第83夢 にぎやかな婚礼の夢
二組の結婚式で村と寺は大盛り上がりです。
寺の境内には、美しい花が飾られ、華やかな雰囲気が広がっていた。
今日は三郎とミツの婚礼の日。
仲人を務めるのは、村の肝煎(村長)。寺と村の発展に尽力してきたふたりの結婚を、村人たちも心から祝福していた。
「三郎さまとミツさまには、村の道を砂利道にしていただいて、ほんとうに便利になりました。」
「冬には融雪剤でたいへん楽になりました。」
「村に多額の銀を寄付していただいてありがとうございます。」
村の役員の大農家たちが、かわるがわるあいさつする。
「三郎さま、ミツさまは、よう働くし、すごい発明もなさるし、村の宝でございますよ」
肝煎が目を細めながら言う。
「これからも力を合わせて、良い夫婦におなりください。」
「はい!」
三郎とミツは並んで深く頭を下げた。
ミツは、今まで家族とは縁がないと思っていた。でも、こうして三郎と夫婦になり、寺の仲間や村人たちに祝福されていると、新しい家族ができたのだと実感する。
――こんなに幸せなことがあるんだ。
ふと視線を上げると、人混みの中にひっそりとたたずむ二人の姿が目に入った。
両親だ。
ミツの胸が、かすかにざわめく。
母は相変わらず、どこか作り笑顔で、父は寡黙なまま。二人とも、村人のひとりとして控えめに婚礼に参加していた。
驚きはしたが、ミツは不思議と落ち着いていた。
(……来てくれたんだ)
それだけでも十分だった。
両親だけのために何かしてあげたいとは思わない。でも、村のため、国のため、世界のために働けば、きっと両親のためにもなる。これが「家族」としてのけじめになるのかもしれない。
ミツはそっと微笑み、心の中で小さく呟いた。
――私は、幸せです。
「さて、次は俺たちの番ですね!」
お調子者の弟弟子が、緊張した面持ちの妹弟子の手を取りながら言った。
「師匠たちに続けるなんて、こんな光栄なことはありません!」
そう、今日は弟子たちの婚礼も行われるのだ。
慌ただしいが、すっかり着替えて立派な夫婦となった三郎とミツが仲人を務め、ふたりの婚礼が執り行われた。
「これからはふたりで力を合わせて、支え合って生きていってください。」
「はいっ!」
新しい夫婦が誕生すると、弟子たちや村人たちが一斉に拍手を送る。
「おめでとうーー!!!」
「めでたい、めでたい!!」
「今日は飲めるぞーー!!」
そのあとは、神社に場所を移して宴となった。賑やかで幸せな婚礼の宴は、夜遅くまで続いた。
集合的無意識世界。深い蒼の虚空に、銀河のような光が漂っていた。
その中心に立つのは虚空蔵菩薩。無限の知恵をたたえ、穏やかな微笑みを浮かべている。
その前には、宮沢賢治の魂があった。いや、今はミヤザワケンジ2.0とでも呼ぶべき存在だろう。
「あなたは生前、宮沢賢治だったころ、独身のまま多くのカップルを結びつけましたね。」
「はい、自分が独身を選んだからこそ、親戚や友人には結婚してほしかったのかもしれません。」
「レストランのウェイトレスと親友を結婚させるために、女性の両親を説得しに青森まで出かけたこともありましたね。」
「おせっかいにもほどがありました。ははは。」
虚空蔵菩薩が語りかける。
「ガーデンウェディングや立食パーティーの披露宴など、当時としては奇抜なプロデュースもしていましたが、今回の三郎さんとミツさんの結婚式は比較的伝統的な形でしたね」
ミヤザワケンジ2.0は軽く笑った。
「いやいや、虚空蔵菩薩さま。この時代は江戸時代であって、大正時代ではありませんから」
「なるほど」
虚空蔵菩薩は静かにうなずく。
「それに、今回の婚礼は二組の合同結婚式でした。これだけで十分珍しいですよ。」
「それはそうですね。」
「それになんといっても、家同士の結びつきではなく、個人同士の結婚だった。これが画期的なことでございます。」
「ほう。」
「三男三女の結婚でお互い家のあととりではありません。そのふたりが結婚したのです。」
「なるほど、確かに、その通りですね」
虚空蔵菩薩は、銀河の輝きの中で微笑んだ。
「三男三女が結婚できるようになり、人口爆発を起こし、経済成長につなげます。個人どうしの結婚はそのためにも必要です。」
「古い時代のなかに、確かに新しい風が吹いている。なるほど、そこまで考えていましたか。」
虚空蔵菩薩は、ミヤザワケンジ2.0にやさしく微笑むのだった。
金銀銅鉄鉛亜鉛の増産、食料増産、結婚ラッシュ、人口爆発、歴史がかわっていきます。




