第65夢 明日は花巻の市場へ行こう、の夢
農作業は順調にすすみました。
今日はミツからみんなにうれしい話があります。
寺の広い台所の板の間で弟子たちが輪になってみんなでつくった夕食を囲んでいる。
今日で麦まきが終わり、みんなほっとした表情だ。お櫃には炊きたての玄米がぎっしり。味噌汁には大根と菜っぱがたっぷり入っている。煮物は大豆と根菜類。たんぱく質が不足しがちなこの時代の食事を補うためにミヤザワケンジ2.0は大豆をたくさん食べるように弟子たちに夢で指示している。漬物はたくあんに茄子のからし漬け、これも弟子たちが漬けたものだ。
「みんな、よく働いてくれました。新しい農具の使い方もずいぶん上手になりました。」
ミツが言うと、弟子たちは口々に
「三郎先生とミツ先生のおかげです!」「毎日が驚きで、面白いことばかりです!」「家の農作業はつまらなかったのにな」「寺の仕事は面白いことばかりだな」
と話し始めた。
お調子者の弟子が
「毎日お給金がいただけるんだから、やる気が出るよな」
とふざけて言うとみんな笑った。
雨で仕事が休みの日以外はほぼ毎日、大工の手間賃なみの給料を弟子たちはもらっていた。沢で砂金はとれるし、三郎の銀の精錬も順調、寺の経営は潤沢だ。食事は無料で食べ放題、着物は布をもらって自分で縫う、お金は貯まる一方だ。
するとミツがにっこり笑って、思いがけないことを言った。
「明日はみんなで花巻の市場へ出かけましょう」
「えっ、市ですか?」
「花巻城下の?」
「ああ、毎月一日の一日市ですね!」
弟子たちが一斉に声をあげる。
「麦まきも終わったし、たまには気晴らしも必要でしょう?」とミツ。
「三郎さま、いいですか?」とミツが振り向くと、三郎も湯飲みを手にしながらうなずいた。
「ちょうど寺で必要なものもいろいろあるので、私も行きましょう。荷車を出しますから、みんなで荷物も運べますね」
弟子たちは大歓声をあげた。
「やったー!」
「市って何でもあるんでしょ?何買おうかな?」
「甘いもの!焼き餅食べたい!」
「私は反物がほしいです。自分で作業着以外の着物も縫えるようになりたいから」
「私は自分用の裁縫道具がほしいわ」
「おいらは釣り道具見てみたいなあ。寺の裏の川、魚がよく跳ねてるから」
「私は親に手紙を書きたいから、筆と紙を買います!」
「俺は将棋の盤を買うぞ、みんなでやろうぜ!」
「三郎さま、鍛冶道具とか見ますか?」と弟子の一人が尋ねると、三郎は少し笑って首を振った。
「いや、道具は自分で打つから要らないですね。でも、寺で使う木のたらいや桶は見ておきたいですね」
「三郎さまの腕があれば、日本中どこの道具よりいいものが作れるから、市場の道具は見物するだけで十分ですね!」
お調子者の弟弟子が大げさに手を広げて言うと、みんなも「そのとおり!」と笑いながら拍手する。
「そういえば、あの『親に売られた』って泣いてたお前さんは、何を買うんだい?」とお調子者が妹弟子に声をかける。
妹弟子はちょっと恥ずかしそうにしながら、「うちは兄弟が多くて、お米も布も足りないから、仕送りしようかなって思ってます」と言った。
「偉いねえ」「えらいえらい」とみんなが褒めると、妹弟子は照れ笑いを浮かべた。
お調子者が大きな声でおどけてみんなに言った。
「俺は仕送りなんかしないぜ、家族はお寺から支度金をたんまりもらってるんだ。俺は自分のためにパアッと使うのさ!」
笑い声がまきおこった。
「そうそう、たまには美味しいものも食べましょうよ」とミツが笑顔で言った。「甘酒もあるし、焼きたての団子もありますよ」
「団子!団子!」
「それから、みんなの着物の布も見ておきましょう。せっかく市場に行くんですから、良い布があれば買いますよ」
「やったー!」
弟子たちの賑やかな声が、夕暮れの寺に響く。
こうして麦まきを終えた弟子たちは、明日の市場への期待を胸に、いつもより少し遅くまでおしゃべりを続けるのだった。
明日は楽しい買い物です。




