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第77夢 春の苗代と直まきの驚きの夢

いよいよ稲の作業が始まります。

春の陽射しがやわらかくなり、いよいよ水稲の苗代づくりが始まった。冬の間に積もった雪はすっかり溶け、田んぼの土が湿り気を帯びている。


「苗代づくりをはじめますよ!」


ミツの掛け声に、弟子たちは鍬を手に田の一角をならし始めた。土を丁寧に砕き、水を引き入れると、やがて田は粘土でどろどろとした状態になる。


「おお、まるでヨウカンみたいだな!」


鍬を動かしていた弟子のひとりが笑いながら言った。


「ヨウカンなんて、寺に来なけりゃ一生見ることなかったけどな」


「だな!」


ほかの弟子たちも笑いながら手を動かす。村の家では甘い菓子など滅多に食べられない。だが、寺ではたまにご馳走としてヨウカンが振る舞われることがあり、すっかりその味と形を覚えてしまっていた。


しかし、そんな余裕のある会話の一方で、弟子たちの心の中には少しの不安もあった。


「でもさ、村の田んぼよりずいぶん早く苗代を作るけど、本当に大丈夫なのか?」


「ミツ先生が、油紙を張れば寒さをしのげるって言ってたろ?」


「そうだけど……苗代に油紙なんて、聞いたことねえぞ」


弟子たちは顔を見合わせる。確かに、村の種まきはまだ一ヶ月も先の話だ。普通なら苗代づくりには早すぎる時期。しかし、ミツが自信満々に「油紙を張れば大丈夫!」と言っていたのだから、きっと間違いはないのだろう。


「ま、やってみるしかねえな!」


気を取り直した弟子たちは、次々と苗代の準備を進めていった。


その頃、別の田んぼでは、馬の「あくり」が種まき機を引いていた。


「ん? なんだこりゃ? まるで麦まきみたいに……」


田んぼに入った弟子のひとりが、驚きの声をあげた。


「えっ!? まさか、稲も種を直接まくのか?」


弟子たちは目を見開いた。これまで稲作といえば、苗代で苗を育て、それを田植えするのが当たり前だった。だが、今目の前で行われているのは、まるで麦のように直接種をまく「直まき栽培」だった。


「こ、これなら苗を育てる手間もいらねえし、田植えの手間もかからねえぞ!」


「すげえ……こんなやり方、初めて見た!」


弟子たちは興奮しながら、種まき機の動きをじっと見つめる。馬が歩くたびに、種が一定の間隔で田に落ち、すぐに土がかぶさっていく。まるで機械仕掛けのように、正確に、無駄なく。


「これなら、大勢で田植えしなくても済むな……」


感心しながらつぶやく弟子に、ミツが笑いながら近づいてきた。


「驚いた? これは『直まき』っていうんですよ! 苗より種もみのほうが寒さに強いんだって。」


史実でも明治時代北海道では直まき栽培が主流だった。


「そんなすげえやり方があるなんて……」


「でも、これが本当にうまくいくのか?」


「なにいってるの、うまくいくよう管理するのがわたしたちの仕事ですよ!」


ミツがみんなを励ますと、弟子たちは笑いながら顔を見合わせた。

こうして、寺の稲作は新たな時代を迎えようとしていた。

次回は麦の収穫です。

豊作を期待しましょう。

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