第37夢 道づくりの夢
ミツと三郎は、砂金のとれる沢と寺を結ぶ道を作ります。
「さて、やるか。」
三郎が手にした鍬を肩に担ぎ、ふと空を仰ぐ。初夏の空はどこまでも青く、陽射しがじりじりと肌を焼いた。
ミツも袖をまくり、手拭いをぎゅっと締め直す。隣には、馬の「あくり」がのんびりと草を噛んでいた。
「10日もあれば、ちゃんとした道になるはずですよね?」
「そうですね。あくりに荷車を引かせて沢まで行ける道ができれば、実験の準備がぐっと楽になります。」
昨晩お坊さまが帰っていらして、秘密を守るため実験は裏山の沢でするようにと指示された。裏山に人が寄りつかないように、大きな熊が出るというウワサを流してくれるという。
お坊さまの言葉どおり、もう寺の庭では太陽炉の実験をするわけにはいかない。目立ちすぎる上に、技術が広まる前に変な噂が立てば、かえって世の中のためにならない。裏山の沢なら人目につかず、思う存分試せる。ものづくりに打ち込めると三郎は張り切った。平和を望むミツもそれがいいと思った。
だが、そこまでの道が問題だった。細い獣道しかなく、大きな荷を運ぶには不便すぎる。そこで、三郎とミツは、馬のあくりを連れて道を整えることにしたのだった。
最初の作業は、道を広げることだった。木の根を掘り起こし、石をどけ、ぬかるみやすい場所には砂利を敷く。
ここは、はじめに砂金とりに来たときにミツが足を滑らせて三郎に抱きかかえられた場所だ。ふたりは顔を赤らめて目を合わせる。
照れ隠しか、ミツが大きな声で言う。
「この岩、どかせそうですか?」
ミツが大きな岩を指さす。三郎が腰を落として力を込めるが、びくともしない。
「うーん、これはあくりの出番ですね。」
三郎はあくりに馬具をつけ直し、岩に縄を結びつける。
「よし、いくぞ……せーの!」
ミツが手を叩いて合図すると、あくりが力強く引っ張る。数度の試行の後、ようやく岩はぐらりと動き、道の脇の林に転がった。
「すごい、あくり!」
ミツが馬の首を撫でると、あくりは満足そうに鼻を鳴らした。
日を追うごとに道は整えられ、荷車が通れるほどの広さになっていった。
「これで、大きな荷物も運べますね。」
10日目、道が完成したとき、三郎は鍬を地面に突き立て、満足げに腰に手を当てた。ミツも同じように感慨深げに道を見渡した。
「なんだか、ちょっと寂しいですね。」
「ん? どうしてですか?」
「村にいたときも、男の人にまじって働いてましたけど、道づくりって、やってる間は大変なのに、終わるとちょっと名残惜しい気がするんです。」
「はは、それはミツさんが働き者だからですね。私は終わってうれしいですよ。」
三郎が笑うと、ミツも照れくさそうに笑った。
こうして、二人と一頭の努力で、裏山の沢へと続く道が完成した。
いよいよ秘密の沢で本格的な実験を始めます。
まず三郎が作ったものは贈り物でした。




