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第74夢 お坊さまがお酒を許してくれた夢

お坊さまが久しぶりに帰ってきます。若者たちはお願いがあるようです。


 夜の寺はしんと静まり返り、雪明かりが本堂の縁側を淡く照らしていた。ミツも三郎も弟子たちも、今日は神社の話で盛り上がったが、疲れて良く寝ていた。


 そんな中、玄関の戸が静かに開く音がした。正確に言えば、熟睡中の寺の若者たちに集合的無意識空間からミヤザワケンジ2.0が夢を見せた。「お坊さま」が帰ってくる夢を。


 「お坊さま、お帰りなさい!」


 弟子の一人が駆け寄り、アセチレンランプを手に取る。そこには帰ってきた旅装のお坊さまの姿があった。


 「ただいま戻りました。みなさん元気にしていましたか?」


 「はい!」


 お坊さまは弟子たちの元気な返事に微笑みながら、雪を払い、奥へと進んだ。三郎とミツが迎えに出る。


 「お坊さま、お帰りなさいませ」


 「三郎さん、ミツさん、ご苦労でしたね」


 「実は、お坊さまにご相談がございます」


 三郎は、お坊さまを囲炉裏のそばにお連れして座ると、今日の出来事を語り始めた。


 「弟子たちが薪取りに行った山で、朽ちかけた神社を見つけました。肝煎(村長)さまに話を聞いたところ、山伏の方々が使っていた神社だそうです。しかし、その後誰も管理する者がおらず、放置されてしまったそうです。」


 お坊さまは静かに頷き、話の続きを促した。


 「肝煎さまに神社の再興を依頼されました。ぜひ、私たちで神社を再興したいと考えています。寺だけでなく、村の人々にとっても大切な場所になるはずです」


 お坊さまはしばし目を閉じ、ゆっくりと考え込んだ。そして、静かに口を開いた。


 「それは、素晴らしいことですね」


 三郎とミツは笑顔で顔を見合わせる。弟子たちも嬉しそうだ。


 「この寺は、ただ研究学習の場であるだけでなく、村と共にある場所です。神社の再興も、きっと村のためになるでしょう。」


 お坊さまは微笑みながら続けた。


 「それに、神楽の道具が残されているというのも、何かの縁かもしれません。」


 三郎は深く頷いた。


 「ありがとうございます、お坊さま。弟子たちと力を合わせ、必ず立派に修復いたします」


 「何か、その他に話がありそうですね。」


 「その、お坊さま。申し上げにくいことながら、弟弟子たちが神社なら、お酒が飲めると盛り上がっておりまして…」


「ははは。私は世の中に禁酒を薦めておりますので寺での飲酒はよろしくありませんが、まあ神社でならよいでしょう。みなさんは酒を飲まなくてはやっていられない、そんな寒い時代に生まれたのですから。」


「はい。神社では、体を暖める程度の飲酒を弟子たちに許すことといたします。」


「うむ。正月には神楽を奉納し、皆で祝いの席を設けるとよいでしょう。神楽を踊れる方はいますか?」


隣村出身の弟子が手をあげる。


「はい。私は隣村の神社で小さいころから、山伏神楽を習ってまいりました。」


「おお、それは頼もしい。ぜひみんなに教えてあげてください。」


「はい、がんばります!」


「隣村の神社の御祭神はなんといわれる神さまでしたかな?」


「はい。セオリツヒメさまです。」


「おお、なるほど。セオリツヒメさまは、たしか水の神さまで、アマテラスオオミカミさまの化身とも、大日如来さまの化身ともいわれる謎の多い女神さまですね。」


「水と太陽の神さまなら、沢と太陽炉を守ってくれそう。こちらにお招きするには、ぴったりですね!」


ミツが嬉しそうに言う。


 お坊さまは穏やかに笑い、囲炉裏の火を見つめた。寺の者たちが村のために力を尽くし、そして村人たちがそれを受け入れてくれる。かつての山伏たちがそうであったように、寺もまた、この土地に根付いていくのだろう。


 三郎は拳を握りしめ、決意を新たにした。明日から本格的に神社の修復を始めよう。みんなで新年を迎える準備をするのだ。


 外では雪が静かに降り続いていた。寺の中には、新たな希望が灯っていた。





宮沢賢治は禁酒を薦めていました。

童話「ポラーノの広場」でこう書いています。


「諸君、酒を呑まないことで酒を呑むものより一割余計の力を得る。たばこをのまないことから二割余計の力を得る。まっすぐに進む方向をきめて、頭のなかのあらゆる力を整理することから、乱雑なものにくらべて二割以上の力を得る。」


一方、酒飲みに同情するやさしさも持っていました。こうも書いています。


「けれどもこういうやりかたをいままでのほかの人たちに強いることはいけない。あの人たちは、ああいう風に酒を呑まなければ、淋しくて寒くて生きていられないようなときに生れたのだ。」

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