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第51夢 化学肥料を使おう その4 化学肥料で堆肥を手早くつくる夢

ミツと三郎は、青菜栽培実験と同時に堆肥づくり実験をしていました。

ミツと三郎は、青菜の栽培試験と並行して、堆肥づくりの実験にも取り組んでいた。畑の端に、それぞれ異なる方法で作った堆肥を並べ、分解の進み具合を観察するのだ。


「さて、どの方法が一番うまくいくでしょうか?」


ミツが手ぬぐいで汗を拭いながら、大量の刈草を積み上げる。


「うまくいけば、もっと効率的に良い肥料が作れるかもしれませんね。」


三郎が期待に満ちた目で答えた。


一番目は刈草だけの堆肥である。現代では珍しいが、家畜を飼っている農家が一部の豊かな農家に限られ糞尿が貴重だった江戸時代には最も一般的な堆肥である。


「これはまあ、一番よくある方法ですね。」


ミツが刈草の山を踏みしめながら言った。

着物の裾をはしょって健康的なふくらはぎが見えている。


「分解には時間がかかりそうですねえ。」


三郎が刈草を運びながら、ミツのふくらはぎから目をそらしながら、言う。


「夏に刈った草を積んで、翌年の春に使うんですよ。」


ミツが答える。


二番目は刈草と馬糞を混ぜた堆肥である。この時代ではほぼ最高のものだ。

ミツが刈草に馬糞を鋤で混ぜながら言う。


「馬糞を混ぜることで、発酵が早まるんです。それに馬糞には葉肥が含まれていて作物の葉の色も良くなり、丈も伸びます。」


三郎も手伝いながら言う。


「そういえば、硝石をつくるときに使いましたが馬糞だけの堆肥は、積んだ翌日には湯気が出るほど激しく発酵していましたね。」


ミツが答える。


「さすがにあれだけ馬糞を贅沢に使えば発酵は早いですね。この堆肥だと刈草が多いのでそれほど早くありません。三か月くらいで完成します。」


三番目は刈草に粉状の石灰窒素を混ぜた堆肥である。


「これは、どうなるのか想像がつきませんね。それにしても独特な臭いだ。」


三郎が眼鏡と手ぬぐいで顔を覆い、手袋をして、慎重に石灰窒素を振りかける。


「試してみるしかありませんね。」


ミツは少し不安そうに見つめながら、刈草と石灰窒素を良く混ぜて踏みしめる。こんどは藍色の脚半(きゃはん)を巻き藁の長靴をはいて、ふくらはぎと足をしっかり守っている。


四番目は刈草に石灰窒素を溶かした水をかけた堆肥である。


「水に溶かしてまいた方が、粉が飛ばないし、臭いも気にならないし、均等に混ぜやすいですね。」


三郎は上機嫌で、柄杓で石灰窒素を混ぜた水を刈草の山にゆっくりとかけていく。


「さて、この四種類をしばらく様子を見てみましょう。」


ミツは引き締まった表情で言った。


実験を始めて一週間後、二人は堆肥の山を掘り返し、切り返して発酵の様子を確認した。


「うーん、やっぱり刈草だけの堆肥は、あまり変化がないですね。」


ミツが指でつまんで匂いを嗅ぐ。まだ青臭さが残っている。


「馬糞を混ぜた堆肥は、やっぱり発酵が進んでいますね。」


三郎がほんのり温かい堆肥を積み上げながら言う。


「石灰窒素を混ぜた堆肥は……おや?」

ミツが驚きの声を上げた。


第三と第四の堆肥は、もうもうと湯気を上げて発酵し、色も緑色は全くなくなり、黄色くなっている。


二人は顔を見合わせ、成功の手応えを感じた。


実験開始から一月が経ち、堆肥の状態はさらに変化していた。


「刈草だけの堆肥は、まだまだ時間がかかりそうですね。」


「馬糞を混ぜた堆肥は、あと一月で使えそうです!」


「石灰窒素を混ぜた堆肥はすごい!もうすぐ使えそうです!」


ミツは目を輝かせた。


「これなら、良い肥料になりそうですね!」


三郎も言った。

ミツが答える。


「ええ、この臭いと色からすると、かなり葉肥の強い効果の高い堆肥。いいえ、堆肥というより肥やしに近いものができそうです!」


「ミツさん、秋に麦をまく実験に使えそうですね!」


ふたりは笑顔でお互いを見つめるのだった。




化学肥料と刈草を混ぜると、とてもよい堆肥ができそうです!

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