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第70夢 意見いろいろ、クリスタルガラスを何に使おうか、の夢

クリスタルガラスの試作に成功したふたりです。

「すごいものを作ってしまいましたね」と三郎。「ほんとうに」とミツも小さくつぶやく。


お坊さまの教えが、こうして一つの形になった。ふたりは雪の山に立ち、しんと静まりかえった冬の空に向かって、作りたてのクリスタルガラスの灰皿を高く掲げた。雪がガラスの光で虹色に輝いた。


三郎とミツは未来に思いを馳せながら、山を降りていく。足元の雪が、キュッキュッと心地よい音を立てていた。


ミツと三郎が雪道を戻り、寺に帰ってくる頃には、弟子たちはちょうど昼ごはんを終えて薪割りをしていた。濡れた脚半を火鉢で乾かしながら、ミツは懐から包みを取り出した。弟子たちが何だろう、と集まってくる。


「見てください、三郎様と私で作った新しいクリスタルガラスです!」


ミツが包みを開くと、そこには透き通るような輝きを放つ灰皿があった。普通のビードロとはまるで違う透明度、光を受けて虹色にきらめく美しさに、弟子たちは思わず息をのんだ。


「なにこれ…光のかたまりみたいだ」


「いや、虹だろ。虹を磨いたみたいだ」


「こんなにきれいなビードロ、見たことない!」


みんなが口々に驚きの声をあげる。


「これ、何で作ったんですか?」


妹弟子が興味津々でたずねる。ミツが胸を張って説明する。


「山の太陽炉で、鉛精錬の廃液と、山で採れた石灰と石英を溶かして作ったんですよ!」


「廃液からこんなものができるんですか?」


「お坊さまって、どれだけすごいことを教えてくれたんだろう」


弟子たちはまた感心する。ミツは得意げに続ける。


「しかもこれ、クリスタルガラスっていう特別なビードロなんですって!普通のビードロより光をよく通して、丈夫で、何よりきれいなんです!」


「すごいなあ…これでお茶碗作ったら、さぞかしきれいだろうな」 「私はかんざしがほしい!」 「おらは徳利を!」「いや杯だ。」「花瓶がいいわ」「アセチレンランプの火をクリスタルガラスで覆ったら? 」「それはきれいでしょうね!」「虹色に輝くぞ!」


次々に飛び出す意見に、ミツは「まだ灰皿ひとつしかできてないのに」と苦笑する。けれども、弟子たちの目は輝いていた。


「このガラスも、農具みたいにみんなで使えるようになったらいいですね」


と妹弟子が言うと、三郎がゆっくりうなずいた。


「ガラスも農具も、ものづくりは同じです。無駄を出さず、知恵を絞って、みんなで手をかける。そうやって作るものは、必ず良いものになります」


三郎の言葉に弟子たちは大きくうなずいた。誰かがぽつりと言った。


「俺たち、農業だけじゃなくて、何でも作れる職人になれるかもしれないな」


「そうですよ!」ミツが両手を叩く。


「農業が中心ですけど、ガラスも、鍛冶も、何でもできる百姓鍛冶職人集団になるんですよ!」


弟子たちは「おおー!」と声をあげる。雪が降りしきる寺の庭に、元気な声が響き渡る。


その日から、弟子たちの間では「次は何を作ろうか」という話題が絶えなかった。未来への夢がまたひとつ、ふくらんだ瞬間であった。

弟子たちの夢がふくらみます。

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