第40夢 ぐるぐるまわる水車でザクザク鉱石を掘る夢
鉱石を手で掘るのはたいへん。水車で掘るしくみをつくります。
百尺(約30m)の太陽炉が完成した。炉の中心では、黒鉱から選別した鉄鉱石がゆっくりと溶け、輝く鋼鉄が姿を現す。鍛冶屋が四日四晩かけて作る鋼鉄の何倍もの量が数時間でできる。
三郎は鍛冶屋の技を活かして、鋼鉄で小さな水車を作った。ふたりと一頭は黒鉱が地表に顔を見せている場所まで水路を引いて水車を設置した。
小さな水車は、力強く回転しながら黒鉱や周りの岩石を削りとる。鋼鉄の水車のついた臼で岩を細かく砕くしかけも作った。
「すごい……! こんなに大きな岩が、こんなに細かくなるなんて……!」
ミツは削られた濡れた岩の粉を手に取り、目を輝かせる。
「人力で削るより、ずっと楽になりましたね。」
三郎も満足そうにうなずいた。
水を利用して長い水路で比重選別を行う仕組みも整えた。いちばん重い金が水路の上流で沈み、いちばん軽い石英つまりガラスの原料が水路の下流に沈む。
ミツは水路の流れをじっと見つめていた。透き通った水が岩を削り、細かく砕かれた砂や鉱石をゆっくりと運んでいく。その流れの中で、重さの違う鉱物が自然と分かれていくのを目の当たりにすると、思わず息をのんだ。
「すごい……!」
彼女は思わず水路の縁に身を乗り出した。
「三郎さま、見てください! ここに沈んでいるのは……金でしょうか?」
ミツが指を差した先、流れの最も上流に、わずかに輝く粒が沈んでいる。
「金は重いから、いちばんはじめに沈むんですね。」
三郎は満足げに頷いた。
「そして、もう少し向こうにあるのが銀鉱石。その隣に沈んでいるのが銅鉱石。鉄や鉛や亜鉛はそれより少し先の方です。いちばん下流には石英が残ります。」
「そんな仕組みだったんですね……!」
ミツは感心したように、水の流れと沈殿していく鉱物を交互に見つめる。
「自然の力を利用して、こんなふうに鉱石を選り分けることができるなんて!」
彼女はうれしそうに笑った。
「ふふっ、これなら、苦労して鉱石を選り分ける手間も省けますね。まるで、水が仕事をしてくれているみたいです!」
三郎はそんな彼女の横顔を見ながら、静かに微笑む。
「そうですね。人の手だけじゃ大変なことも、自然の力を上手く使えば、ずっと楽に、そして効率よくできます。」
「これなら、もっとたくさんの銀も銅も混ざり気なく取り出せるようになりますね。」
ミツは水の中で輝く鉱石にそっと指を伸ばしながら、期待に満ちた瞳で三郎を見上げた。
「そうですね。金と、銀や銅を分けるための硝酸も少しで済むでしょう。」
三郎の言葉に、ミツは深く頷いた。
水路を流れる鉱石は、未来へと続く道のように思えた。
ふたりは、また新しい一歩を踏み出したのだ。
長い水路のいちばん下流には沈殿池をつくった。岩の粉で汚れた水をきれいにするためである。
池の水がゆっくりと澄んでいき、きれいな水が沢に戻っていく。
「これで沢も汚れずに済みますね。沢の魚も安心です。」
「ミツさんの考えは、いつも優しいですね。」
三郎はほほえんでつけ加えた。
「そして、この岩の粉も壁や瓦の材料や磁器の皿や湯呑みを作る原料に使いますよ。」
「すごい!わたし、無駄がないって大好きなんです!」
ふたりは笑い合いながら、作業を続けた。岩を削る苦労も、重たい石を運ぶ苦労も、岩の粉を吸い込んで咳をすることもない。ただ、澄んだ沢のせせらぎと、水車の穏やかな回転音だけが響く。
これから、何が作れるだろうか? 何を生み出せるだろうか?
そう考えながら、ふたりは楽しく仕事を続けた。
金属とガラスの量産体制ができました。




