第46夢 化学肥料をつくろう その5 石灰窒素合成炉を組み立てよう!の夢
いよいよカーバイドから化学肥料の石灰窒素を合成する炉をつくります。
翌朝、暗いうちから「かあばいどらんぷ」の灯りをつかって、ミツと三郎は、いよいよ化学肥料の合成の準備を始めた。石灰窒素の合成である。
1000気圧の高圧が必要なハーバー・ボッシュ法によるアンモニア肥料合成とは違う。石灰窒素は常圧で合成できる。
苦灰石から作った酸化マグネシウム耐熱レンガを積んで三段の炉をつくる。一番下は石灰と木炭を2000度常圧で反応させるカーバイド合成炉、二番目は窒素を1000度に加熱する窒素加熱炉、三番目が窒素とカーバイドを反応させる石灰窒素合成炉だ。
ミツは三郎を手伝いながら、炉の組み立てが完成していくのをワクワクした表情で眺めていた。
「三郎さま、本当にこれで『かがくひりょう』ができるのですね!」
ミツは目を輝かせながら尋ねた。
「うん、お坊さまのおっしゃる通りに作れば、間違いないはずです。」
三郎は手についたほこりを払いながら、自信ありげに頷いた。
「まずは一番下の炉で『かあばいど』をつくるんですよね?」
ミツは炉を覗き込みながら確認する。
「そうです。石灰と木炭を入れて、太陽炉で熱すると、中で『かあばいど』ができるんです。熱がすごいから気をつけないといけませんね。」
「この間の『かあばいど』作りもすごかったですものね! それにしても、ここで余った炭が『いっさんかたんそ』という気体になって上に登るなんて……なんだか煙が仕事をしているみたいですね。」
ミツは煙突のような炉の構造を見て感心する。
「そうですね。そして、『いっさんかたんそ』をそのまま空に逃がしたらもったいない。だから二番目の炉で燃やして燃料として使うんです。」
三郎は二番目の炉の脇に開けた空気穴を指差しながら説明する。
「空気がここから入って、『いっさんかたんそ』が燃えて、『にさんかたんそ』と『ちっそ』が残る。」
ミツが不思議そうに目の前で手をうごかしながらつぶやく。
「こんな透明な空気に『ちっそ』という肥料が含まれているなんて不思議ですねえ。」
「私も、驚きました。お坊さまのお話は驚くことばかりです。」
「それに、大豆は空気の中の『ちっそ』を肥料にできる。大豆が肥やしが無くても育つのは、空気の中の『ちっそ』を肥やしにしているからだ、とお坊さまから聴いて、なるほどそうだったのか!って、感動しちゃいました。」
「そうですね。『かがくひりょう』が空気中の『ちっそ』からできれば、結局、大豆以外の作物も空気の『ちっそ』を使えることになって、たくさん採れるようになるそうですね。」
「関西では大豆油を絞った粕や、豆腐のオカラを肥やしにするような贅沢なことをしていると聞きました。ここらじゃ大豆粕やオカラは人間や馬が食べちゃいます。大豆粕やオカラも、もとは空気の『ちっそ』からできていたんですね。関西のような贅沢な農業がどこでもできるようになりますねえ。」
三郎は炉の説明を続ける。
「ええ。二番目の炉の話にもどりますが、ここでは熱い『ちっそ』と『にさんかたんそ』ができますが、『にさんかたんそ』はいらないので、ここに詰めた消石灰が吸収してくれるそうです。」
「まあ! まるで煙をきれいにしているみたいですね!」
「そうですね。そして、最後に残った熱い『ちっそ』の気体が、一番上の炉へ向かう……そして、ここに昨日作った『かあばいど』が入っていて、『ちっそ』とふれると?」
「『かあばいど』と『ちっそ』がくっついて『石灰ちっそ』という『かがくひりょう』になるんですね!」
ミツは手を叩いて喜んだ。
「そう、そして次の日は一番下の炉でできた『かあばいど』を三番目の炉に入れて、一番下には、また石灰と木炭を入れる。」
「石灰と木炭と空気とお日さまの光で、毎日、どんどん『かがくひりょう』ができますね。空気とお日さまの光はタダだし、山には石灰も木材もいっぱいあります。」
「うまくいけば、これを田畑にまいて作物の成長を助けることができる。肥料があれば、もっとたくさんの米や麦や野菜が育ちますよ。」
「米や麦や野菜がいっぱいできれば、飢えた子どももいっぱいご飯を食べられるし、飢饉も防げますね。作物の実験はわたしにまかせてください!」
「お願いしますよ!」
三郎は深く頷いた。
「でも、まだ実験が成功したわけじゃないですよね?」
ミツが炉を見つめながら呟く。
「そうです。これから実際に熱を加えて、ちゃんと石灰ちっそができるか試してみないといけません。」
三郎は太陽炉の準備を始める。
「成功しますように……!」
ミツは胸の前で手を合わせ、期待に満ちた目で炉を見つめていた。
さて石灰窒素合成炉はちゃんと機能するでしょうか?




