った鋼鉄の塊を、炭火とふいごで柔らかくして、鎚で打つ。鍛冶屋の三郎の本領発揮である。鋼鉄の塊が棒になったり、円盤になったり、ミツも弟子も面白くてしかたがない。しかし、三郎の名技に見とれているひまはない。木炭を運んだり、鋼鉄の塊を運んだり、ミツと弟子たちも三郎の手伝いに大忙しだ。
回転馬スキ、馬クワ、種まき機、スコップ、草刈り鎌、稲刈り鎌、脱穀機など、次々に十組の農機具が作られていく。
「こんなに鋼鉄があったら、売って家が何軒たつだろう。」
お調子者が思わずそんなことを言って、回りの弟子たちに頭を叩かれる。
「三郎先生の名器を売るなんて冗談でもひどいだろ!」
「お前たちには、農機具をやらない、っていわれたらどうすんだ!」
「お前は結婚しても、お調子者だな!」
三郎は笑って言う。
「ははは。みなさん、そのくらいで許してやってください。今は鋼鉄は金銀の次くらいに高いですが、もうすぐ、銅や鉛よりずっと安くなりますよ。」
「えええ!」
弟子たちは驚く。
「今は青銅や木材でつくられている道具や建物やいろいろなものが鋼鉄で作られるようになります。丈夫ですからね。」
「はあああ、先生たちのお話しはいつもびっくりすることだらけだ。」
「もう少ししたら、そう、世の中が戦の世に戻らないことがたしかになったら、みなさんにも鋼鉄の作り方を教えます。まずは、黒鉱からの金銀の作り方を覚えてくださいね。」
「はい!」
「鋼鉄より金銀のほうが高いもんな!」
また冗談を言って、まわりの弟子たちに叩かれるお調子者である。
戦のない世の中、平和な世の中をめざします。




