第82夢 結婚の夢
ふたりの弟子が妙にそわそわしています。
ふたりの弟子が妙にそわそわした様子で前に進み出た。
ひとりは、寺のムードメーカーであり、お調子者の弟弟子。もうひとりは、はじめは泣いてばかりいたが、手先が器用で裁縫が得意で、今はみんなの衣服の手入れをしてくれて喜ばれている妹弟子だった。
「……あのう、お願いがあるのですが」
珍しく神妙な顔で切り出すふたりに、ミツと三郎は顔を見合わせる。
「なんですか? ふたりして改まって」
「おれたち、夫婦になりたいんです! 仲人をお願いできませんか?」
「えええええ!?」
ミツが大きく目を見開き、驚きの声を上げた。
「いつのまにそんな話になったの!?」
「じ、実は……前から少しずつ……」
「気が合うなぁと思ってたんですけど、寺の仕事を一緒にしてるうちに、あ、この人と夫婦になれたらなって……」
頬を赤らめて言う妹弟子に、弟弟子も「えへへ」と照れ笑いを浮かべる。
ーーめおと。夫婦。結婚。
言葉が脳裏でぐるぐる回る。弟弟子と妹弟子の組み合わせは微笑ましい。だが、彼らの言葉を聞いて、ミツの心には別の感情が渦巻いていた。
「……仲人かぁ」
目の前のふたりは、幸せそうに笑っている。
結婚して家族になる。それは、ミツにとって遠い話だった。実家では三女として辛い扱いを受け、最終的には売られるようにして寺に預けられたのだ。
夫婦のぬくもりなんて、縁のないものだと思っていたときもあった。
でも、三郎さまにあこがれて、いっしょに仕事をして、毎日が本当に楽しい。
(……めおとになるって、こんなに嬉しそうなものなんだな)
ふと、視線を横にやると、三郎が腕を組んで困った顔をしている。
「わたくしたちも独身ですからね……」
その言葉に、ミツは思わず吹き出しそうになった。
「三郎さま、なに真面目に悩んでるんですか?」
「いや、その……仲人ってのは、普通、夫婦がやるものですからね」
「でも、仲人に決まりなんてあるんですか?」
ミツが首をかしげると、三郎はふぅと息を吐いた。
「……いや、いい機会かもしれないな」
「え?」
ミツが聞き返すよりも早く、三郎はすっとこちらを向いた。
真剣な目。まっすぐにミツを見つめるその表情に、ミツの胸がどくんと高鳴る。
「ミツさん、私と夫婦になっていただけませんか?」
「え……?」
心臓の音が大きくなる。
弟子たちのざわめきが一瞬消え、世界がふたりきりになったような錯覚を覚えた。
「ずっと一緒にいて、共に学び、共にこの寺を支えてきた。ミツさんとなら、これから先の道を歩んでいけると思う」
三郎の手が、そっとミツの手に触れる。
(……この手、ずっと私を支えてくれた手だ)
ミツはその手を、しっかりと握り返した。
「はい、ぜひお願いします」
自分の声が驚くほどはっきりしているのがわかった。
「こんなわたしでよろしければ、ぜひお願いします!」
その言葉に、弟子たちが一瞬静まり、次の瞬間――
「うおおおおおおおおお!!!」
「めでてぇぇぇぇぇ!!!!」
「先生たちがついに!!」
「ミツ先生、おめでとうーー!!」
歓声が上がり、弟子たちは拍手しながら大盛り上がり。
「いやぁ、三郎先生とミツ先生が結婚か!」
「いやいや、まだ結婚してないほうがおかしいだろう。」
「お調子者、お前、影の功労者じゃねえか?」
「いやいやいや、俺たちがついでみたいな扱いになってないか!?」
「当たり前だろ」
「まぁまぁ、仲人は夫婦がやるものだから、これで正式な仲人になったってことで!」
「よし、今日は宴だー!!」
「婚礼の前祝いだ!」
「神社に集まれ!」
「おう!」
こうして、思いがけない流れで、寺は結婚祝い一色となったのだった。
ついにミツと三郎が結婚!
夫婦となってますます世界を変えていきます。




