第61夢 不思議な馬スキがやってきた夢
鋼鉄の円盤が三つもついた不思議な農具を三郎が馬で引いてきました。
「畑を耕すのも馬スキでやるんでしょう?馬1頭で10人分の仕事じゃないんですか?」
「三郎さまの作った馬スキと、うちのあくりなら30人分です!」
三郎が馬を引きながら、新しい農具を運んできた。弟子たちはその異様な形に目を丸くする。
「これは……馬スキですよね?」
妹弟子が恐る恐る尋ねると、ミツは満足げに頷いた。
「そうです。でも、普通の馬スキとはちょっと違うんですよ。」
「えっ、なんか……大きくないですか?」
「ただのスキじゃないんですよ。見てください、この刃。」
ミツが指差した先にあるのは、普通の馬スキとはちがう大きな円盤状の刃で、三枚もついている。
「すごい。鋼鉄だ。」
「普通の馬スキは、刃の先だけが鉄だよな。」
「ああ、ほとんどが木でできてるのが普通だよなあ。」
「こんな大きなスキを馬一頭で引けるんですか?」
弟弟子の一人が驚きの声を上げる。他の弟子たちも、
「さすがに無理じゃないか?」
「刃が三枚なら三頭必要じゃないか?」
とざわめき始めた。しかし、ミツは余裕の表情を崩さずに言った。
「ウチの『あくり』は、ただの馬じゃないんです。30人分の働きをするんですよ。」
「えっ!? 30人分!?」
信じられないという表情で弟子たちは顔を見合わせる。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
お調子者の弟弟子が思わず口を挟んだ。
「普通、馬一頭で引けるスキの幅はせいぜいこの三分の一ですよね? なのに三倍の幅のスキを引くって……馬に負担がかかりすぎませんか?」
「いい質問ですね。」
ミツは満足そうに頷くと、三郎のほうを見た。
「説明はどうぞ、三郎さま。」
「ははは。任せてください。」
三郎がスキの刃を軽く叩きながら話し始める。
「このスキは、ただ大きくしただけではありません。刃の角度を工夫して、土に入りやすく、なおかつ土の抵抗を減らす仕組みになっています。」
「はああ……でも、それだけで三倍の幅を引けるんですか?」
「もちろん、それだけではありませんよ、見ていてください。」
三郎は「あくり」に歩み寄り、胴輪のあたりを指差した。
「あくりには専用の胴輪をつけています。普通の馬具よりも力を分散させる作りになっていて、馬の負担を減らして無理なく引けるようになっています。」
「へえ……!」
弟子たちは感心したように頷く。しかし、それでもまだ半信半疑の表情をしている者もいた。
「さらに、大きな秘密があるんですよ。動かしたほうがわかりやすいですかねえ。じゃあ、実際に試してみましょうか。三郎さま。」
ミツがそう言って、ニヤリと笑った。
「30人分の働きをする『あくり』が、本当にこのスキを引けるのか……みんな、しっかり見ててくださいね。」
弟子たちは息をのんで見守る。三郎が手綱を軽く引き、「あくり」に合図を送った。
「さあ、やってみますよ。刃を良くみてくださいね。」
一瞬の静寂。
次の瞬間、「あくり」が前へと歩みを進めた——。
さあ、新しい農具の威力はいかに!




