第64話 弟子たちの将来の夢
ミツと三郎は弟子たちの未来のために大事な話をします。
想像を超えた新しい農具の威力に驚いている弟子たちを前に、三郎とミツは嬉しそうな笑顔を見せた。
三郎が一歩前に出ると、弟子たちは自然と彼に注目した。
「さて、石灰ちっその肥やしづくり、新しい農具の能率、そのすごさがわかりましたか。」
三郎の言葉に、弟子たちは大きくうなずいた。本当にすごい。驚くことばかりだ。
「今日は、みなさんに大事な話があります。」
三郎は少し間を置き、弟子たちの顔を見渡した。そして、満面の笑みを浮かべながら続けた。
「ここで五年間、まじめに働いた者にはお寺から、田畑五反(5000平方メートル)、馬一頭、それから肥料散布機と回転馬スキ、馬クワ、種まき機、すこっぷ、ほおく、など必要な農具を与えます!」
一瞬、沈黙があった。弟子たちは驚きのあまり息をのんでいた。しかし、次の瞬間
「えっ!?」「本当ですか!?」「俺たちに田畑と馬を!?」「あのすごい農具を!?」
歓声が沸き起こった。
「本当ですよ。」三郎は頷いた。
「ここで学んだことを生かして、立派な農家、そして化学肥料職人になってほしい。そして、反あたり麦は一石(約150kg)、米は二石(約300kg)、今までの二倍とれるこの新しい農法を、実践してください」
「みんながこの農法を広めれば、この村も、そしてもっと遠くの土地も、この国全体が豊かになるんですよ!」
ミツも楽しそうに付け加えた。
「すごい……!」「夢みたいだ……!」
弟子たちは目を輝かせた。貧しい家に生まれ、先の見えなかった彼らに、初めて具体的な未来が示されたのだ。田畑を持ち、馬を使い、最新の農具を駆使して豊かに暮らし、多くの人々を飢えから救い、感謝される。それは彼らにとって、想像もしなかった夢のような話だった。
「ただし!」ミツが鋭い目を光らせる。「五年間、まじめに働いた者だけですからね! 甘えは許しませんよ!」
「はいっ!」弟子たちは大きな声で答えた。
三郎とミツは、そんな弟子たちの姿を見て満足そうに微笑んだ。彼らの未来は、これから自分たちの手で切り開いていくのだ。
三郎はさらに続けた。
「それに、田畑だけでなく、家も必要でしょう。お寺の裏山ではたくさんのレンガを作っています。レンガもタダであげましょう。」
「家の材料までいただけるのか」
「みんなで協力して家を建てたらいいな」
「そんなことができるのか」
口々に話し出す弟子たち。
三郎は堂々と言った。
「新しい村を作るつもりでやればいいのです。」
弟子たちは目を見開いた。
「新しい村を……?」
「そうです。ここで学んだ知識を活かして、自分たちで村を作るのです。自分たちで農業をしながら、さらに新しい農業を広める者もいれば、鍛冶を学んで農具を作る者もいるでしょう。農業をしながら商いを始める者がいてもいい。みなさんが力を合わせれば、きっと豊かな村になりますよ。」
「それは……すごい話です!」
「そんなこと、本当にできるんですか?」
「できますとも。みなさんなら。」
ミツと三郎の言葉に、弟子たちは興奮し始めた。最初は不安そうだった顔が、少しずつ希望に満ちた表情へと変わっていく。
「おれ、やります!自分の力で村を作ってみせます!」
「わたしも!化学肥料の使い方をもっと学んで、村の人たちに教えたい!」
「新しい農具を作って、もっと効率のいい農業を広めていきたい!」
弟子たちは次々と決意を口にした。その声は力強く、この場にいる全員の心を奮い立たせた。
「麦は一石、米は二石とれる化学肥料を使った農法を、みなさんが農家の方々に教えてください。」
三郎はそう言いながら、弟子たちを見渡した。弟子たちは、驚きと興奮が入り混じった表情で顔を見合わせた。
「わたしたちが……?」
「そうです。」三郎は力強くうなずいた。
「みなさんはここで学んだ技術を活かし、村々の農家に新しい農法を伝えるのです。化学肥料を使えば、麦も米もこれまでの倍近く収穫できます。みなさんが広めれば、多くの人が豊かになれるのです。」
「すごい……。」
「でも、わたしたちにそんな大役が務まるのでしょうか?」
不安げに尋ねた弟子に、ミツは笑顔で応えた。
「大丈夫ですよ。わたしがビシビシ鍛えてあげますからね!」
ミツの冗談めかした言葉に、場の空気が和らぐ。弟子たちは思わず笑ったが、その表情にはすでに覚悟が宿っていた。
「よし、それならもっと鍛えてもらいます!」
「農家の人たちが驚くような腕前になってみせます!」
弟子たちの声が次々と上がる。
ミツと三郎は満足そうにうなずいた。新しい農業の時代は、確かにここから始まろうとしていた。
明るい未来を思い描いて、弟子たちはますますやる気を出します。




