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第67話 市場の大騒ぎと笑顔の帰り道の夢

楽しい買い物でしたが、お調子者がいません。

市場は昼を過ぎても賑わいが続いていた。ミツと弟子たちはそれぞれ好きなものを買い、焼きそばや甘酒、焼き団子などを満喫してすっかり満腹だ。荷車の上には、反物や草履、弁当箱やお香まで、さまざまな買い物袋が山になって積まれている。


「お寺で使うのが楽しみですね!」

「きれいな着物を縫いたいな。」

「もっと反物を買えばよかったかな」

「来月もまた来たいなあ」


弟子たちはすっかり市場が気に入ったようだ。


「さて、そろそろ三郎さまを探しに行きましょうか。お米屋さんか、両替屋さんにいるはずです。」


ミツの声に、弟子たちも荷車を引いて歩き出した。


ところが、その時だった。


「あれ?お調子者がいない!」


弟子の一人が気づいて辺りを見回す。さっきまで焼き団子を片手に歌い踊りながら機嫌よく歩いていたはずなのに、いつの間にか姿が消えている。


「あいつ、何かやらかしたんじゃ…?」


全員の顔に不安がよぎる。


と、その時、何やら大声が聞こえてきた。


「すみません!すみません!そんなつもりじゃなかったんです!」


「こら待て!泥棒!」


ミツと弟子たちが駆けつけると、そこには反物を頭から脚までからだじゅうに巻きつけたへんな人物が必死の形相で店主から逃げ回る姿があった。


「なんだ、あれ?」


「あっ、あいつお調子者だ!」


「ほんとだ、お調子者だ!」


「何やってるんですか!」


「ち、違うんです!これは…」


お調子者が顔の前にかかる布をかき分けて指さした先には、布屋の店先に積まれていた反物がいくつも崩れて落ちていた。


お調子者の弁解によると、よそ見をして歩いていたら、反物の山にぶつかり、布が彼の頭にすっぽりと被さった。慌てて外そうとしたところ、反物の山が崩れてしまったのだという。


「こいつ、反物を盗んで逃げたんだ!」と店の主人が怒鳴る。


「いえいえ、誤解です!この人は泥棒なんかじゃありません!」


ミツが割って入り、事情を説明した。


「すみません、うちの弟子が不注意でした。反物の代金は私どもがお支払いします」


ミツと弟子たちは一斉に頭を下げた。


「まあ、お買い上げいただくなら、お客さんだ。ほんとうに気をつけてくださいよ。」


怒っていた店主も怒りをおさめてホッとした顔になる。


「あなた、少しは落ち着きなさいよ」

「はい…すみません。」


お調子者は真っ赤な顔で平謝りだ。


なんとか場は収まり、反物数本の代金はお調子者があるだけ払い、足りない分は弟子たちとミツがお金を出し合って支払った。


「まったく、最後に肝を冷やしましたね」


ミツが苦笑いすると、弟子たちも「お調子者だから仕方ない」と肩をすくめる。


「でも、この反物いい柄だわ」


「ミツ先生、この反物で着物を縫ったら三郎先生惚れ直しますよ」


妹弟子たちがミツの肩に反物を合わせておしゃべりする。

ミツは顔を赤くして「何いってんの」と照れる。


「まあ、これもいい思い出になるわよ」と妹弟子が笑ってお調子者に言うと、お調子者もようやく安心して笑顔を見せた。


そこへ、米屋での買い物と両替を終えた三郎と馬のあくりが戻ってきた。


「どうしたんですか、みなさん、その汗びっしょりな顔は」


「ちょっとした事件がありまして…」


ミツが事情を話すと、三郎は笑った。


「ははは、最後にたいへんな事件でしたね。前方不注意は農作業でも危険ですから気をつけてくださいね。」


「ごめんなさい、もうしません!」


お調子者が両手を合わせて謝ると、みんなもつられて大笑い。


荷車には買った物や土産がぎっしり。あくりもどことなく誇らしげに首を振っている。


夕暮れの帰り道、弟子たちは一日を振り返りながら笑い合った。


「市場って楽しいですね。でも、次はもうちょっと落ち着いて歩きます」


「焼き団子は最高だったなあ」

「次はうどんを三杯食べます!」


市場での出来事を語り合いながら、寺へ向かう道のりはあっという間だった。


寺のまわりでは、肥やしをたっぷり入れた畑に、麦が芽を出している。


寺の門が見えてくると、誰からともなく「ただいまー!」と声をあげる。


こうして、ミツと三郎と弟子たちの買い物は、大騒ぎと笑顔いっぱいで幕を閉じた。


花巻のはずれの村の秋も深まってきました。

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