第66夢 花巻の市場は宝の山、の夢
花巻の城下町で毎月1日に開かれる市場で楽しい買い物です。
朝早く、寺の門前には弟子たちが少しよそ行きの着物姿で集まっていた。普段は作業着ばかりの弟子たちも、今日はちょっとおしゃれをしている。三郎が手綱を引く馬の「あくり」には、大きな荷車が繋がれている。
「今日はみなさん、楽しい一日になりそうですね」とミツが笑うと、「うわー、市なんて久しぶりです!」「あれもこれも見たいです!」と弟子たちが口々に言う。
「あくりも市場は初めてですね」と三郎が馬の首をなでると、あくりは鼻を鳴らして答えた。
こうして、寺を出発した一行は、田んぼ道を歩き、村を抜けて花巻の城下町へ向かう。馬の歩みに合わせて荷車の車輪がゴトゴトと音を立てる。朝の風が気持ちよく、弟子たちも歌を歌ったり、冗談を言い合ったりしながら進んでいく。
「市場ってどんなものがあるんでしょうか?」
「なんでもありますよ。反物に草鞋、鍬に鋤、塩や干物、焼き団子にお茶まで」
「お金いっぱい持ってきました!」
麦まきが終わり、今は少し余裕のある時期。毎日きちんと給金をもらっている弟子たちは、ひもを通した銭を握りしめている。
ほどなくして花巻の城下町が見えてくる。市場はすでに大賑わいで、荷車や牛、馬がひしめき合い、商人たちの威勢のいい声が飛び交っていた。
「さあ、着きましたよ」
市場の入り口で、三郎は手綱を引きながら言った。
「私は米屋に行きます。寺の米がそろそろ足りなくなりますからね。それから、裏山の鉱山で掘れた金と銀を換金してきます」
「あくりは三郎さまと一緒ですね」とミツが馬の背をぽんぽんと叩いた。
馬のあくりは、農具を引くだけでなく、荷物運びにも活躍している。
「みなさんはミツさんの言うことをよく聞いて、迷子にならないようにしてくださいね」
「はい!」
弟子たちが元気よく答えると、三郎とあくりは米屋へ向かって歩き出した。
「では、みんなで買い物に行きましょう!」とミツ。
まずは市場の通りをゆっくり歩きながら、どんなお店があるのかを見て回る。
「わあ、すごい人!」
「焼き餅の匂いがします!」
弟子たちは目を輝かせて、あちこち見ては歓声をあげる。
「鍛冶屋さんだ!」
ひとりの弟子が指差した先には、立派な鍬や鎌がずらりと並ぶ店があった。三郎の実家ではなく城下町の鍛冶屋のようだ。しかし、弟子たちはその前を素通りする。
「三郎さまの鎌が一番ですからね」
「見るだけで十分ですね」
弟子たちは自信たっぷりに笑い合う。
その後は自由時間。ミツが見守る中、弟子たちは思い思いに買い物を楽しんだ。
反物を手に取って真剣に選ぶ妹弟子、竹細工の弁当箱を買おうか悩む弟弟子、あっという間に焼き餅を3本平らげるお調子者。
「おいしい!」
「こっちの団子も食べてみましょう」
「お香が欲しいんです」と言って仏具屋に向かう真面目な弟弟子もいれば、「わたし、草履を新しくしたい」と足元を気にする妹弟子もいる。
「あれ、楽器屋さんですよ!」
「三味線?太鼓?」
見たこともない楽器に触れ、音を鳴らしてみる弟子たち。
「すごい。何でも揃っていますね」
「何年か前に来たときより大きくなっているな」
「毎月来たい!」
賑やかな市場に弟子たちもすっかり夢中だ。南部藩全体で金銀の産出量が増えて景気が良くなり他の藩の産物も流れ込んできているようだ。
ミツはそんな弟子たちの様子を見て、ふっと笑った。
「こうしてしっかり働いて、たまにはこうして楽しんで、お金を使うことも覚えないといけませんね」
弟子たちが大きくうなずく。
「お昼は何にしましょうか?」
「うどん!」「焼き餅!」「甘酒も!」
「はいはい、順番に食べますからね」
こうしてミツと弟子たちの楽しい市場めぐりが始まった。
楽しい買い物でしたが?




