第42夢 化学肥料をつくろう その1 るつぼの原料を探しに行こう の夢
ミツと三郎は、お坊さまに言われた「かがくひりょう」づくりの準備をはじめます。
まずは、さらに高温に強いるつぼの原料を探します。
朝の光がやわらかく寺の庭を照らし、鳥のさえずりが心地よく響いていた。三郎とミツは、湯気の立つ味噌汁と炊きたての玄米ご飯と大豆と野菜の煮物を前に、今日の仕事の話に花を咲かせていた。
「昨晩、お坊さまがお帰りになり、新しいお仕事をお命じくださいました。」
三郎は穏やかな表情で箸をとめて言った。
もちろん、お坊さまが本当に帰ってきたのではなく、そんな夢をミヤザワケンジ2.0が集合的無意識世界からふたりに見せたのだか、それはふたりは知らない。
「新しいお仕事……?」
ミツは興味津々といった様子で顔を上げた。
「はい。お坊さまから、『新しい肥やし』を作るようにとのお言葉をいただきました。」
三郎はどこか誇らしげに胸を張った。
「新しい肥やし、ですか……? それは、どのようなものなのでしょう?」
「『石灰ちっそ』、という『かがくひりょう』というものです。これまでの肥やしよりも、作物がよりよく育つように工夫されたものだそうです。お坊さまは、『土の力をさらに引き出すことができるように努めなさい』とおっしゃっていました。」
三郎の言葉に、ミツの目がぱっと輝いた。
「まあ! それなら、私もお手伝いできますね。私も、お坊さまからお仕事を仰せつかりました!」
ミツは嬉しそうに微笑んだ。
「三郎さまが作る『かがくひりょう』を使って、田畑で作物の実験をするように、とおっしゃいました。」
「おお!」
三郎は驚きつつも、すぐに優しく微笑んだ。
「それは心強いですね。つまり、私が作った肥料を、ミツさんが実際に試して、効果を確かめてくださるということですね。」
「はい。どの作物がよく育つのか、どれくらいの量を使えば最適なのか、しっかりと見極めなくてはなりません。」
ミツはわくわくした様子で、小さく拳を握った。
「お坊さまからいただいた大切なお仕事、精一杯取り組みましょう。」
三郎はご飯をかきこむと、静かに拳を握りしめた。
「ええ、三郎さまと一緒に頑張ります!」
ミツも明るくうなずいた。
こうして、ふたりの新しい挑戦が始まった。
朝の食事を終えた三郎は、湯呑を手にしながら少し考え込むような表情を浮かべた。そして、ゆっくりと口を開く。
「『かがくひりょう』を作るためには、まず『かあばいど』を作らなければなりません。」
「『かあばいど』……?」
ミツは不思議そうに首をかしげる。
「はい。石灰と炭を、鉄が溶ける温度よりもとても高い温度で加熱するとできるのです。ただ、これまで使ってきたるつぼでは、その温度には耐えられません。」
三郎は真剣な表情で続けた。
「だから、まずはるつぼに適した原料を見つける必要があります。特に、石灰石に似ていて灰色が濃い、苦灰石が適していると、お坊さまから教えていただきました。」
苦灰石は炭酸マグネシウムを豊富に含む鉱物である。炭酸マグネシウムは加熱すると酸化マグネシウムになる。酸化マグネシウムは2000度以上の高温に耐えるため21世紀でも、るつぼなどに使われているのである。
ミツはぱっと顔を輝かせると、立ち上がった。
「三郎さま、一緒に探しに行きましょう!」
「えっ、ミツさんも?」
「もちろんです。私も『かがくひりょう』の実験をお任せされたのですから、そのための、るつぼの原料探しからお手伝いしたいのです。」
ミツはいたずらっぽく微笑みながら言った。
「ふふ、それにわたしは山歩きは得意なんですよ。忘れましたか?」
「ははは、ああ、そうでしたね。では、一緒に行きましょう。」
三郎は優しく笑い、腰に手を当てて頷いた。こうして、ふたりは新たな素材を求めて、寺の裏山へ向かうことになった。
沢までは立派な道ができたので快適に登ってきた。
今日も鋼鉄の水車が鉱石を削っている。
「前はここに来るときに、わたしが足をすべらせて、三郎さまに助けられたことがありましたね。」
ミツが頬を赤らめながら言う。
「助けたなんて大げさですよ。あ、ミツさん、この先はあのときのような、もともとの沢ですから、気をつけて歩きましょうね。」
三郎も顔を赤らめて答える。
沢の水でわらじの足を濡らしながら、ふたりは沢をのぼる。
「これも石灰石だなあ」
三郎が金槌で石を叩きながら沢をのぼる。
「石灰石より灰色が少し濃いんですよね?」
ミツが尋ねる。
「はい。そして少し固くて、割れ方が鋭いそうです。」
三郎が答える。
ミツが叫ぶ。
「あっ、あの石灰石のガケのとなりがちょっと色が濃いですよ!」
さて、苦灰石は見つかるのでしょうか?




