第43夢 化学肥料をつくろう その2 るつぼをつくろう の夢
ふたりは苦灰石を発見したのでしょうか?
沢を登っていたミツが声をあげた。
「見てください、三郎さま! 」
ミツが指さす先には、白く輝く石灰石の崖のすぐ隣に、少し灰色がかった別の岩肌が続いているのが目に入る。
「おお、この色。もしかすると。」
三郎は期待に胸を膨らませながら、その灰色の岩に近づいた。そして、腰から金槌を取り出し、力を込めて叩く。
カンッ!
乾いた音とともに、岩が鋭く割れた。
「やっぱり! 硬い。鋭く割れる!」
興奮気味に呟きながら、三郎は次に持参してきた小瓶を取り出す。中には塩酸が入っていた。慎重に岩の表面に数滴垂らす。
すると——
シュワシュワ……!
石灰石のほうは激しく泡立ち、白い泡がぶくぶくと広がった。
一方、灰色の岩は……
「泡立ちが弱い……!」
三郎の顔に確信の色が浮かぶ。
「間違いない、苦灰石だ!」
思わず両手を握りしめ、歓喜の声をあげる。
「やりましたね、三郎さま!」
ミツも手を叩いて喜ぶ。
ふたりは急いで背負い籠を下ろし、見つけた苦灰石を詰めていった。
「これで、高温に強い、るつぼの材料が手に入る!」
三郎の声には、希望が満ちていた。
籠いっぱいに苦灰石を詰め終えると、ふたりは沢を下り始めた。重い荷を背負いながらも、足取りは軽い。
ミツはうれしさのあまり、足を早めたせいか、途中の岩場で、足を滑らせ、よろめいた。
「あっ——!」
その瞬間、三郎がとっさに腕を伸ばし、ミツの肩をしっかりと支える。
ミツは驚いたように三郎を見上げ、それから恥ずかしそうに笑った。
「あのときみたいですね……」
頬を染めながら、小さく呟く。
ふたりは顔を見合わせ、少し照れながらも、嬉しそうに微笑み合った。
そして、また歩き出す。
背中の籠には、希望の詰まった苦灰石。
沢のせせらぎが、ふたりの足音に優しく寄り添っていた。
砂金の沢へと戻ったミツと三郎は、荷を下ろし、さっそく作業に取り掛かった。
「まずは、苦灰石を細かく砕くところからですね。」
ミツが袖をまくりながら言う。
三郎は頷き、ふたりは金槌を手に取った。
ふたりは苦灰石を適当な大きさに砕き、太陽炉のるつぼに入れる。
燦々と降り注ぐ太陽の光が、鏡で集められ、るつぼの中の石をじわじわと熱していく。
やがて、苦灰石が割れ始める。
「うまくいきましたね!」
ミツが嬉しそうに声を上げる。
三郎は頷きながら、まだ熱の残る石を注意深く取り出し、石臼の上に置く。
「さあ、これを細かく砕きますよ。」
ゴリゴリ……ゴリゴリ……
ふたりは交代しながら石臼を回し、苦灰石を粉々にしていく。
しばらくすると、きめ細かい粉がふわりと舞い上がる。
「いい感じです! これを型に詰めて、るつぼの形にしましょう。」
ふたりは手早く鋼鉄の型に粉を詰めてぎゅっと押し固める。
こうして形作られたるつぼを、今度は太陽炉で焼き固める。
「うまく焼けるといいですね……!」
ミツは手を組みながら、炉の中を覗き込む。
三郎は慎重に、じっくりと焼き上げる。
翌日までゆっくりと冷ます。
るつぼはしっかりと焼き締まり、丈夫な仕上がりになっていた。
「やった! るつぼが完成しました!」
三郎が興奮気味に叫ぶ。
ミツも喜びのあまり、手を叩く。
「すごいです! これなら高温にも耐えられそう!」
ふたりはさらに翌日同じ方法で、耐熱レンガも作った。
また石臼で粉を挽き、型に詰め、太陽炉でじっくりと焼き固める。
いくつも並んだるつぼとレンガを見つめ、ふたりは顔を見合わせる。
「やりましたね、三郎さま!」
「ああ、これで『かあばいど』ができますね!」
このあとはこのるつぼや耐熱レンガを使って石灰と木炭を2000度の高温で処理して、化学肥料の石灰窒素の原料であるカーバイドをつくるのである。カーバイドは肥料の原料になるだけでなく様々な用途もある。
沢の風が心地よく吹き抜けるなか、ふたりの胸には達成感が満ちていた。
次はカーバイドづくりです。




