第58夢 化学肥料職人の作業着を作ろうの夢
今日は作業着をつくります。
今日は、化学肥料・石灰窒素をまく作業のための作業着づくりの日だ。
ミツと三郎と弟弟子・妹弟子たちは、本堂に集まり、大きな灰色の布を広げた。それぞれ針と糸を手に取り、あるものは慣れた手つきで、あるものは慣れない手つきで縫い始める。
「作業着があれば、安心して『かがくひりょう』を扱えますよ。」
「でも、どうしてこんなに厚手の布なんですか?」
「石灰ちっそは皮膚に触れるとかぶれるから、肌を守るために厚手の布がいいんです。」
ミツが答える。
裁縫の得意な妹弟子は手際よく布を裁ち、縫い合わせていく。
今回作るのは、一昔前の戦国時代に流行したポルトガル風のズボン「かるさん」だ。動きやすく、足袋と脚半と組み合わせれば、足の皮膚を石灰窒素のかぶれから守ることができる。
「これ、意外と動きやすいですね。」
「脚半と合わせると、ぴったりしていて農作業もしやすそうです。」
「謎の異人風だな」
弟弟子・妹弟子たちは、完成したかるさんを試しながら感心していた。
その中で、一際熱心に皆に裁縫を教えている妹弟子がいた。かつて家族に売られたと泣いていた彼女だ。
「ここは、こう縫うと丈夫になりますよ。」
「ありがとうございます!やってみます!」
彼女は生き生きとした表情で、みんなの作業を手伝っていた。
ミツと三郎は、その様子を静かに見守りながら目を合わせた。
「あの子、変わりましたね。」
「ああ。こうしてみんなの役に立てることが、自信につながっているのでしょうね。」
彼女はもう、あの日のように泣き暮れることはなかった。新しい仲間とともに、自分の力で生きる道を歩み始めていた。
次に、目出し頭巾を縫う。
「目出し頭巾なんて、偉いお侍がお忍びで出かけるときみたいですね。」
「いやいや、忍者みたいだ!」
お調子者の弟弟子がふざけてみせると、皆が笑い声をあげた。
「忍者じゃなくて、肥やしの職人よ。」
裁縫の得意な妹弟子が針を動かしながら言う。
「でも、忍者みたいに格好良い職人になれたらいいですね。」
「確かに!俺たちも忍者のように、畑の土を豊かにする忍術を使うのかもしれませんね。」
そんな冗談を交わしながらも、弟弟子・妹弟子たちは真剣に目出し頭巾を縫い進めた。
しばらくして、皆が縫い終わったころ、三郎が何かを持ってきた。
「さあ、防塵眼鏡をつけてみてください。」
彼が差し出したのは、銀の本体にガラスレンズをはめ込んだゴーグルだった。
「おおっ!」
弟弟子・妹弟子たちは歓声をあげた。
「すごい!こんな立派なものまで用意してくださったんですね!」
「これなら、石灰ちっその粉が目に入る心配もありませんね。」
「なんだか、職人らしくなってきたな。」
弟弟子・妹弟子たちは、嬉しそうにゴーグルを手に取った。
灰色の「かるさん」(ポルトガル風ズボン)に目出し頭巾、そして銀のゴーグル――それは、のちに「化学肥料職人」の象徴として、長く引き継がれていくことになるのだった。
化学肥料職人の伝説のはじまりです。




